第16話 妹の危機
俺たちは最初にばあさんに飛ばされた、瓦礫の影に来ている。
勇者の宿営地には人の気配は既になかった。
十キロほど先に移動し最期の決戦を、覚悟しているそうだ。
亀裂から、黒い霧のようなもやが出てくる。
「あれと供に黒い勇者が来ます」
ヒミが暗い顔でガタガタ震えだした。
「姫ーーーお逃げくださーーーーーいーーー!」
黒い勇者の前に、赤い鎧の勇者が出て来た。
最期の生き残りといったところか。
三十人程度のボロボロの勇者が出て来た。
「だーーれが逃がすかーー。おい王族は皆殺しだ。捕まえろー!」
出て来た一際でかい黒い勇者が叫んだ。
一回り小さい黒い勇者が、姫と呼ばれていた勇者を追いかける。
「ヒミ、あの勇者も姫って言われているぞ」
「私の妹です」
「きゃーーーー」
とうとう捕まってしまった。
護衛で残っていた勇者達は動けないように拘束されてしまっている。
「隊長捕まえてきました」
ヒミの妹は髪をつかまれズルズル引きずられ、隊長と呼ばれる大きな黒い勇者の前に引き出された。
「顔を見せろ」
ヒミの妹はそれに逆らい下を向いた。
「きゃーーー」
黒い隊長はヒミの妹の胸を容赦なく蹴り上げた。
妹の体は宙に浮き、バサッと地面におちた。
隊長はその姿を見下ろした。
「最期の最期まで手こずらせる。おいお前達その女を辱めてやれ。無能な部下の前で死にたいと叫ぶまでいたぶってやれ」
その言葉を聞くと五人の黒い鎧の勇者が、意識が朦朧としている、ヒミの妹の鎧を外しだした。
黒い鎧の勇者達は皆ニヤニヤ笑っている。
鎧を外され、黒い水着のような格好になった妹の体を地面に押しつけた。
「しばらく待て、意識が戻らん事には面白くない」
隊長が部下を静止した。
だが、待つ必要もなく直ぐに気が付いた。
「なんだ、これは、何をしている。はなせーー! はなせーーー!!」
「よし続けよ」
ヒミの妹の黒い水着に男達の手が伸びた。
「やめろーー! やめろーーー!!」
ヒミの妹は全力で抵抗するが、全く体を動かせなかった。
「いやだ、やめてーーー!!」
「ぐあああーー」
ヒミの妹の体を押さえている者が吹き飛んだ。
「なあ、お前達、お前達も神殿でよみがえるのか?」
「だれだーー、どこにいる。なにが、なにが、おこったーー!」
「うろたえるなーーー」
黒い鎧の隊長が叫んだ。
「あーーあ。勝てるかどうかもわからないのに行っちゃったよ」
あいの口調は呆れているようだが、顔は満面の笑顔だった。
「ガドは馬鹿じゃのーー。死ななきゃいいけどのーー」
「おばあさんそんな余裕で大丈夫なんですか」
サエが本気で心配している。
「知らん勝手に出て行ったんじゃからのー」
「あのーガドさんは何故わたし達なんか助けるのですか。わたし達は、敵ですよね」
それには誰も答えなかった。
「そういえば、歳を聞いたら結婚ってあれは本当かのう?」
「そんなのは嘘ですよ。あるわけありません」
「ぎゃーーーはっはっはー」
まなが大受けしている。
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