不思議な双子/未完成

 これは、私の部屋の隣に引っ越してきた不思議な双子のお話。

 長らく空き家だった隣室から人の話し声が聞こえた。ああ、やっと入居者が決まったのかと思った翌日には隣人と顔を合わせることになった。

「はじめまして、203号室の深川シギです」

「妹のナユです」

「ああ、こちらこそはじめまして。202号室の山田です」

 深川と名乗った二人はとてもそっくりな男女の双子だった。

 穏やかで人の良さそうな笑みを浮かべるシギさんと、彼に寄り添って立つナユ。

 二人は長らく遠くに出かけていて、ようやく帰ってこられたが、アパートの住人メンバーがほぼ入れ替わっていたので改めて挨拶をしているのだという。

 つまり空室だと思っていたお隣はずっと入居者がいたのだ。

「ところで、長らく出かけていたおかげで町が様変わりしていまして……もしよろしければ、最近のこの町について僕達に教えて下さい」

 そう言う彼ににっこり微笑まれれば、大抵の女性は「はい」としか答えられないだろう。私はここ数年でこの町に起こった出来事を彼らに話した。

「──なるほど。ありがとうございます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る