第9話 操血という能力
書き直しました!
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「トライアというのはこの子のことよー、イケメンでしょ」
おかまが頭をぽんぽんと軽く叩いてきた。
それをしていいのは異世界転生したイケメン勇者だけだということをおかまは知らないらしい。
今まで別段、触れてこなかったがおかまの身長は自分が170あるかないかなのに対し200を超えている。
「イケメンでは無いな、よく言って中の下くらいだな」
ハンター特有の常識の無さも備わっているらしい。
「こいつもか…」
ボソッと言ったつもりだったが聞こえていたらしい「ったく、最近の若者は…」とおっさんはため息をついた。
「ところで何の紋章を持っている?」
おっさんの声は低音がきいていて小さな声でも聞きやすい。繁華街で酔いつぶれているおっさん達とは大違いだ。ジゴロにはなったらさぞかし稼ぐんだろうなと思いつつ答える。
「えっと、征服者と傭兵です。後、操血も一応、夜なら使えます。」
傭兵とは筋力増加のことで、爺曰く一番ありふれている能力らしい。あのスライムと死闘した日から意識して血を動かすことができるようになっていた。例えば血を使って小さなボールを作ったり、糸にしたり、棒にしてみたり…汎用性は高いが戦闘での利用は難しいだろう。
例えば、剣を作ったとしても既にある銀の剣やナイフを使った方が殺傷力が段違いだ。その上、鬼教官真白によると動体視力が高いならバイクに乗って花見月みたいに敵に突っ込み前線を崩してくれる方が助かるとの事だ。
真白さんのアドバイスはいつも、単語で言ってくるのだ。ここまで翻訳した自分を褒めて欲しい。
この世界ではタイマンはっての一対一のバトルが起こるのは稀らしく、そんなことをするのは強いトライアだけで、人間だったら、
リーダー強いんだなぁ、
「征服者と傭兵に操血も一応使える?つまりとんでもない再生力で人狼並みの筋力で暴れることができるのか…」
「まぁそういう事になるわね、でもこの子何かしら縛りがあるっぽいわよ、思い当たる節あるでしょ
確かに、身体が一定時間動がなくなり気を失うという代償以外で能力が使えたのは、蜘蛛の時もスライムの時も死にかけてからはじめて動くことができた。
「はい、確かにあります」
死にかける事が縛り、なのだろう。
「良ければ、憶測でいいから教えてほしい」
「おそらくですが、死にかける事ではないかと」
そういうとおっさんはあからさまに残念そうな顔をした。
「ちょっとぉー、そんな顔はないでしょお?防衛にはとっておきの人材じゃない」
防衛はまずいな、先輩がどこにいるのかは分かっていないけど、もし生きているならこの本部と呼ばれる場所にいるはずだ
なら、前線に立っていないと移動は難しい、どうすれば…
「あのー、できれば前線がいいんですけど」
おずおずと持ち出すとおっさんは頭をガリガリ掻きながら喋り出した。
「あのな、ぼ…
いや、自分は先輩に会いたいんだよ
そういえば日常を奪われたね、自分にとっての日常とはなんだったっけ?
はっきりと思い出せるのは屋上からの記憶だけだ、そこから前はまるで夢のような儚げな記憶でしか残っていない。
あったかなかったのかも分からない朧気な記憶でしかない。
今更だけど、どうして自分はこんなに非日常な世界になってしまった世界を受け入れているのだろのだろうか?
ハンター達からはカルチャーショックを受けたがこの荒廃した世界からは何故かしっくりきてしまっていた。
「どうしたのだ?ぼーっとしているのだ」
「いや、少し違和感を感じないことに違和感を感じるというか…」
うまく、言葉に出来ず詰まっているとおっさんがうんうんと頷いた。
「お前もか…奴らに対する憎しみをコントロールできなくて内面に押し殺した感情が爆発しかけているのだな」
どこから出てきたその結論!?
「いや、違っ」
おかまがボソッとおっさんには聞こえない声量でつぶやいた。
「黙ったいた方がいいわよ、少尉ちゃんは大体いい方向に話を持っていってくれるからねぇ」
「ぇ…あ、はい」
おっさんは少尉の位置についているのかおっさんは少し目をつむっていたがしばらくすると、意志のこもったその青い瞳を向けてきた。
「俺に勝てたらいいぞ」
そういうと、おっさんはくるりと背を向けに路地裏に入っていってしまった。おばあちゃんの知恵袋ならぬおかまの知恵袋に従った結果、本職ベテランの方と勝負をすることになってしまった。
「リーダーのアドバイスでいいことがあるなんて驚きです」
ルカさんがニコニコとしながらそう言った。この人の場合、嫌味か本当の事を言っているか分かりにくくて困る。
それ以前にいいことじゃねえよ!
「そんなことないわよぉ、私のアドバイスは的確でためにしかならないのぉ」
「ふん?」
煽ってるとしか思えない会話だが、ルカさんは無邪気にニコニコと笑っている。おかまも別に気にしていないようだ、慣れきっているのだろう。
何年も一緒にハンターやっているんだろうな。
それはそれとして、今はあのおっさんをどう倒すかである。相手に自分の紋章は知られているのに対し、自分は相手の戦闘スタイルを知らない、その上おっさんがトライアかそれとも普通の人かもわからない。何もわからなければ対策のしようも無いし一度、おっさんに詳しそうな人にでも一度聞いてみるか。そう思ってルカさん達と談笑しているおかまに話しかけた。
「あのー、リーダー、今いいですか?」
「あらぁ、
「お兄ちゃんならぁいつでもぉオーケーなのだぁ」
透少年がリーダーの口調を真似したのをクスクスとルカさんが笑いだし、このままでは話が脱線してしまうと思ったので、少々早口でおかまに聞いた。
「おっさんはトライアなんですか?」
「違うわよぉ」
違うのか、なら紋章については警戒しなくて大丈夫だな。
「戦闘スタイルはどんな感じですか?」
「ん〜。何だったけぇ、狂狼ちゃん覚えてる?」
おかまは覚えていないらしく花見月に話を振った。
「ある程度は覚えています」
「じゃあ、教えてあげてぇ」
「はい了解です」
そういうと花見月はこちらを向いた。
「銃で撃ってきたり、近づいて殴ってきたりって感じだったよ、銃は弾玉の節約の為に大体は普通のリボルバーを使っていたね、私の記憶の限りでは」
「了解、感謝です」
「じゃっ、あとは頑張ってね」
「お兄ちゃん頑張ってなのだ。ぼくたちはお風呂でもみてくるのだ」
そう透少年が言うとリーダー達は自分からに応援の声をかけてお風呂に行ってしまった。
結構、みんな乗り気なんだな。ちょっと自分も行きたくなった。
近くにあったベンチに座り、どうおっさん相手に立ち回るか考えていると頭を軽く叩かれた。
誰かと思って視線を上げると爺がいた。
「えっ、何ですか?」
「特訓じゃよ」
どうやらわざわざ、自分を鍛える為に残ってくれていたようだ。
「えっ、はい」
少し、お風呂が名残惜しか惜しかったが先輩の為だ仕方がない頑張ろう。
そこから、爺による一風変わった特訓が始まった。
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「つ、疲れた…」
特訓で疲れた身体を休めるために椅子に座りながら、リコピンの代わりにヘモグロビンが入ったトメイトウジュースならぬブラッディジュースをグイッとあおった。
口に広がる鉄分の味が心地よい、
しかし、操血がここまで使えるとは思わなかった。
これなら、もしかしたらおっさんを倒すことができるかもしれない。先ほど自分で傷つけた手のひらの十字の傷はずきずきと痛むが治りかけていた。爺曰く、ちょっとした傷なら紋章を完全に発動しなくても治るらしい。
「さてさて、やっと時間ができた…」
自分の膝の上には先輩のバックがあった、留め金を外すとずっと気になっていた物を取り出した。
そうそれは
少しがっかりしながらも、明日の夜のために寝た。
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12時00分、
昨日はぐっすり寝たので今日は準備バッチリ、もう仕掛けも出来ている。
時間を確認しようとスマホを開いた瞬間ら殺気を感じ
路地かは正面に見える荒廃したビルの7階から何かが飛んできている。何が飛んできているのか見極めようと
まさかここからそこに攻撃できるとは敵は毛ほども思っていないだろうな。
ビルの7階で月光に反射して光っている敵のスコープを真正面から睨みつけた。
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