交流会…前
初対面/不思議街保安組織CALMとロント村戦闘クラス特殊班の交流…前
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街を歩いていると、上の方から声をかけられた。
「やあやあ、そこのアンタ強そうだなー。オレと遊ばない?」
見上げると低い建物の屋根に腰掛ける少年が一人、シュクを見下ろしながらニヤニヤと笑っている。面識は無い。しかし、見回してもシュク以外に人は見当たらない。
「ぼくに話しかけたの?」
「他に誰かいますか~?」
少年は見回す素振りを見せ、またシュクに視線を戻す。
シュクのどこを見て強そうだと判断したのかは分からないが、強そうだと思った相手に声をかけるということは、自分の腕に自信があるのだろう。
シュクはしばらく無言で相手を見つめ返した後、一言
「遊ばない」
と言って、さっさと通過しようとした。
***
生きてゆくために戦った。
何も、誰も傷付けずに――なんて、無理な話だった。
失いたくないから奪う。まだ、生きていたいから。
路地裏の掃き溜めに、溜まっていたのはゴミばかりではない。いや、あるいはそうなのかもしれない。
紅い右目が、狭い道を塞ぐ男達を睨む。来た道を引き返して逃げることも出来るが、慣れない土地ではまたすぐに迷うことになる。
互いに得意な武器を手に、緊張感が高まる。
「どいてどいてー!」
張り詰めた糸を揺らしたのは、一人の少女。緊張状態の真ん中、シュクと男達のちょうど中間点に着地した。半拍遅れて、後ろでひとつに束ねた長い髪がぱさりと背中に落ちる。
「きみがシュク君?」
「……誰」
「ヤエはシュク君を迎えに来たんだよ」
言うが早いか、ヤエはシュクの手を引いて走り出した。シュクと男達が呆気に取られているうちに、距離は開いて――やがて声すら聞こえなくなった。
「……危ない、のに」
「ん?」
「あんな緊張状態のど真ん中に飛び降りるなんて危ないのに…っ」
「一人で戦おうとしないでさ、お姉さんを頼っちゃいなよ」
「……」
「……?」
シュクの反応が止まった。頭の中で考えを整理しているらしい。
「……お姉さんて、誰が?」
その問い掛けに、ヤエが「私、私」と自身を指し示す。
無表情なりにも驚いた顔をするシュクの手を引いていたヤエは前方を指差した。
「あそこで君の仲間が待ってるよ」
生きるために戦っていた。
何も、誰も傷付けずに――なんて、無理な話だと思っていた。
失いたくないから奪う。まだ、生きていたいから。
だけど、そんな自分にも笑顔をくれる人がいる。待っていてくれる人がいる。
なんだかとても――
「カルムへようこそ!」
――心が温かい。
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:前半、ルルくんとシュク。
後半、迷子になったシュクをヤエさんが迎えに来た話。
多分ね、ルル君を振った後に迷子になって、入り組んだ道入っちゃって、目ぇ付けられたんだと思う。
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