第9話 黒髪の少女

 入学式を終え、教科書を取りに行くなど諸々も終わり、とりあえず教室に戻り自己紹介TIME。


「では皆さん改めまして、こんにちは。私は今日から担任になります新庄しんじょう美咲みさきと言います」


 新庄美咲

 身長 168cm

 体重 Secret

 スーツに青みがかった髪を結び、カッコイイ見た目の女性だがめっちゃ声が可愛い。そしてランクAの呪術師。

 影を媒体とした呪いを使い、様々な知識を豊富に持っている。

 ので昼でも強いが夜は最強との呼び声が高い。


 名前まで可愛らしいのかこの先生は…スーツでスラッとしてるのにどうして声と名前がこんなにも可愛いのだろうか?


「では自己紹介を1人づつお願いしようかな?」


 席順的に言うと、黒髪美少女、俺、ビリ男だった。

 幸か不幸か…。

 さっき席に戻れとか言ったけどめっちゃ後ろで焦ったよ!?

 俺今超恥ずかしいんですけど!?


浅田あさだ七海ななみと言います。趣味は音楽とかアニメ見るのが好きです!私は魔術師で、能力は身体や他の物質含めて属性魔法を宿して攻撃すること!ランクはBです」


 浅田七海

 身長 162cm

 体重 Secret

 Bランクの魔術師。

 綺麗な腰まで伸びた黒髪、綺麗な容姿をしている。

 能力は説明した通り。


「えーと、一条龍太です…」


 やべぇ…能力なんて言えばいいんだ?能力を消すのは国家機密なんだよなぁ…あんま知られちゃいけないんだけど…どうする…?


 一条龍太は中学生まで学校に登校はしていたが、6歳から中学3年までとある研究所内だったため、この経験は初めてなのである。


「好きなことは音楽とか映画とか筋トレとか、とにかく色々…能力は…」


 やめろビリ男!こいつの能力はなんだろう的な目を向けてくるな!

 さて、なにか言い訳を考えるんだ…しっかり矛盾が生まれない様な…。

 そうだ!


「身体能力の向上…です」


 ふう、何とか誤魔化せたな…仲良くなれば教えても大丈夫だろうけど…さすがに入学初日から噂されるのはちょっと勘弁かな。


「俺は上田うえだあきら能力は電撃を自由に扱える、ランクはB。Hip hopとか服とかが趣味です」


 なんだこいつスマートに自己紹介しやがって…なあ?ハル?


「にゃ〜」


「…可愛ええのう」


 おっと、小声とは言え心の声が漏れてしまった…でも仕方ないよね?可愛いもの。


「では全員の自己紹介が終わった所で今日はこれにて下校です、では皆さんまた来週〜」


 可愛く手をフリフリしてる…癒されるなぁ。

 すぐに教室から出る人もいれば親と話している人や、友達と話してる人、中心になって連絡先交換してる人とかいる。

 あの輪の中に入りたいのは山々だがビリ男がいるしなぁ。

 おっと、またミルクタイムの様だ。


「おや?一条君、子猫ですか?」


「あ、先生…はい最近拾ってきたんです」


「ちゃんと後から申請出しておいてね…ねえ、先生もミルクあげてみてもいい?」


「はい、いいですよ」


 先生が屈んで、耳元で話しかけてくるから、変な声出そうになった…危ない危ない。

 なんだろう、なんでこんな声が可愛いのに母性が溢れているのだろう?

 あの、なんだろう母性出してくるのやめてもらっていいっすか?


「可愛いねぇ…」


「そうですね…」


 うん、可愛い…どっちも。


「あら飲み終わっちゃった」


 ハルは意外と凄い勢いでミルクを飲み干した。

 ほんと、食欲旺盛なことで…。


「それじゃあ先生、この後ちょっと予定あるので…」


「はーい、気をつけて」


 ビリ男がそろそろ我慢の限界と言う表情をしていたので、とりあえずその場を後にした。


「とりあえず、目立つ所はあれだからちょっと離れた場所に行こうか」


「ふんっ、今はその案に賛成だ」


 2人で離れた場所に行こうとすると、何やらひょっこりと着いてきている影が1つ。


「気付いてるかビリ男」


「ビリ男言うな!」


 しかしそう言いつつも気がついている様だ…あー、なんか大体予想出来るんだよなぁ。


「多分浅田とか言う奴だな…」


「まあ、丁度いいや…」


「丁度いいって…何が?」


「見届け人…一応月曜から学校だろ?ルールくらいはあった方がいいだろ?」


「ちっ…」


 こいつやっぱり、変にプライド高いだけで本当は良い奴なのか?

 んー、まあいっか。


「浅田さん、出ておいで」


「!?」


 木の影から見えていた黒髪がビクッと動いた。

 分かりやすッ!


「い、いつから?」


「最初からだよ…なんのつもりだ?」


 ビリ男が威圧的な態度をする。

 おいおい、脅すなよ…見届け人拒否られたらお前担いで帰るの嫌だよ?


「いやぁ、面白そうだなって…」


 頭を擦りながら木の影から浅田さんが出てきた。

 この人大丈夫かな?好奇心だけで生きてるの?


「それじゃあ見届け人をしてくれないかな?」


「見届け人?」


「うん、さすがに学校始まるって時に問題起こすのもあれかと思って」


「初日に決闘も問題だと思うけど…」


「細かいことは放っておいて…もうすぐ着くから」


 そう言って着いたのが現在いる河川敷。

 ここは人通りも少なくて、広くて物も無い。実力行使には丁度いい場所だ。

 昔、琴美ちゃんと虎太郎とここで色々やったっけ?


「んで、ルールってのはどうすんだ?」


 ビリ男がポケットに手を突っ込んだまま、そう話しかけてきた。


「単純だよ、お互いに死なない程度にやればいい…」


「ほほう、てめぇ…いい度胸してんなぁ?」


 なんかこの状況を見て上でワクワクしてる人は少しイライラするけど…仕方ない、俺が連れて来た様なもんだし。


「逆に俺はお前の方が度胸あると思うぜ?相手の実力差を知りながら喧嘩を売ることは…そうそう出来るものじゃねえし」


「ふっ、だから喧嘩吹っかけたんだろうがよ…あんな終わり方は認めねえ…」


 俺とビリ男は会話をしている内にすっかり戦闘モードになっていた。


「では…用意…」


 浅田さんがスタートの合図を担当する。

 そしてその瞬間が、今。


「スタート!」


 始まった。

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