冬の雪原

  真冬




 吐いた息が白く色付き、宙に浮いては消える。

 冬。この国は色を失う。

 道標さえ白に埋もれて、道を見失えば命に関わる。その為人々は彩り鮮やかな着物を身につけている。

 私には、出来ない。

 今は、とても。

 白い着物、白い髪、白い肌。雪に触れる素足は霜焼けで赤い。手も。

 もし本当に鬼の子なら、もし本当に雪女なら、きっとこの雪原を抜けられると。

 じいやが言った。

 ばあやが言った。

 ととさまが言った。

 かかさまが言った。

 あねさまが言った。

 ちびたちは見てた。


 真冬の一番吹雪く晩、冬の鬼達による成人の儀。




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