第4話 スタジャンとストロボ
少なくとも俺は神や仏じゃなく血の通った人間の暖かい手に何度も救われてきたのだから。
そんなことを思いながらしばらく赤色灯を上げ下げしていると脇腹を小突かれた。いや突かれた。殴られた?またミズキ達か?結構痛かったぞと抗議の苦笑を浮かべ振り向くと、休憩前に俺の赤色灯を叩き下ろしたスタジャンの青年が二人の仲間達と立っていた。
またお前かと言っている。どうやらさっきのことをスタジャン青年も覚えていたようだ。
「お前さっきから邪魔なんだよ、誰に許可とってこんなとこで偉そうに仕切ってんだよ!」
一応間接的に神の許可ということになるのだろうか?さっき会ったときより仲間が一緒にいるせいか高圧的だ、思ったことを言ったらきっと怒りそうなのでやめておく。
「黙ってないで何か言えよ!」
肩をド突かれる。
言っていいのなら言いたいことも有るのだが、ここは黙ってやり過ごすのが賢明だ。
「お前なんだよその目は!なめてんだろ!」
目は口ほどにものを言うとはよく言うがどうやら俺の目が口以上にものを言ったらしい。
「こっち来いや!」
襟首を摑まれ暗がりへと引きずり込まれそうになり、必死にその場に踏ん張ったが、ニヤニヤと寄ってきたスタジャンの仲間達が加勢し、あっと言う間に出店の裏側、通りから離れた暗がりに投げ込まれた。
地面に落ちた赤色等が場違いに赤いストロボの様に周囲の暗がりを照らしている。スタジャンが地面の赤色等を踏み砕き俺ににじり寄った。
「二度となめた態度とれねぇ様に教育してやっからな」
スタジャンの仲間達も距離を縮めてくる。さっきまでは沢山の人が回りにいたし、いざとなればその中の誰かが助けてくれるのではという余裕があったがさすがにこの状況は最悪だ、確実に無事では済まなそうな雰囲気だ。今更怖いと感じている、痛いのはイヤだ。
大声を出して助けを呼んだとしてもこの喧騒ではきっと通りの人達の耳には届かないだろう、届かないどころかスタジャン達の機嫌を更に損ねてしまう危険すらある。自力で何とか逃げなくては。後方は池だ、飛び込めばさすがにこの真冬に川の中へ追っては来ないだろう。しかし俺もこの真冬に川の中はできるだけ避けたい。そうなるとスタジャンの青年達の脇を潜り抜けて逃げるしかない。
三人が立ちふさがりとても接触せずには抜けられそうにはない。しかし他に方法がない。覚悟を決めて身を屈めて突進した。
結果、あっけなく捕まりスタジャンに羽交い絞めにされた。
突然暗がりに赤いストロボが点滅した。発光元に目を向けると、通りから放たれる黄色い光を背負った長身のシルエットが立っていた。
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