最悪な告白から……

「倉田さん、好きです」


 柏木蓮。17歳。


 俺は、何してるんだ。


 木曜日6限のロングホームルームの時間に月一で席替えがあるのだが、その席替えで高校入学してからずっと好きな子が隣になったのだ。そして、挨拶すべくと思っていた。


 なのに___。


 何で、俺は……告白してるんだぁあああああ!?


 お、落ち着け、俺。

 何でこうなった。ホント、何でこうなった!?好きだなぁって思ってたから?好きって言えたらなぁって思ってたから?倉田さんが俺を好きになってくれたらなぁって思ってたから?

 ………………って、どんだけ倉田さんのこと考えてたんだ、俺は…。

 兎に角、俺の声が無駄にデカかった為に公開処刑をしてしまった訳だ。

 告白は大失敗だ。こんなムードの無い告白をする予定じゃなかったんだが。

 クラス全員と担任の前で告白なんて一生笑い者になる…………。

 教室は静まり返っている。

 俺は顔を両手で塞いで沈む。クラス全員の視線が俺に向けられて刺さる。

 ああもう、隣もみんなも見れねぇ…。でも、謝らなきゃ、忘れてくれって。

 意を決して顔を上げて隣を見る。


「倉田さん!ごめっ………ん?」


 俺は言葉を失った。

 何故なら、倉田さんの顔が真っ赤に染まっていたからだ。そんな彼女は真っ赤な顔で口を開いた。


「ば、」

「ば?」

「馬鹿!」


 そう言って倉田さんは教室を出て行ってしまった。

 ば、馬鹿って……え?つか、先生、冷静に「倉田は保健室、と」とか言ってんじゃねぇよ。


「柏木、倉田の付き添い行ってこい」

「え、あ、はい」


 素直に先生の言う通りにして教室を出て倉田さんのあとを追う。確か、左に行ったはず。

 階段を降りて一階に着くと、階段下のスペースに人影が見えた。


「……倉田、さん?」


 俺が名前を呼ぶとビクッと体を震わせて俺の方を向く。まだ顔は赤いままだ。

 俺はもう一度頭を下げる。


「ごめん、倉田さん!あれ、忘れて下さい!あの、えっと、だから……っ!?」


 頭を掴まれて顔を上げさせられた俺の目の前に倉田さんの顔が現れる。途端に俺の顔に熱が集まるのを感じた。


「え、あの、倉田さん?」

「蓮くん」

「は、ははははい!?」


 いきなり名前で呼ぶものだから、声が裏返ってしまった。


「もう一回言って」

「へ?」

「忘れるなんて無理だから、もう一回言って」


 フラれるという結果見えてるのに言わされるの、俺。

 でも、倉田さんが好きなのは本当だから。

 好きって言いたかったのも本当だから。

 倉田さんの手を顔から放してまっすぐに見て言った。


「倉田さんが、好き、です」

「うん、私も好き」

「あ、だよな………ってえぇええ!?今、何て言った?」

「……蓮くんが好きですって言った」


 まさか教室で告白されるとは思わなかったけどね、と倉田さんは呆れた顔をして言う。


 倉田さんが、俺を、好き…………?


 固まっている俺に倉田さんは俺の大好きな笑顔で言った。


「蓮くん、付き合って下さい」


 告白は失敗したけれど、恋は叶ったから成功、かな?


「……よろしくお願いします」

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恋は十人十色 煌烙 @kourakukaki777

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