第3話 貴族転生~えっ? なんか思っていたのと違うんですか?~

 ぶくぶく

 ぶくぶくぶく


 ごくごくごく


 えーと、私は今、羊水の中でゆったりゆらゆら、過ごしています。


 いやね、最初は結構楽しんでいたんだけど、きたのよ。


 目だって見えないし、やること無いし。


 日本なら胎教とか色々あるんだろうけど、ここには無いからね。


 しかも時間の感覚だって無いし、気が付いたら上下逆さまだったのよ。


 多分、血の流れる音なんだろうけど、1日中ごーごー言ってるし。


 眠れるかっての!


 アレだね、お腹の中を蹴るのって、きっとストレス解消的な何かなのよ。


 はぁ、何もしてないのに妙に疲れるな。


 って、あれ? 私の大切な羊水が減ってない?


 ん? んんん?


 痛い痛い痛い痛い!


 なんか頭がギュウギュウ締め付けられてるよ!


 ギブギブギブ!


 今度は肩まで締め付けられてる!


 幼児虐待、ゼッタイ良くない! おまわりさーん、コッチです!


 何!? 私が何をしたって言うの? 誰か答えて!


 すぽーん!


 えっ、周囲に羊水が無い? ダメ、死んじゃう。 せっかく異世界に転生したのに、私死んじゃう!


「おぎゃー、おぎゃー」


「メアリや、良く頑張ったのう。 元気な女の子じゃ」

有難ありがと御座ございます。 有難う御座います」

「今はしっかり休むんじゃ。 仕事を少々休んだとしても、誰も文句はいうまいよ」

「ええ、そうさせてもらいます。 何だか眠くって」

「ああ、ゆっくりお休み」


 どうやら私を取り上げた産婆さんとマイマザーとの会話らしい。


 え? どうして話している言葉が分かるのかって?


 そりゃ、アカシックレコードがありますもん。 当然ですよ。


 しかし、せぬ。 生まれた直後なのに、誰も他の人が来ないんだよね。


 そもそも知らせにも行っていないみたい。


 何コレ、辺境伯の貴族令嬢じゃなかったの?


 貴族ってもっと華やかな印象があったのに、1人での出産でない分マシって印象じゃん。


 どーなってんの! 誰か教えて!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ちゅぱちゅぱ、ごくごくごく。

 ぷはー、マザーのミルクは最高だぜ! ちょっと薄味だけど。


 でね、気づいちゃったんだよ。 この部屋の広さ、いや、せまさに。


 目も見えないのに、どうして分かるかって?


 ふっふっふっ。

 それはずばーり、魔力察知である。


 いやね、お腹の中にいる時にひまだったので、魔力循環とか色々試していたんだよ。


 それでお腹の中にいた時は分からなかったんだけどさ、この部屋狭いのよ。


 薄ーく魔力を体表から広げていくとね、文字通り直ぐに壁にぶち当たったんだ。


 で、察するにこの部屋はズバリ、物置部屋!


 って、待って! 貴族令嬢の設定はドコで迷子に?


 しかも聞いちゃったんだよ、「ご主人様の寵愛ちょうあいを受けたからって、調子に乗らないでくれる?」って言葉。


 こりゃアレだね。「ご主人様」=「辺境伯」、「マイマザー」=「使用人」。


 何て言ったら良いんだろう? 貴族令嬢? どう考えても認知されてないよね。

 しかも、その見込みすら無いし。


 でさぁ、思い出したんだよね。 女神様の言葉。

『辺境伯の娘でアカシックレコードへのアクセス権~』


 うん、確かに貴族令嬢とは言ってないよね。


 でもさぁ、コレって詐欺さぎじゃない? 冗談だって言って下さい、女神様!!


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