第6話 別れ
加奈は倒れてすぐに救急車で搬送された。
今は最寄りの病院で入院している。
「先生、加奈の
病院の先生は脈を測って頷いた。
「今は安定しているので大丈夫ですよ。ただ、どうにも未知の病気なので様子を見ないとこの先はなんとも言えません」
「そうですか・・」
「大丈夫だよ健一。すぐに良くなるよ」
加奈はそう言ってにこりと笑った。
健一はそっと加奈の髪の毛を撫でた
「またお見舞いに来るからね」
「うん、またね」
先生にお辞儀をして病室を後にした。廊下の椅子に腰かけてため息をつく。
考え込んでいると時さんが声をかけてくれた
「健ちゃん、加奈ちゃんの容態はどうだって?」
「時さん。今は安定しているけど先はわからないそうです」
「そう。これを飲んで元気出してよ」
瓶に入った牛乳を一本くれた
「ありがとうございます」
加奈が入院してから二日後。島のみんなはきっと大丈夫と言ってくれるけど心のもやは晴れなかった。加奈のために自分は何ができるのかーそれを考えるために皆が寝静まった夜に(といってもこの島では夜の9時には皆家の中にいるのだが)、田んぼの前の椅子に腰かけていた。ここなら誰にも邪魔されずに考えられるから。
でも、やっぱり答えは見つからない。加奈が病気であること、そして今入院していること。それがどうしても受け止められず考えが浮かばない。
ふと、足音が聞こえてきた。この時間のこの場所に人が?しかも近づいてくる。
驚いて振り向き、固まってしまった。加奈がこっちに向かって歩いてくる。
加奈の服装は病室で着ている寝間着だった
思わず立ち上がる
「加奈、なんでー」
加奈は恥ずかしそうなばつの悪そうな顔をして苦笑いした
「へへ、病院、抜けてきちゃった」
加奈がよろけて慌てて支える
「体調がまだー病院に戻りなよ」
加奈は首を横に振った
「嫌だ、健一と一緒にいたい」
「-分かったよ」
健一は加奈に膝枕をした
そのまま二人で思い出話をして笑いあった。
「ねえ、健一。昔、私と健一が夜、二人で歩いているときにカエルが急に飛び出したこと憶えている?」
「そんなこともあったねー小学生になったばかりの頃だっけ?」
「うん。あの時、怖がっていた私をみた健一がカエルを手ですくって田んぼに戻してさ。大丈夫だよって笑ったんだよね。私はーあの時から健一のことが好き」
「そんなこともあったっけ」
「だからね、健一が島に帰ってきたとき、すごくうれしかったんだよ」
加奈はにこりと笑った。健一は何も言えずに言葉を探した
「-それで、くれないの?」
「何を?」
加奈は赤面し「返事だよ」
「-加奈の優しさやかわいさ、全部が好きだよ」
健一はそっと加奈の口元に口を近づけていった
「おやすみ、健一」
「おやすみ、加奈」
そしてコンサートの当日を迎える。
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