第15話 黒い勇者

「な、ガドは最低じゃろ、敵の勇者まで脱がせてしまう。欲望のままじゃ」


「ほんとうですね」


声のする方を見ると、少し歪んだ遊具の上に小っさい人形のような、セーラー服の女が三人いる。

はーー三人だとー。

ばあさんとあいともう一人はだれだー。

あっ、サエだった。


「なんでサエまで、しかもセーラー服、なんで??」


「わしの魔法に決まっておるじゃろう」


「魔法を節約するんじゃねーのかよ」


「この程度の魔法で、魔力は大して使わん、ほぼゼロじゃ。それに小さいから余計に、節約出来るのじゃ」


「あのー、旦那様その方達は」


俺の嫁が恐る恐る尋ねてくる。


「ガドの嫁、まずは鎧を着けろ。その状態ではガドが透明なのを良いことに、お前の胸ばかり見ておる」


「なんでわかるんだーー!!」


「ほらなーー」


「本当にさいてーです」


あいとサエの声が重なった。

しかも二人とも目から光が消えている。

これはがちな奴だ。

くそー、俺は勇者共のせいで最低扱いになってしまった。


「付けました」


「うむ、しかしおぬしは美しいのー。名はなんと申すのじゃ?」


「はい、私はヒミと申します。そしてこちらが、私のお供のゴウです」


「わしはまなじゃ」

「私はあいです」

「私はサエです」


「わしらはガドの仲間じゃ」


「そなたは勇者なのにスライムの嫁で良いのか」


「はい、ただのスライムなら嫌ですが、旦那様なら大丈夫です。本当は超合金スライムとか、強そうな名前のスライムの方が良かったのですが……」


「透明スライムで悪かったな!」


「ぎゃーーはっはっはー。透明スライムとは弱そうじゃのう」


「うるせーー!!」


「あのー姫、では無くお嬢様。ステータスを見てください」


相変わらず言い間違えて、ゴウが驚いている。


「あーーすごい。まな様は魔女なのですね」


「ほう、そんなことがわかるのか」


「はい、でもそれ以外は全部文字化けして、見ることが出来ません。すごいのか、すごくないのか全然わかりません」


すごいに決まっているだろー。

文字化けしている時点でー。


「ちと尋ねても良いかのー」


「はい」


「何故、おぬし達はこの世界の人間を殺すのじゃ」


「……」


「わたし達にとって、この世界の人間は、スライムとしかおもえません。ですから経験値を稼ぐことしか、頭にありませんでした」


ヒミが申し訳なさそうにうつむいた。


「でも、もうその必要は無くなりました」


「何故じゃ?」


「はい、わたし達の住む国が滅びたのです。暗黒大陸の真という国の勇者に攻められて、王城も神殿も破壊されました。まもなくあの亀裂から、真っ黒な鎧の真の勇者が攻めてきます」


ヒミが、両手を体の前で交差させ震えだした。


「実は私は、隠していましたが、滅ぼされた国の姫なのです」


全然えーーって、ならねーー。

これほどえーーって、ならねーのは、なんでだーー。


……続く

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