第二話『マジカルバナナ』

「無聊は退廃を呼び、退廃は堕落を招く。もって、なんらか文明的活動を催すことをここに提案したい」


「さんせー。ひとって平和は飽きるよねぇ、やっぱり」


「人類の宿痾だな。ここは妥当に世界終末時計でも自作するか? 今度の文化祭で演物につかえる」


「ナイスアイデアっ! 材料はそのへんの空きダンボールを使えばいいし……あ、のこり何秒にしよっか?」


「ちょうど五……ミリセカンド秒。目算その程度だろう。生憎、競技向きの世界ではないようだね」


「もう指摘する気力も起きませんけど、普通こういうときはマジカルバナナとかしりとり……は御免被ります」


「ミラクルバナナかぁ、いいねー、それ。じゃあわたしから、マジカルバナナっ! バナナといったら黄色!」


「ボクかな? 黄色といったら警告」


「警告といったら無視だろ」


「無視とみれば射殺! 撃つと動くっ!」


「どこの世紀末国家ですかっ! 私何を連想しても地獄じゃないですか! ……ああもうっ、射殺といったら密猟動物!」


「君のが最も闇を感じるよ、いや、畏れ入る。……密猟動物といったら裏取引だ」


「裏取引といえばマネロン。さもなきゃ捕まる」


「マネロンといったらアル・カポネっ! 歴女の腕がなりますなぁ」


「ばいしゅ……禁酒法。言わせないでください。逐一地雷をトスしなきゃ気が済まないんですかあなたたちは」


「やはり君のが一番闇を窺えるよ。禁酒法といったら無益。酒は最も苦しんでいる動物の発明品ゆえにね」


「人生」


「そういうときあるよねぇ。あるある。人生といったら……諦めかなあ。わたしの人生は基本そんな具合だよー」


「哲学っ! 虚無主義はよそでやってくださいよ……もはや、諦めといったらこの関係性ですね」


「この関係性といえば……無秩序かな。良くも悪くも」


「無秩序といえばそこのツンデレガールの情緒」


「そこのツンデレガールの情緒といったらジェットコースターかなぁ。そこがかわいいんだけどねー?」


「いったい誰のせいだと思ってるんですかっ! ジェットコースターといえば遊園地です。もうその話題から離れてください」


「遊園地といったら商業。夢は売りものだよ」


「人の夢と書いて儚い。商業といえば資本主義」


「資本主義といったら……やっぱりお金かなー。どうしてお金の降る天気はないんだろ」


「お金といったら時間ですかね。時間は等しく振りますよ。いままさに無為な時間が過ぎていっていますが……」


「ほんとだねぇ。お金持ちになるのは今度にしようかなぁ」


「だな。……死ぬ前日にも似たようなことを言ってそうだが」


「違いないね。まあ、込み入った事情は明日のボクらに差し上げるとしよう」


「嫌なサプライズですね。驚きもしませんけど……」

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間違えた学生四人が遊ぶさま @Aithra

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