第84話 微妙な真相

 『若返りのポーション』の事は取り敢えずは後にしてブレシアは自分達の船に向かう、暇な私も一応向かった。


 すると海の方に並んだ立派な帆船から何やらドンパチしてる音がする。私の目で確認するとブレシアの仲間や他の女冒険者達が海から現れたモンスター達と交戦していた。


 まっどっちも本当はモンスターなのだが、女冒険者側は基本的に結界内に入る事を意識してか人間の女性寄りの姿をしている、それに対して海から現れたモンスター側は人外な連中が多い、タコ足を背中から生やしてたりフジツボを全身に引っ付けてたりと実にキモイ連中である。


 この時点で私がどっちの味方をするかは決まった、全身ズブ濡れで木造船の上に平然と上がる大罪モンスター共に死を与えてやるぞ。


「よくもアタシの部下達を! 許さないよ!」

「ヌゥオオーー、憎き女冒険者共! 地獄を見せてやるぞーーー!」


 腰の剣を抜き放ち駆けるブレシア、敵は全身にモズク見たいな海藻を纏う人型のモンスターだ。ヌメヌメしてる……最悪だな。


 ブレシアが何度か剣を斬りつける、ヌメヌメは鈍間だが両腕を振るいブレシアに攻撃をする。

「くっ剣じゃ攻撃が通らない!」

「ヌゥオオー、俺の無敵の身体に武器は効かんぞ」


 なら魔法でも食らえ。

「正座スパークペイン!」


 魔法が発動する、敵モンスター達の絶叫が辺りの船からする。

 私の魔法は基本的にその場の敵全員が対象だ、見逃したりはしない。みんなぶっ倒れた。



 ◇◇◇◇◇◇



「………は? ダンジョンの面接に来たら、男と言う理由だけで門前払いにされたからこんな事を?」

「そっその通りです…」


 私とブレシア達の目の前には正座させたモンスター達がいた、取り敢えず話を聞いてみたがその内容は微妙としか言えないものだった。

 ちなみに話をさせたのはヌメヌメなヤツだ。


 何でも仕事を求めて海を越え、遠路はるばるこの島のダンジョンまで来たこのモンスター達。どうやら面接を受ける事すら出来ずに門前払いにされた事による怒りからこんな犯行に及んだようである。


 何でもピンク色の髪のレディスーツを着た女性にワザワザここまで来た苦労とかを無駄な努力ご苦労様です的な口調で散々馬鹿にされたらしい。

 まあ話を聞いても弁解の余地とかあまり感じなかった私だ、もう魔法で退治してしまおうかな。


 いやっもう少し話聞いてみるか。


「そのピンク色の髪をした女性の事は確かに酷い話ですが…それと船を襲撃した事に何の関係が?」

「俺達、仕事欲しい。だからダンジョンに来た女冒険者達を追い返せば俺達の実力を理解してくれると思った…」


 成る程ね、しかし普通に考えてもそれで事が上手く進む訳がないと思うんだよね。

「すみませんが恐らくこのダンジョンは、そもそも外から雇うモンスターの条件に女性限定とかそう言うのがあったのではないですか?」


「なん…だ…と?」

「理由は不明ですけど、ここのダンジョンはやたらと女性を条件に含んだ物が多い。恐らくですか戦闘はダンジョンコアで生成されるモンスターに任せっきりで他の実務を担当するモンスターの募集だったのでないかと」


 それなら女性限定でも不思議はない、そもそも幾ら男女平等と言ってもそれぞれしか出来ない仕事と言うのは必ずあるのだ。

 女性トイレの清掃に野郎が来たら事件になってしまうって話だ。


「そっそんな、なら本当に俺達は……」

「そのピンク髪の人は本当に無駄な努力ご苦労様って言ったのは比喩とかではなく事実だったって事じゃないですか?」


 絶望してうな垂れる正座モンスター達である、今更ながら正座スパークペインを食らわせといてその後に正座させる自らの躊躇のなさに引くわ~。


「そもそも何故こんな辺鄙な場所のダンジョンにまで来たんですか? ダンジョン勤務なんて他にも色々……」


「最近はどこも不景気でダンジョン勤務のモンスターは解雇が続出しているんだ」

「……………」


 ファンタジーな異世界、それもモンスター達が住む世界に来てまで不景気なんて言葉を聞きたくなかったな。

 なんかブレシア達まで少し遠い目をしている、もしかして彼女達がモンスター冒険者をしてるのすら不景気が関係してるのか?


「最近、人間の世界で大いなる災厄の竜が目覚めた。それが理由で人間の世界に進出していたダンジョンの多くがダンジョンを一度畳んでしまったんだ、お陰で職にあぶれたモンスター達でダンジョン勤務の仕事は奪い合いになってしまった」


 ………………はい?



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