第九章 待ち合わせ 2

中学を卒業して3年目。

私は、ヤツをまっていた。


一昨年、一時帰国した私はヤツと再会し、変わらぬ愛を確かめた。

遠く離れ離れになったけど、手紙はずっと出し合っていた。


今のように便利なメールが無かった分、愛情は深まり、育ってくれたようだ。

その証拠に2年ぶりのキスの味は格別だったから。


別れを告げたあの日。

泣きじゃくるアイツに私から、唇を重ねた。


鼻水が混じったアイツの涙の味はしょっぱく、流行歌のようなレモン味ではなかったけど。

凄く、凄く・・・嬉しかった。


とても短い時間だったけど、触れ合っていた感触は私には永遠に思えたのだ。

だから、2年ぶりの涙の無いキスはとても・・・。


その余韻を頼りに、私達は2年を過ごすことができたのだ。

そして今、私達は再会する。


父の任期切れを待たず、私は大学入試を節目にして帰国した。

空港に迎えてくれる筈のヤツを待ちながら、待ち合わせ場所の大きな時計を眺めていた。


そろそろ来るはずと、あたりを眺めていると。

見知らぬ大きなシルエットが近づいてくる。


「由美っ・・・!」

叫ぶ声はヤツのものだった。


「ええっ・・・?」

唖然とする私に向かって、太い眉毛のサル顔が近づいてくる。


「由美っ・・・!」

ヤツは叫びながら、私をギュッとした。


走ってきたのだろうか。

汗臭い匂いが鼻をくすぐる。


「き、清志・・・・?」

私は半信半疑で、ためらいがちに抱きしめ返していた。


この大男が清志だなんて、到底信じられなかったから。

だって、この間から2年しかたっていないのに。


「由美と別れてから、急に背が伸びたんだ・・・」

サル顔のヤツが照れくさそうに言う。


「じゃあ、何で、手紙に書かなかったの・・・?」

「驚かせたかったんだよ・・・・」


「俺、ずっと背が低いの、悩んでたし・・・」

清志の言葉が終わらぬうちに、私は唇を重ねていた。


国際空港だと、こんな派手なパフォーマンスも許されるよね?

清志もギュッとしながら、熱い息をくれた。


私の好きな小さな男の子は。

大好きな、大きな男の子になって、待っていてくれた。


3年間の寂しさが。

今、スッと消えていくのが分かった。


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