第4話 白鳥学園大学

 とりあえず、一回り学校の下見を済ませた俺は校門から外へ出た。


「不思議な人ばっかだったなぁ…」


 校内は春休み中でとても静かな空間だった。

 静かな空間におっさんと2人きりって…なかなかやべぇ状況だな。

 せめてあの美人な先生と回りたかった、あわよくば保健室のみでお願いしたい。


 校門を出たらすぐ隣には白鳥しらとり学園大学がある。

 超能力者、精霊術師、魔術師が全て在籍しており学園対抗体育祭は断トツの学校。

 それ故に強い能力者が集まるのだとか。

 そんな学校を見ていたら、その校門から1人の見覚えがある美少女が出てきた。


「あれ?龍ちゃん?」


「ん?あ!琴美ちゃん!」


「偶然だねぇまた会うなんて」


「本日2度目の再開ですなぁ」


 なんと幼なじみのスタイル抜群美少女、琴美ちゃんであった。

 化粧やらオシャレやらしてまって…なんとけしからんおっぱいだ。

 しかし、そんな事を考えていると俺の頭に拳が炸裂した。


「殴るよ?」


「痛っ!おい!癖になったらどうしてくれる!?」


「ツッコむとこそこじゃない!」


「これだから君のような勘のいいガキは嫌いだよ」


「私の方が年上なんだけど!?」


「んでそんな戯言は置いといて、琴美ちゃん白鳥学園大学なの?」


「今戯言って言った?私の渾身のツッコミを?」


 閑話休題。


「龍ちゃん花宮なんだぁ、私の後輩だねぇ」


 微妙に誇らしげな顔をしているが、その顔がまた微妙にイライラしたりする。


「琴美ちゃんは春から白鳥?」


「うん、実は私も下見で来たんだ」


 あらま、お揃いで?

 どうでもいいけど母校が進学先のすぐそこにあるってどう言う気持ちなんだろう。


「4月からってみんな言うけど、あと4日なんだよなぁ」


 みんな4月から4月からって言うけどね、まあその方がなんか…うんあれなんだよ。


「確かに、一緒に登校する?」


「可愛いお姉さんの誘いはありがたいけど授業時間違うでしょ?」


「あー、言うて週2くらいしか一限取ってないからなぁ」


 あと、初日に美人なお姉さんと一緒に登校しているのがクラスの男子に見られたらもう速攻でぼっち確定じゃねえか。

 それに、一応世界ランク2位の能力者だし。


「ま、そんな訳で一緒に登校は無理っすねぇ琴美どん」


「何故急に口調が!?」


「とりあえず帰ろっか」


「え!?この流れで!?」


 とりあえず、駅に向かって歩き出した。

 3月の後半とは言え、さすがに少し肌寒いし、風も冷たい。桜も咲いてはいるがほとんど蕾の状態だ。


「うぅ、寒いねぇ…」


 琴美ちゃんは冷たい風に体を震わせ、自身の手で体を抱いて温めていた。


「不死鳥を身体に宿してても寒いんか…」


「まあ、街中での無意味な能力発動は禁止されてるからね…それに木に燃え移ったら嫌だし」


「違いねえや」


 ニャー


 桜でいっぱいの道を歩いていると、琴美ちゃんの目の先にある桜の木の根元から猫の鳴き声がした。


「龍ちゃん、子猫がいるよ!」


 近寄ってみると段ボール箱に1匹の猫が入っていた。その猫は生まれて1週間ほどの赤ちゃんだった。


「可哀想に…誰かに捨てられたのかな」


 琴美ちゃんはその猫の頭を撫でて悲しい目をしていた。

 猫は、メスの三毛猫か…。


「俺が飼います」


「え?龍ちゃん!?」


 猫なら話は早い。俺が飼って育てればいいのだ、うむそれしか無い。


「とりあえずミルクと哺乳瓶、トイレと砂、あとは…」


「え?ちょっと龍ちゃん!決断早くない!?」


「なにか問題でも?」


 そこに猫が捨てられているなら拾わない以外の選択肢は無い。

 それが例え日の中水の中、はたまたあの子のスカートの中まで。


「目に一切の曇りが…無い…!?」


「ん?」


「そんな…純粋な目を…!?」


 こいつは何を言っているのだろうか?猫を目の前にして純粋な目以外にどんな目が出来ようか。


「もしかして龍ちゃん…猫好きなの?」


「ん?全人類そうじゃないの?」


「ダメだこの子手遅れだ…」


 琴美はこの瞬間、何かを察した。


「よーしよし、今日からお前は家の猫だぞ〜」


「飼うのはいいとして、名前とかどうするの?」


「ん〜どうしたものか…」


 桜の木の下で拾ったし…生まれたのも春だし…白いから可愛い名前がいいし…。


「んー、ハル!お前は今日からハルだ!」


「ハルちゃんか、いい名前だね!」


 ハルはそう名付けると嬉しそうに鳴いた。

 俺は猫を抱えてそのまま買い物に…ってあれか。猫抱えたままじゃ店に入れないな。


「琴美ちゃん、ごめん買い物手伝って!」


「しょうがないなぁ、その代わりなんか奢ってよね」


「高校生に集る女子大生って危ない響きだね」


「うるさい!」


 とりあえず俺たちは、ホームセンターや薬局へ向かった。

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