第14話 女勇者

二人から二十メートル位離れた所まではバレないように慎重に近づいた。

真新しい赤い鎧を全身に纏った勇者は強そうだ。


ジャッ


大げさにジャンプをして存在をアピールする。


「何か来ています。わしの後ろへ」


体の大きな勇者が一回り小さい勇者をかばい俺の前に出る。

俺の試したいこととは、素手がどの位通じるかということ。

足音を消して呼吸も静かにしてそーーっと近づく。


ドン

胸に鎧の上から強めの一撃を入れてみた。

鎧は大きく陥没し勇者二人がまとめて吹き飛んだ。


「ゲハーー、ゴホゴホ、グウ」

「キャーー」


体の大きな勇者は咳き込んで、呼吸困難におちいっている。

だが、もう一人の勇者は悲鳴を上げた。

でかい鎧を着ていた為か、吹き飛んだ拍子に兜もろとも脱げてしまっている。

な、なんだーー。

エロい、黒い水着みたいな姿になっている。


胸がでけーー。

髪が肩より少し長めで青みがかった黒。

顔がうつ伏せでよく見えないが女じゃねー?。


「姫、お、お嬢様。大丈夫ですか?」


やっぱり女だ、しかも姫っていったぞ。


「だ、大丈夫です」


まあ、実験は成功か。

女勇者が顔をあげた。

んーーどれどれ、顔を拝見。

ガハッ、ちょー絶美人じゃねえかーー。

ちょっと年いってそうだけど。


「なあ、あんた年いくつだ」


「ゴウ、聞きましたか? この見えない方私に年を聞きましたよ。ちゃんと立会人になって下さいね」


「わかりました、姫、では無くお嬢様」


なんか、おかしいぞ。


「二十二歳です」「言わなくていい」


「私の方が少し速かったですね。これで成立です」


やっぱりかーー、なんか変だと思った。


「で、何が成立なんだよ」


「少しお待ち下さい。ゴウ、ステータスの確認を!」


「はっ、お喜び下さい。成立しています。パートナー、透明スライムとなっております」


「やったーー、透明スライムゲットだよーー」


「だから、何なんだよ!!」


「ゴウ説明を」


「はっ。わしの国では男性が女性に年を尋ねるのは、求婚を意味しますのじゃ」


「はーー、嘘だろー」


「そして、立会人と言う第三者の前で歳を答えた場合、婚姻成立となりますのじゃ。断る場合は、歳を教えないとなっておりますのじゃ」


でかちち美人が赤くなってくねくねしている。


「俺は嫌な予感がして、言わなくていいって言ったぞ」


「ちょっと、遅かったようですな。見て下され、このステータスの一番した。パートナー、透明スライムになっております」


俺は、でかい勇者のさす先をのぞき込んだ。


「全然見えんわーー!」


「と、言うことで旦那様、お姿をお見せ下さい」


「ちっ、訳あってそれはできねー。それよりも、旦那が透明スライムって、お前はそれでいいのか」


「もちろんです」


「ぎゃーーーはははー」


後ろから聞き慣れた笑い声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る