第11話 過去の鍵は夢の中

第十話が全部消えて心折れて、復帰するのに時間かかりました。申し訳ないですm(__)m(いつもスマートフォンで書いているんですが、たまたまパソコンでプレビューを確認していたので同期していないデータが残っていて事なきを得ました)

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「待て」と野太い声をかけられにのつぎは仕方なく振り向いた。可愛らしいアヒルのTシャツがはち切れそうなくらい発達した胸筋と上腕二頭筋に目がいく。この筋肉達磨のフォアグラは筋張っていて食えるものではないだろうなとにのつぎは思いながら「何ですかっていうか誰ですか」と聞くと筋肉達磨は肩にそのアヒルのレインコートを着た幼女を肩に乗せた。

わらわこそアヒル=1世である。この妾にこの筋肉達磨をぶつけた罪、おい!待て最後まで聞かぬか!」

 放っておいても害は無いと判断し風呂場を出た。アヒルが人に変化した…もう面倒ごとの匂いしかしない。ただでさえ自分とは価値観がずれまくっているハンター達との共同生活に頭を悩ませているのにこれ以上はキャパオーバーである。さっさと体を拭き、着替えの服を着た。ここに来るまで着ていた学校指定の制服はハンター達の中でまともなルカさんが自分含めハンター達に「自分の服を洗うついでに皆様の分も洗いましょうか?」と言ってもらったのでお礼を言って洗ってもらっている。

 風呂場でドタドタという足音が聞こえる、明らかにあの二匹だけの足音ではない。もっとたくさんアヒル筋肉達磨が増えたのだろうか…

 さて、ここでハンター達の教訓を一つ教えよう。


 教訓一 困った時は上司へ丸投げ


 ルカさんが「丸投げは基本」と言いながらありとあらゆる面倒事を上層部に押し付けていたのを見て学んだ。ルカさんを見習い、早速スマホを取り出しおかまに電話をかけた。

「にのつぎ君なにぃ、もしかして夜のお誘いだったりぃ」

 反射的に電話を切ろうとした親指を理性で無理やり抑え込み本題に入った。

「はい、にのつぎです。リーダー至急で来てもらっていいですか?」

「そんなことよりぃ」

「来てもらっていいですか?」

そこでスマホの向こうから誰かがおかまからスマホを取り上げた音が聞こえた。

「あー、トライア?今、リーダー酔い潰れてるから後にしてくれない?」

「いや、それが緊急事態で風呂場にいきなり筋肉達磨が現れたんですよ」

 風呂場からはまだ、どたどたと足音が聞こえている。なぜかアヒルはは更衣室に入ってこない。

「あーね、もうほっといていいんじゃない。そんなことより皆で人狼ゲームしよってことになったからさ、トライアも早く上がってきなよ」

 更衣室にかけてある時計を見てみると午前0時を回っている。確かに花見月もそう言ってるし、もういっか。

「じゃあ、早めに戻ります」

「んー、なるはやでたのむわ」

 そういうと電話は切れた。三は電話をしまうと廊下に出て違和感を覚えた。あれだけバタバタしていた風呂場が自分が出た途端、唐突に静かになったのだ。少し不気味に感じたが振り返らずに廊下を真っ直ぐ歩いていく、しかしなぜかいつまで経っても廊下の突き当たりがこない。

「え?こんなにこの廊下長かったっけ?」

 いよいよおかしいぞと思い始めた時、見覚えのあるものが見えてきた。アヒル風呂の入り口が見えてきたのだ。

「…ループしている?」

 無限に続きループする廊下と言えば、いわゆる学校七不思議の一つ無限階段に似たものを感じる。

「確か、後ろを振り向くと何か起こるんだっけ?」

そう呟いて、後ろを振り向くと人型の黒い霧のようなものがいた。

明らかに人ではない!

