第3話 花宮高校
何とか琴美ちゃんの手料理(仮)を食べきった俺は、口直…デザートにとりあえず近くのカフェで季節限定の桜なんちゃらフラペチーノみたいなのを買った。名前長すぎるだろ…。
が、しかし問題はそこではなく圧倒的な陽の空気感だった。
ふぇえ、陰キャには怖すぎる空間だよぉ〜。
「うま…」
フラペチーノはめっちゃ美味かった。
こりゃ陽キャが頻繁に飲むはずだわ。だって美味いもん。陰キャにとってのエナジードリンクと一緒だべ。
「今日から一人暮らしの高校生か…って言っても元からほぼ一人暮らしみてぇなもんだしな。心配ねえか」
親父は海外、母さんも半年前から海外だから特に変わらねえか。ったく、息子置いてどこに稼ぎに行ってんだか。
1つ変わった点は、明日から飯を2人分用意しなきゃいけねえ事だな…琴美ちゃんが糖尿病になる前にここに来れて良かった。
とりあえず学校までの道を調べてみるか。
彼は渋谷駅に入り、電車に乗って代々木へ向かった。
彼の通う花宮高校は代々木駅から徒歩7分。その学校は様々な多様化が進められており、髪型を初めとする校則が無いため基本的に自由で様々な生徒が集まる。
彼、一条龍太もこの春からそんな個性豊かな生徒の一員となるのだ。
「ここかぁ…でっけぇ…」
約東京ドーム3つ分に値する大きさ、その中には能力の訓練所や購買、学食、体育館、運動場、そして校舎がそびえ立っていた。
「さて、とりあえず中入ってみようかな」
事前に学校側にアポを取ってて正解だったなぁ、どうせ資料やらなんやらを渡さんといかんしなぁ。
彼は学校の中へと足を運んだ。
「学校の中にコンビニあるって、すげぇ…」
昇降口から入ってすぐに見えたのがコンビニだった。
遅刻した生徒にも優しい…遅刻したら朝ごはんここで買お。
彼が次に向かったのは職員室だった。
学校の地図を見ながらゆっくり進んで行くと職員室と書いてある部屋に到着した。
長かった…この学校広すぎだろ…。
とりあえずノックしてみるか。
「あ、この前連絡させて貰った一条龍太です。資料を届けに来ました」
ガラッと勢いよく扉が開いた。
扉を開けたのはスレンダーなカッコイイ系の美人な先生だった。
スーツを着こなし、少し低めのヒールを履いて、髪の毛を1つ結びにした美人な先生…なかなか素晴らしい100点!
「はーい、ちょっと待っててくださいね。今担当をお呼びしますので」
声めっちゃ可愛いな、あの見た目でロリっ子みたいな声だったぞ…ギャップ萌え過ぎて惚れてまうやないかい!
「はい」
少し返事の声が低くなったのは気のせいだよ?たぶん。
「おお、君が電話の一条君かね?」
「はい、一条龍太です。4月からよろしくお願いします」
そこにいたのは白髪の60代後半ほどのおじいさんだった。
とりあえず頭を下げて挨拶をした。
スラリと伸びた背筋、白い手袋、パリッとしたスーツ。
そして何より伝わってくる強い奴が放つオーラ…早速新学期が楽しみになってきた。
「おやおや、これは丁寧に…私はここの教頭をしている
優しい声、落ち着いた態度の奥に隠された重圧感。カリスマ性が滲み出ている。
「なるほど…これは楽しくなりそうだね…」
じいさん、もとい教頭は俺を見て何かを察したのか、少し声音が明るくなった。
教頭は資料を机にしまってもう一度俺の元へ来た。
「少し案内しようか」
「え?あ、はい…ありがとうございます」
どうやら教頭が案内してくれるらしい…何故?
教頭がぼちぼちと案内をしてくれている最中、話かけてきた。
「一条君…相当強いねぇ」
「え?あぁ、ありがとうございます」
「はは、長年生きていると一目で強さが分かってくるんだよ…君は今までに出会って来た中でも、最も強いだろうな…」
なんか急に褒め始めたぞ?何だこのおっさん…。
「これは私独特の感性なんだがね、人を見るとその人のイメージ?と言うか性格?の様なものが具現化して見えるようになる」
「はぁ…」
何言ってんだこのおっさん。やべぇ奴が教頭やってんなぁ…。
「君から見えたのは…龍だね、しかも完成に近い実力を有していながらも、まだ上を目指そうとしている」
教頭はコツコツと靴を鳴らしながら、廊下を淡々と歩いて自分の感性を話し続けていた。
俺いつまで付き合わされんだろ?
「これからが楽しみだよ…特に学園対抗体育祭がね」
「あぁ、あれですか」
学園対抗学園祭。
それはこの東京都23区内全ての学園で対抗し体育競技を1週間にかけて勝負する。簡単に言えば学校で1チームの体育祭だ。
その中には各学校で選手を2人選び、殺す、もしくは再起不能の怪我以外なんでもありの個人戦がある。
たぶん、教頭が言っているのはそっちの方か?
「君がどんな戦いをするのか楽しみだよ」
教頭は少しニコニコしながらそう言った。
なに人の戦いを見て楽しんでやがる、格闘技ファンか!?
「本当は私も手合わせ願いたいが…明日の仕事に支障が出るといけないからね」
「別に支障は出ませんよ…」
「確かに、私と君の実力差では到底敵うまい…さすが0位じゃ」
「…そんな情報どこで手に入れて来るんですか、まったく…」
この情報は裏社会組織の暗部か、国の機密情報なのになぁ。
「ふふ、それは内緒だよ…知り合いのツテとでも言っておこうか」
俺は4月からこの高校に通う、それがより一層楽しみになってきた。
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