第5話 計画立案

 彼との話が終わった後、私達はこれからの方針について会議する事となった。

 テーブルを三人で囲んで互いの顔がすぐ見えるようにしてから話し始める。

「今日から一週間の間で舞踏会の準備をするのは決定事項だけど、まずは観光についてトワに説明しないとな。ルノーア、任せても良いか?」

 観光について?誰かを接待したり観光地をアピールする仕事じゃ無いんですか?

「今トワの言った事もある。じゃが観光はそれだけでは無いのじゃ。そこで妾が説明しよう」

 そう前置きしてからルノーアさんが説明してくれた話を私なりに噛み砕いて整理してここにまとめて置こう。

 まず観光業がする主な仕事について。

 そもそも観光とは「日常生活では見ることのできない風景や風俗、習慣などを見て回る旅行」という定義らしい。

 一昔前までは人間と魔族の争いが各地で頻発していたからそんな娯楽は存在していなかった。だから観光業と言うのは平和の証でもあると私は思う。

 観光にも様々な種類があり「観光地をアピールする」意外にも「他の国との観光交流を広める」だとか「観光産業の高度化を推進する」等々多岐に渡る。

 観光課の仕事は、こう言った観光業にまつわる仕事を引き受けて平和な世の中に貢献する事が念頭にあるみたい。

「だとすると今回の仕事は主に外交面になるんですか?他の国の貴族も出席するとロイさんも言っていましたし」

 そうだなとレイさんが私の言葉に首肯しながら腕を組む。ルノーアさんは考え事でもしているのだろうか、むむむと難しそうな顔で唸っていた。

「その舞踏会の大まかな仕事としては、舞踏会の会場を作る事が一つ。これはロイが最低限手を回しているって言ってたし人を総動員してやってるかもな。他にも情報を舞踏会の日時と場所を広めたりするのも仕事だな。こっちは大手ギルドのフォルニアと連携すれば上手く行くだろ」

 会場設営と、情報の拡散。この二つを一週間で仕上げなければならないのだから結構大変な作業になってくると思う。

 私はどちらの方を担当すれば良いのでしょうか?情報拡散は正直分からないから会場設営の方が多分役に立てる。何せこういった仕事は完全に素人なもので…… 。

「誰だって最初は素人だから心配する事は無いぜ。ならトワは明日王城に向かって手伝ってきてもらえるか?俺はそうだな、ヤヨイとかフォルニアの連中と話し合いをして情報拡散の手立てを作る。ルノーアはどうする?トワについて行くか?」

「…… すまぬ、聞いていなかった。もう一度言ってくれぬか?」

 ルノーアさんは上の空になっていたらしくレイさんに聞き直す。

「明日お前はどう動くのかって聞いた。トワは王城で作業、俺はフォルニアのギルドハウスで話し合いと言う名の交渉をしようと思っているが」

 レイさんに聞き直したルノーアさんは、突然赤色の瞳をきらりと輝かせて高らかに自らのアイデアを口にした。

「一つ考えた。舞踏会の日に王都で祭りを催すのはどうじゃ。開けば王都により沢山の者が集まってくるじゃろう」

 舞踏会と言う国で最大級の外交に王都でもお祭りを催すのは大き過ぎるアイデアで想像していなかった。

 常識とか概念とかを打ち破って大胆なアイデアを出す事が出来るのは流石元魔王のルノーアさんだと言える。

 でも王都でのお祭りと舞踏会を同時に開くとなると舞踏会をプロデュースする私達の負担も大きくなりませんか?

「それは大手ギルド『フォルニア』と協力すれば問題はあるまい。その為に明日行こうと思ったのじゃからな」

 自分達だけで出来ないのなら他人を頼るのも、立派な手段の一つ。困難は分割せよってことわざだってあるし。

「よし、決まりだな。それじゃあ舞踏会を成功させる為に頑張るぜ!」

 こうして、レイさんは情報拡散、ルノーアさんは王都でのお祭り、そして私は舞踏会の会場設営。私達は一週間という短い時間の中で準備をし始めた。

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