第2話 魔女転生~えっ? スキルが存在しないんですか?~

「転生先の種族で希望はありますか?」


 じゃあエルフで。


「却下です。 あなたの場合は、死産乗っ取り型の転生になるのですが、エルフは滅多めったに妊娠しないんですよ」


 獣人って毛深い方ですか?


「地域によります。 北に位置する種族は肌が白くて毛深いパターンが多く、南に位置する場合は、浅黒い感じで毛は薄めです」


 日光の関係ですか?


「ええ、そうです」


 じゃあ人間で。 ところで転生特典ってあります?


「多少なら」


 選択可能なスキル一覧ってありますか?


「スキル一覧って何ですか?」


 へっ? いや、剣術スキルとか鑑定スキルとか。


「剣術は普通に練習すれば身につきますよ。 それより鑑定スキルって何ですか?」


 物を見て何なのかとか、構成物質が分かるとか。 後は人物を対象にした場合は、強さが分かったりとか。


「アカシックレコードへのアクセス権ですか? …まあ、それくらいなら」


 そもそも転生特典って、何がもらえるんですか?


「基本的には加護になりますね。 運が良くなったり、体が丈夫になったりとか」


 なるほど。 それじゃあ魔力量が世界一になる加護ってありますか? あっ、ありますよね魔力。


「もちろん魔法が存在するワケですから魔力はありますよ。 本来はきたえて増やすモノですが…、生まれつき魔力が多いドラゴンなどが存在しますから何とかなると思います」


 ドラゴンからの引用? もしかしてドラゴニュートとかに、なっちゃいます?


「いえ、あなたの世界観で言えば、魔力が多くなる遺伝子を組み込む感じですね。殺虫剤いらずの遺伝子組み換え大豆みたいに」


 あとは、多種言語理解とか。


「それもアカシックレコードへのアクセスで解決します。 もしかして魔女か何かを目指してます?」


 いや~、宮廷魔導士への成り上がり的な?

 魔導書がスラスラ読めるとか、精霊と仲良くなって精霊魔法とか使いたいですし。


「はぁ、仕方ないですね。 史上最強の魔法使いになれるように、因子を弄くり回しておきます」


 やふ~! 異世界転生無双、キタコレ!


 夢が広がるな~。 幼い頃から数々の逸話を残して、史上最年少で魔法学院へ入学。


 そこで、学院無双を経て宮廷魔導士になって、歴史に名を刻んでいくとか。


「あの、盛り上がっている所で何ですが、ありませんよ。 魔法学院」


 へっ? 無いの? 魔法学院。


「家庭教師で憶えるか、弟子入りですね。 普通」


 もしかして、有名な魔導士に弟子入りしないと、宮廷魔導士にすらなれないとか?


「まあ、戦争で手柄を上げるパターンも無くはないですが、最前線に魔導士が出れば、死にますね。 普通に。 だって、やりで突く方が早くて簡単ですから」


 そっかぁ、成り上がるのって大変なんですね。 じゃあ貴族か豪商の娘でもないと、魔術すら勉強できないのか。


 ん? 戦争の手柄がパターンになるのって、そんなに多いの? 戦争。


「そうですね、普通の人は何回か戦争を経験しますね。 まあ、内戦がほとんどですが」


 きびしいぜ、異世界!


「そもそも女性が魔導士になるのは難しく、多くは政略結婚になりますからね。 内戦回避に血族になるのは良くある手ですし、教育も嫁ぐ関係がほとんどです」


 そっかぁ、じゃあ日本みたいな所はないの? 陰陽師おんみょうじならワンチャンありそうだし。


「目下、戦国時代で一揆が多発する環境で良ければ」


 もっと危ない場所だった!


 他に戦争が少ない地域で、貴族令嬢とかになる方法はないの?


「辺境なら、無くはないですね。 中央よりも教育に関しては寛容ですし、自衛の技術を身に着けるのは良くあることですから」


 それで、お願いしやっす!


「うーん。 今なら魔の森に隣接する辺境伯の娘に、死産予定の子がいますけど、どうします?」


 ぜひそれで!


「えーとじゃあ最終確認ですけど、辺境伯の娘でアカシックレコードへのアクセス権、史上最強の魔法使いになれる諸々の因子込みの転生で良いですか?」


 あざーす! 目指せ無双人生!


「素質はあっても、努力しないとなれませんよ!」


 分かってますって。 大丈夫、まかせて!


「はぁ、特典転生って疲れるものなんですね。 じゃあ、次の人生で幸多からんことを!」


 行ってきま~す!




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