第12話 ヒガンバナ
※残酷描写今回はあります
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「何故、深夜なのに警戒用のライトが点灯していないんだ?」
その事に気づくとすぐにベランダから廊下に駆け戻り、廊下にある非常用の武器庫を開いた。これで砦の内は厳戒態勢が敷かれるはずだ!武器庫から取り出した六発入ったリボルバーを取り出して腰に装着しているガンホルスターにしまった。
玄関の扉を開け放して外に出て、壁に登るための鉄製の梯子に飛びつく様にして登り切ると壁の上に立った。びゅうびゅうと夜風が吹き付け、空には満点の星空がひろがっているがそれを楽しんでいる余裕はない。等間隔に並んでいる監視塔をまず確認しないと…。辺りを警戒しながら監視塔に近づくと濃い血の匂いがして開け放された入り口付近に見張りの死体と血溜まり広がっていた。
「見張りはもう死んでいるよな、そりゃ」
見張りの死体をひっくり返すと上着の胸元に赤い十字架が描かれたバッヂが付いてある。つまりこの見張りはトライアだということだ。
トライアは普通、専用のバッヂを身体のどこかにつけているとおかまから聞いた。自分も一応シャツの襟元に付ける事にしている。
「トライアがやられているとなると…相当の強敵なんだろうな」
おそらく自分の手にはおえない敵が出てきた可能性が高い。そう思ってポケットに手を突っ込んだがあるはずのスマホがない…寝ぼけていて持ってくることを忘れていたみたいだ。腰に付けているガンホルスターの横に無線があることを思い出して取り出したがその瞬間、無線が前方に弾き飛んだ。
出てきやがった!!無線が飛んでいった方向から考えるに敵は自分の背後!
瞬時に前に飛び出して腰のリボルバーを取り出し背後にいる敵に向けて引き金を引いた。狙いもろくに付けずに撃ったがどうなったのだろうか?
月が出ていないせいで敵の姿が把握しにくいし仕方無い…
黙って傭兵を目だけに使うと視界が開けた。地面に蹲っている若い女性がいた。華奢な背中にストレートの長い髪がかかり、地面に赤い髪飾りが落ちている。ぱっと見たかぎりでは敵のようには見えないが自身の安全のため素早く背後に回ると心臓を狙ってリボルバーを撃った。背中から心臓に向けて撃った弾はそのまま女性を貫通しコンクリートで跳ね返ってどこかにいってしまった。女性を中心にじわじわと血の池が広がっていく。
「た、助け…て…」
女性が手を伸ばして助けを求めている。成程、指先が黒くなっている事からどうやら心臓を打つとすぐにヴァンパイアは酸素欠乏に陥ってしまうらしい。念には念のため、ポケットから取り出した付け爪を素早く装着すると延髄を切り裂いた。おっさんとの戦闘から付け爪の切っ先さらに鋭くしてもらっていた。
「かはっ」
女性は血を吐いて絶命した。
銀弾が貫通した事からこいつはヴァンパイアだろう、それにしても初めてヴァンパイアを殺したというのに何も感じなかった。何故と疑問に耽るよりも取り敢えず監視塔のライトをつけていこうと思い死体から離れようしたその時、背後から濃密な殺気と共に何かが首に向かって振り下ろされている事に気づいた。
敵は一人ではなかったのか!?勝手に一人だと思い込んでしまっていた!そんな事分からないのに!
視界が急速に紅くなっていき、今の戦闘で擦りむいた膝が治っていくのを感じるが…脳からの指令が心臓に行き渡らないと心臓は止まる。つまり首の神経を斬られると如何に征服者といえども絶命を免れる事はできない。
死が迫った事により空間認識能力が格段に上がった今なら分かる。もう避けられない!!死にたくない!!
