第3話 ロゴスは衰え、ミュトスは蘇った

 迫り来る銀の刃を前にその小学生が巻き添えを食らわない様にするだけで精一杯だった。後ろに飛びのこうとしたが残念ながら後ろは壁、今、しゃがんだり避けたりするのは無理だろう、刀は自分の首に向かって速度を緩めずに迫ってきていた。

「いや、ま待っ」

 首を後ろに少し下げ、致命傷は避けようとしたがそれをするよりも早く刀の冷たい感触がした。

 首の肉が焦げるような音がした。もう死ぬ、まさか挨拶が銃弾と日本刀だなんて、そんなアグレッシブなハンター達だとは思わなかったのだ。

「ってあれ?」

 生きてる?首元にヒリヒリとした金属の感触はするが首は斬られてはいない。そっと辺りを見渡すと困惑した表情の赤い人と自分に刀を突きつけている殺気だった老人がいた。

 これ、どっちにしろ殺される気がする。

 死ぬ前にネチネチとした嫌味を言ってやろう。黙っているよりは随分マシに死ねるだろ


 にのつぎは息を深く吸い込むと早口で嫌味を言いだした。

「あのー、自分、挨拶が銃弾なんてカルチャーショックなんですけど…自分こんにちは!って言いましたよね?」

 そう言うと、さっき銀の鉈を振り回していた赤い髪をした女性が「私はこんにちは!って挨拶したよ」と言った。

「でも、挨拶といっしょに凶器も返されたんですけど」

「細かいことは気にしちゃダメだよ!」

「細かい事とは!?」

首にドキッとする痛みが走った。

爺がさらに刀を強く当ててきたのだ、

「おい、小僧、お前は死にかけていることをわかっていないのか、分かっているならそのお喋りな口を閉じろ」

老人がしゃがれた声で脅しを口にした。

「いや、重々分かっていますけど、っていうか刀どけてくれません?さっきから肌が何かピリピリしてるんですよ」

 ダメ元だけど、刀を首から離してくれる様にいってみた。首に刀がさらに食い込んでくる感触がした。

 やっぱりダメか。

「うっ」

首から血が流れ始めた感触がした。

 痛みに顔をしかめていると、突然、奥の方のドアが開いて、紫の服を着たやけにケバケバしいメイクをしている男?の人が入ってきた。

「はいはい、一回落ち着いてねぇ、おじじとそこのおぼっちゃん、あら、よく見るとちょっとタイプかもぉー」

 腰をうねうねさせながらら、やけに鼻声で話しかけてくる。いや、怖っ!!目の前の爺さんより怖っ!全身の肌がゾワッと鳥肌がたったのを感じた。その時、腕の中でモゾモゾと白衣を着た小学生が動いた。

「わわ、僕の白衣が汚れちゃうのだ、お兄ちゃん離してなのだ!」

「ああ、ごめん」

 人質にしていた小学生を解放した。

多分、この子がいてもいなくてもこの爺さんは刀を振るう気がするしね。

 じ、じ、い、め、末、代、ま、で、祟、っ、て、く、れ、る、わ、怨念を込めた眼差しで爺を睨みつけた。

「あら、そんなにいいポジション私に譲ってくれるの?」

 オカマ?オネエっていうのかな、の人がそう言いながら近づいてきた。怨念は霧散した、とにかく早くここから去りたい!近づかれるなら死を選ぶ!!

「ひっ!」

 恐怖のあまり、情けない声を出して後ろに下がろうとして後ろは壁で下がることはできないというこを思い出した。

「爺さん、一回解放したら?その子あんまり悪い子じゃなそうだよ」

赤髪で銀の鉈をふるっていた人が自分の様子を見て、取りなしてくれた。

「うむ、それもそうか、うるさいガキだが敵ではなさそうだしな」

 そう、爺さん呟くと突きつけていた刀を血を振り払うために一度刀を振ってから鞘に刀身を納めた。

「おじじ、室内でそれをするとぉ色んなところズタズタになるからやめてよねぇん」

 オカマは鼻声で爺さんを非難すると、爺さんは素直に謝った、ちょっと意外だ、

「すまん、癖でな」

「それで、わたしのクマさんの首も切ったんだよ、ほんとこのクソジジイは、」

 赤髪の人の後ろにあるソファーに世界的に有名な黄色くて蜂蜜が好きで本名ほんみょうがサンダースのクマさんの首無しぬいぐるみがあった。

 怖っ!

「あっ、その首無しサンダースの切られた頭に僕特製のAI詰め込んでおいたのだ!取ってくるのだ!待っててなのだ!」

 そう言って、扉の方に指をさしたのは白衣を着た小学生、こんな小さな子までハンターになっているのか。いや、運良く救出された子供だろうな、きっとさすがにこの歳でハンターは体力的にも精神的にも無理だろうな

 ん?僕特製のAIってなんだ?

 


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