 黒い霧のようなものが動き出す前に一気に距離を詰めて攻撃を仕掛けたが繰り出した右拳は黒い霧を貫いただけで手応えがなかった。

「お…え……は…だ…」

黒い霧が不気味な掠れ声で何かを言った。

 物理的な攻撃は効きそうにない。ならば銀製の武器が必要となってくる。黒い霧が揺らめいてまた掠れた声を出した。

「おま…は……れ」

何を言っているのかわからないがどこか聞き覚えのあるような声だとその時気づいた。そして何故か攻撃を仕掛けてこない。

「おまえ………」

「おまえは誰だ…?」

よく聞いてみるとそう言っている。何をしたいのだろうか?

「自分の名前は三途守だ」

試しに答えてみることにした。これでこの廊下から出れればいいのだが

「違ェ!」

黒い霧が不意に膨張して怒鳴り声を突然出した。にのつぎは突然に発生した突風で壁際に打ち付けられたが、三は受け身を咄嗟にとりダメージを軽減させた。初めて攻撃を仕掛けてきたが廊下から出られないという状況を打破する方法はない。仕方ないがここは会話を続けるしかないだろう。

「何が違うんだ?」

攻撃がまたくることを警戒しながら聞いてみた。

「きづけよ!!」

 目も開けられない程の突風が吹き荒ぶ。しゃがんで風に飛ばされないようにするが、それでも時々身体が宙に浮く感覚を感じた。この黒い霧は何を怒っているんだ?老人の声のように掠れて聞きづらかった声が自分が三と言った瞬間から聞き覚えのある若い男のような声に変化していることに気づいた。

「どこかで会ったことがある…?」

黒い霧は怒号をあげ、風も先程とは比べものにならないほど強力になってきていた。最早、呼吸することすら難しい。

「何故お前は生きている?死んだはずだろ!?何故一般の16歳が紋章を持っているんだ?いつ都市の要塞化が進んだんだ?おかしいよな?何故!!?」

今までの中で一番強力な風が吹き、三を吹き飛ばれて風呂場に突っ込んだ。頭がくらつき視界は滲む。

「何故…?」

 そう呟くと風呂場の壁がドロドロと溶け始めた。

異様な光景に目を見張っていると風呂場の先の廊下が周りの風景とがごちゃ混ぜになっていた。物と物の境界がなくなり自分すらも何がなんだかわからない。極彩色に溢れ崩れさった夢は記憶の断片を三に残し、三を覚醒させた。

「夢か、本当に夢だったのか」

夢とは思えないほど印象的で様々なことが頭に染み付いて離れない。特に自分で呟いた「何故」という疑問が耳をついて離れなかった。

 三はしばらくソファの上で夢の出来事を反芻していたがよく考えるとよくわからないことがたくさんあることに気づいた。冷や汗でびっしょりと濡れた服が気持ち悪く、乾かそうと思ってハンター達との共同の部屋を出ると廊下に出て階段を降り、二階のテラスにでた。今夜は新月のようでいつもより星が輝いている。真冬だけあって空気も乾燥していて天体観測には持ってこいの夜だろう。ベランダに設置された固定機銃の横で柵に顎を乗せていると、次第に何故こんな夢を見るハメになったのかを思い出した。

 夕方頃に入った風呂を出るところで花見月から着信があり、人狼ゲームするからなるはやでーと言われ、なるべく早く戻ってみると透少年は寝ていたがそれ以外のメンツが酒を飲んでいた。

 おかまとルカさんは早くも出来上がっていてその上、未成年の花見月も酒を飲んでいた。誰もとめず花見月にビールを勧められ断ると人狼ゲームで負けた陣営に酒を飲ませるという罰ゲーム付きで始まり、負け今に至るというわけだ。

「はぁー、まさか15歳で悪酔いすることになるとは」

 若干アルコールの匂いがするため息をつくと夢のことに思考を戻そうとして違和感を感じた。違和感の正体はここからでもみえる大きな灰色の壁に目が止まった時点で気づいた。

「何故、深夜なのに警戒用のライトが点灯していないんだ?」


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しばらく不定期になります!(でも日曜日には投稿できればと思っていますよ)


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