間違えた学生四人が遊ぶさま

@Aithra

第一話『しりとり』

「退屈は親の敵だ。皆、惰性のうちに死に至る。よって、なんらか文化的活動を催すことをここに提案したい」


「さんせー。やることなさすぎて、あやうく溶けるとこだったよーホント」


「ま、過半数とられた時点で勝ち目ないしな。四人だろ? ここは無難にスイス海軍の展望について語るか」


「無茶苦茶難儀略して無難ですかっ! しりとりとかマジカルバナナとか、そういうのを挙げる空気ですよね普通!」


「しりとり! いいねーそれ。じゃー、しりとりのりーからで」


「よし。リンカーン。……の描かれた5ドル紙幣」


「初手デッドボール、さすがだ。胃潰瘍」


「うー、ウラン化合物っ」


「……積み木、です」


「キュリー夫人。……のラジウム、だ」


「これも才能だな。無症候性キャリア」


「あー、あー、亜鉛酸ナトリウムっ」


「……酢豚」


「武田信玄。……の父、信虎」


「頭がよすぎるしわ寄せか? ランゲルハンス島」


「ウラン化合物っ! は言ったし……運動機能障害っ!」


「いりごまっ!! なんでいちいち物騒なんですか!! 毒劇の後遺症残ってるじゃないですか!」


「あはは……なんか、つい? ごめんね」


「うあー……私の交友関係、いつから間違えたんでしょうか……」


「何を言う。ボクはこの仲に誇りを抱いているさ。君にもね。マウス」


「ほかと違って、かなり癖があるしな。けどまあ、嫌いじゃない。ステンレス」


「わたしは大好きだよー、みんなのこと。素直じゃないとこもかわいいし? スイス」


「……なんか私が意地っ張りみたいじゃないですか。別に私だって、いやとは言ってませんからね。すずめ」


「曰く、界隈用語では、彼女のような類を”ツンデレ”と呼称するらしい。先に学術書(ラブコメ)で読んだ。……メントス」


「だってよ。ツンデレ少女。言動不一致は損するぞ? スラックス」


「まあまあ、そこがチャームポイントなんだからいいのー。スタンスミス」


「余計なお世話ですよ。……すもも」


「そんな顔で見るのはよしてくれ。ほんの戯れさ。モーターレース」


「傍目には面白いから歓迎するけどな。スティッキー・フィンガース」


「なんだかんだ、照れた顔がいちばんかわいいよねー。スイーツパラダイスっ!」


「ああもうっ、スターダストクルセイダース! ”す”攻めで着実に追い詰めるのやめてくださいよっ!」


「ふむ、すまない、流石に蛇足だったか。時間も時間だ、長引きそうな手は控えよう。スト規制法」


「ああ、もう六時か。よし、このループで最後にしようぜ。ウィーン条約。……頼んだアンカー。ちゃんと”ん”で終わらせろよ」


「おー、責任重大だねー。うみねこ! がんばれー!」


「どうしていつも、私ばっかりこんな役どころなんですか……。こ、こですよね……。……孤立無援。……もう二度としりとりはやりませんから」


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