第6話 閉店間際の惣菜売り場

「お茶しとったん?」

 

 駅前で待ち合わせをしたナオに訊かれ、


「うん、まあ」


 と曖昧に応えたものの、


「んっ、オカンお酒くさー」


  すぐにばれてしもた。


「ちょっとカラオケ」

「ちょっとやないやろ」

 

 ナオは親切にもフリスクを手に握らせてくれた。


「ほんで、明日、健康診断やから小洒落こじゃれた下着が欲しいって」

「うん、小学生みたいな下着つけているのん、うちくらい。体育の授業のときは人がおらんときに着替えたらええけど、健康診断はそうもいかんやろ」

「やったら、早く言うたらええのに」


「駅下がりのショッパーズに下着専門店があるんやて、ウメが言うとった」

「うん、そこはリーズナブルやし種類も豊富なんやて、ミオが言うてた」

「やったらミオちゃんにつきおうてもらえばよかったのに」

「行ってみたんやけど、お金が足りそうもなかったから」


 確かにお小遣いでは買われへん。

 キャミソールにブラにパンティを3組ずつ購入したら、財布が空になりそうだったのでクレジットカードで支払った。

 ふーん、今どきの女子高生はこんな下着をつけているんか。

 何や発想がおっさんやった。


 「今から帰って晩ご飯を作るのも何やから、下の階で何か買うて帰ろう」

「うん、そうしよ」

 

 ナオは上機嫌。下着ごときで、可愛いなあ、かわええ、かわええ。


「ナオ、お寿司半額やて」

「オカン、はよ取らんと、のうなってしまうで」

 

 ほんま、目の前の商品棚に次から次へと手が伸びてくる。

 それ、目で取ってましてん、なんて言うとらんと、手当たりしだい、買い物カゴに入れることにした。

 そして、おもむろに吟味することにした。


「ナオはどれにする?」

「うち、あっちのお惣菜コーナー見て来る」

「やったら、お寿司はいらん?」

「いらん」


 旦那が好きな寿司ネタはこれやな。そしたら、この2つを残して、あとは返品しよう。

 商品を棚に戻そうとしたら横からスッと手が伸びてきて、それを受け取った客がレジに向かって行った。

 何や返品されるのを待っとったんかい。

 

 閉店間際の惣菜売り場はすさまじい。


 


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