第6話 銀弾
「え、
あのバッグからは先輩の身分証みたいなものも出てきていたのだ。そこには、ハーフトライアと書かれた下に
「先輩って誰なのだ?」
「先輩は自分の、あれ、なんだっけ?」
先輩は自分のなんだっただろうか、大事な人なのはわかるが…家族?親友?恋人?幼馴染?どれも当てはまりそうで当てはまらない。
「まず、先輩は男性、それとも女性?」
赤髪、もとい花見月がそう聞いてきた。
「それは、もちろん…女性だったかな?」
確かに、屋上にいた時は覚えていた様な気がする
「じゃあん、なにか特徴的はないのぉ?」
特徴、特徴といえば
「…紅でした」
「どうゆうことなのだ?」
思い出したことをそのまま言ってみた。
「ただ、とにかく紅かったです」
ハンター達は抽象的すぎて、どこからどう切りだしたらわからないようだおかまが口を開こうとしたと同時に、食堂の方からルカさんの声が聞こえた。
「みなさん、ご飯ですよー」
語尾に星がついているような上機嫌な喋り方に自分は少し安心したルカさんの機嫌は治ったらしい。
「とりあえず、この話を保留にして、朝食をとりに行くか」
爺はそう呟くと、食堂の中に入って行った。
「じゃあ、僕達も入ろうなのだ!納豆に関してはお兄ちゃんに任せるのだ」
『タス…ケテ』とゴミ箱にフィットしているメタリックサンダースを軽く無視して、透少年も食堂に入って行った。
「食べれる範囲で食べてあげるよ」
と透にいうと、透以外が反応した。
「キャー、イケメンンン!」
女子の黄色い声、男子なら一度は憧れるかもしれない。しかし、見た目アラサーのおかまの黄色い声はただただ気味が悪かった。
「リーダー、トライア君ひいています…っていうかキメェ」
とうとつ、花見月がリーダーに敬意を払わなくなった。そういえば、赤髪で名字が花見月って何かしっくりこないんだよな、だから、おかまは狂狼ちゃんって呼んでいるのかもしれない。
「井場、気持ち悪い」
「キ、キメェって酷ぃぃ、ねえそう思うでしょぉ
悪口のダブルパンチをおかまは軽くは受け流し、猫撫で声で近づいてきたので食堂に逃げた。
食堂に入り、落ち着いた雰囲気を持つルカさんが大量のひきわり納豆をかき混ぜているのをみて、何故か少し安心してしまった。そろそろ脳がこの状況に順応し始めているのかもしれない。食堂の椅子に座ると先に中に入っていたメンバーの顔が見えた。透君は怯え顔が青白くなっている、爺は震える手で胃腸薬を用意し、ルカさんは満面の笑みで納豆をかき混ぜていた。
「は?えっとあのぉ、ルカさん?大切な食料なんですけどぉー、今、慢性的な飢饉で大変だって分かってます?」
絶句して、地声に戻るおかま。後ろにいる花見月も真白も現在の状況が理解できないのかピクリとも動かない。
「だからどうしたんですか?それが私のコードネームより大事だと?」
満面の笑みを向けられおかまは押し黙ってしまった。
「私、主食、カロメだから」
そういうと、真白はキッチンの端に箱で置いてあるカロリーメイトを二本取ると食堂を出て行ってしまった。
「あ、私、主食、ビーフジャーキーだから」
と、同じようにカロリーメイトの横に置いてある袋を持ち出そうとしておかまに止められた。
「わ、わたしたち一蓮托生ですわよね?」
語尾がおかしい、なぜかお嬢様風になってしまっている。
「べつに納豆に食べても死にませんよー、リーダー?」
と言って、逃げ出そうとする花見月にルカさんが立ちはだかった。
「逃すとでも?」
笑顔の圧がすごい、その形相はまるで般若の笑顔であった。
「ひっ、悪いのはリーダーでございますぅ」
部下、リーダー共々笑顔の圧のせいで語尾が狂い3分後には真白以外の全員が席に座っていた。今、食堂にいる犠牲者五人の心情は一致していた。
『『何で真白(お姉ちゃん)は逃げれたんだ?』』
一方、真白はソファーに座りカロリーメイトを開いていた。顔を隠している白い紙をはずすともそもそとカロリーメイトの一本目を食べ始めた。
「納豆風味?」
カロリーメイトからは納豆の匂いがしていた。
_______________________________________________
11月に車窓を開けて国道を制限速度を200オーバーで走っていくのはハンター達の改造車。その車の上には座禅を組みながら納豆を噛み締めた様な表情をしたおかまがいた。そして、そのおかまの真下では微かに残る納豆の匂いとハンター達の気まずい雰囲気に辟易している高校生がいた。
「……あのー、今どこに向かっているんですか?」
おかまは納豆菌のせいで、顔がシワシワになるとか何とか言って、今この車の上で座禅中だ。爺はなぜか後ろでトマトジュースをがぶ飲みしている。
その横で
誰のせいだよ!?
自分の隣の透はノートパソコンを指が残像でぶれるくらいのスピードでカタカタやっている。若干、ノートパソコンが透のダイビングに追いついていけてない気がするのは気のせいだよな?