ガンッ
「どうしてっ……え?」
金属と金属が激しくぶつかり合ったような音がして、自分の首が宙を舞うことはなかった。前に転がって背後の敵から距離をとり振り向くと、そこには巨大な金属の盾が自分を守っていた。しかし、いるべきはずの盾を構えている人はいなかった…そう盾は宙に浮いていた。
驚きで絶句していると目の前にコトリと白いものが落ちた。一度見たことがある骨伝導型イヤホンである、それを耳に付けると透少年の声が耳に飛び込んできた。
「壁から飛び降りるのだ!すぐに!」
瞬時に言われた通り壁から飛び降りた。ゾクッとする浮遊感を一瞬味わった次の瞬間、両足の骨が爆散した。
「ぐっ」
すぐに足があるべき姿に戻っていくが例えようもないほど痛い。壁は9、10メートル位あり、そこから飛び降りたので両足複雑骨折…正確に言うと踵は砕け、ふくらはぎから太腿にかけての骨である腓骨、脛骨、大腿骨もボキボキに折れており、折れた腓骨が右のふくらはぎの筋肉を突き破っている。しかし、復元不可能な筋肉や骨はすぐさま血液に
「お兄ちゃん、大丈夫なのだ!?再生したら逃げるのだ!!」
「だ…大丈夫じゃないけど、もう部品はなんとかなったよ」
そう報告すると立ち上がり全力で玄関に向かって走り出した。足の爆散した骨や挽き肉のようになっていた筋肉は三秒ほどで完全に機能を取り戻していた。
「……部品?」
透少年は本部の奥で複数の自立カメラから送られる画面を見て、浮遊盾七四式ザマセンタに指令を出しながら二体のヴァンパイアに三次元戦闘を仕掛けつつ、もう一つの浮遊剣二十七式ザシアムを密かに敵に接近させていたが三の「部品」と言う言葉遣いに違和感を覚え、僅かに集中力が乱れた。
「マスター!!ミギニ、ナナド、ズレテイマス」
「しまったなのだ!」
慌てて再調整を行うが予想以上に彼岸花をあしらった髪飾りをつけている女性のヴァンパイアの動きが速い、盾の縁の部分を超速振動させて攻撃もとい牽制を行おうとしたが一瞬、カメラ外に出た瞬間忽然と姿を消し、徒らに電力を消費するだけとなってしまった。
「消えたなのだ!?ヒガンバナの紋章なのだ!?」
「オカシイデス。カメラデハカクニンデキマセン。ソノウエ、サーモメーターニモ、カクニンデキマセン。」
「やばいのだ。二十七式の操作を任せるのだ!カメラの半分は放棄。七十四式でヒガンバナの情報を集めるのだ」
彼岸花をつけた女性のヴァンパイアは圧倒的に強く長崎防衛戦の時に司令部を全滅させた敵としてコードネーム
しかし、三だけは知ることとなった。
普通の人間はもちろん、カメラですらも視認できない程の血の刃が高速で丸みを飛びた先端から射出され、玄関に向かう三の太腿に向けて発射された。
「太腿を切り裂き逃げれなくしてから……ククッぐちゃぐちゃにどろどろに…びしょびしょにぐちょぐちょに」
ヒガンバナはこれからの至福の時間に恋する乙女のように頬を赤らめさせた。彼女は部下がいない時に死にかけのヒトでとことんまで遊び尽くす事を自分へのご褒美としていた。快楽に身を投じることにしか興味がない女性ヴァンパイアは緩んだ口許から涎が垂れていることにすら気づかなかった。
ドクンッ
心臓が際大きく跳ねた瞬間、太腿から下への力が入らなくなったしかし、すぐに切り口から再生したのでことなきを得た。
やばい、全然気づけなかった…どうして首を狙わなかった?首を狙っていたら自分は確実に死んだはずだ、何故?
このまま、本部き入ってしまうと奴も一緒に入ってきてしまうので、仕方ないが闘うしかない。振り返り敵と対峙すると三は一瞬目を疑った。
戦闘中なのにとろんとした目つきをして頬を赤らめている気持ち悪いヴァンパイアの髪についているのは…先ほど銀弾で殺したヴァンパイアの髪飾りと全くおんなじだった。その上、身体つきも似ている。
「…何故?生きている?」
その三の呟きを聞いてヒガンバナはキャハハと可愛らしく笑った。
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ヒガンバナ…なんていうかアレなんですけど…こんなキャラの筈じゃなかった。筆者すら勝負の行方がわからないです。
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