透がエンターキーを押した。
するとパソコンに打ち込まれていた大量のアルファベットやら何やらかんやらが青く光って消え、その代わりにいきなりバンのスピードが徐々に下がりはじめた。
そして、そのさらに横では、真っ白な紙のせいで表情が窺えない真白さんが巫女服の緋袴を直している、真白さんは顔が白い紙で隠されている上に髪の毛も真っ白なので首より上がないかの様な錯覚を覚えるのだ。
夜中にこの人と会えば確実にお化けと間違えるだろうなぁ、そんなことをを考えているとふと真白さんの髪飾りが目ついた。紫陽花と銀の三日月をあしらったもので綺麗な代物だ。
まじまじと髪飾りを見てしまい、それに気がついた真白は気づいたらしく話しかけてきた。
「何?」
「いや、髪飾り綺麗だなって思ったんです」
そういうと、真白さんは
真白さんは透少年の頭の上で手の中にある、大輪の向日葵の髪飾りと赤い小さな実がついた、いくつかついた髪飾りを見せた。
「どっち」
どっちって言われても何がどっちなのかわかんねえよ!
せめて声に抑揚をつけてほしい。多分「どっち」は「どっち?」ってことなのだろうか
圧倒的に何も伝わってこない「どっち」からは何をしてほしいか判断できず、真白が二つの花飾りを見せているのではなく差し出していることに気づいた。
「えっと、この赤い実は何ですか?」
薔薇のようなけばけばとした派手な赤色とはいえないが、真紅の部類に入る色をしていた。
「ヤマモモ」
虚勢を張っているよう見える大輪の向日葵よりも
「じゃあ、ヤマモモで」
そう言って、ヤマモモを取ろうとすると真白さんはそのヤマモモの髪飾りを手に隠し、次に手を開いた時には藤のような黄色い花がいっぱい連なったようなブローチが二つあった。
いや、凄っ
「…きんぐさり、あげる」
「あ、ありがとう」
そのうちの一つを取ろうとしたが、二つのブローチは絡まってしまっていた。
「どっちもあげる、私には必要ない」
「え、あ、じゃあ遠慮なく」
ちゃんとSVOを使った分に少し驚きつつも、そのブローチを二つとも取ると、ポケットにしまった。
やはり、ハンターに不思議な人が多いなと
_____________________________________________
ドライバーは花見月がしている。
さっきからアクセルをガンガンと踏みつけているのが怖い。しかし、スピードメーターは先ほどみたいに針が右に振り切れてしまっているということはなく、100キロより先は出ていない。
「よしっ、これでやっと車酔いから解放されるのだ。メタリックサンダースお手柄なのだ。かさ張るのに連れてきた甲斐があったのだ」
中々、サラッと透少年は酷いこと言うよな
『カ、カサバル?』
ノートパソコンからメタリックサンダースの声がした。
『チナミニ、イマ、コノバン、ハ、エヒメケン、ニ、ムカッテイマス。』
そう、メタリックサンダースが言った瞬間、車窓から強烈な潮の匂いがした。車窓から身を乗り出すと瀬戸内海が冬の太陽に弱く照らされて鈍く光っている。空を見ると灰色に曇っていた、雨雲みたいな真っ黒な雲はないがパッとしない天候だ。
「うん?瀬戸内気候から考えると曇りは少し珍しいのだ」
少し眉を顰め、透少年は何かを考えてこんでいる。
「あー、やっばぁぁあ!!みんな後ろみて!!」
いきなり、花見月が叫んだ。
車から身を乗り出した状態のまま後ろを向くと、大量の異形の存在がいた。学校で前にみた蜘蛛のようなものや、赤ぐらい蜂みたいなやつや、脚がうじゃうじゃとあるムカデ、極め付けに元の存在がわからないくらい、ぐっちゃぐっちゃになりただの赤黒い肉塊にしか見えないやつにもいる。怖いもの見たさにもっと身を乗り出そうとすると後ろから強い力で引き戻された。そのとき、耳の近くに何かが高速で飛んでいった音がした。
「死ぬよ?」
真白に引き戻されたらしい。
「あ、ありがとうございます」
「リーダー!どうしますか、殲滅しますか!?」
花見月が声を張り上げる。
「あったりまえよぉ!!こんだけの大群久しぶりだわぁん!」
「了解です!!全員、骨伝導イヤホンを装着!!指示は透、任せた!」真白さんが「貸す」と言ってから骨伝導イヤホンを渡してくれた。
「あ、ありがと」
骨伝導イヤホンを装着すると、透少年の声が聞こえた。
『只今、11時23分、瀬戸内内海付近、天気は7、風は北西に3、
「「「了解!!」」」
バンの後ろの座席のところが倒れ折り畳まれ天井はスライドし前の天井に吸い込まれた。バンは軽トラのような形になっていた。軽トラと違うところを指すとすれば荷物を置くはずのところには二脚の重機関銃が置かれ、その横には赤い流線が描かれたオートバイとその他諸々の武器が大量のに置かれていたと言うことだ。
花見月はその赤いオートバイに飛び乗りエンジンをかけた、すぐに威圧感のある、まるで獣のようなエンジン音が空気を揺らした。手には銀の鉈、腰にはサブマシンガンを結わい付けて花見月はアクセルを思い切り踏み抜いた。急速な加速、身体にかかる凄まじいGをものともせずさらにアクセルを踏み込む。花見月は赤い疾風となって蟲どもに突っ込んでいった。銀の鉈を構えると目の前にいる蟲たちを斬りつけ、又は轢き殺し縦横無尽に殺戮の限りを尽くす。
「流石に鉈じゃ、致命傷は与えられないね!」
それでも、斬りつけ弱った蟲どもを轢き殺していく。
花見月の背後には踏み潰された蟲の死体が大量に転がっていた。
遅れてやって来た
しかし、鉈にくらべてあたりまえだが隙が多いなので、バンから
そしてバンでは三つ
「準備完了、残りの玉は5Lです。
『了解なのだ!突撃部隊はバンに戻ってくるのだ、狙撃部隊は空中の蟲から狙撃するのだ突撃部隊が戻ってきたら、バンのスピードの落とし蟲たちをひきつけるのだ!!』
そのハンター達の現実離れした戦闘に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます