〈間奏曲〉ある教育チャンネルの動画

「知的生命体時代の社会を支えるORCAオルカシステム。このシステムのセキュリティはどうなっているんでしょうか?今日は、北日本情報大学教授の田中・ゴンザレス・壱郎さんに解説をお願いします。」

「はい、こんにちは。ええー、情報システムのセキュリティというのはですね、昔から悪意を持ったハッカー、つまりクラッカーとの戦いでした。ブロックチェーン技術と量子コンピューター技術はこの分野に進展をもたらしましたが、それでも、サイバー犯罪は完全にゼロにはならなかった。」

「人類の限界ですね。」

「はい。そこで登場したのが、並行宇宙暗号です。知性イルカ界のノイマンこと、故ウニャポヴィステスェ伯爵の功績ですね。」

「人類にはまだ理解できないという、並行宇宙暗号理論。やはり教授もわからないのですか?」

「はい、意味不明ですね。一説にはイルカのエコーロケーションの能力が応用されていると言われていますが、基礎理論含めて人類には未到達な領域です。知性イルカ達も、まだうまく人間の言語にして説明出来ないようです。」

「ともかく、この絶対解読不可能と言われる暗号技術が社会の秩序をもたらしているのですね。」

「はい。ルールを全員に平等に守らせる、これがORCAシステムによる社会の基盤です。改ざんや不正アクセスが不可能なシステムは、まさに新たな物理法則に等しいでしょう。知性イルカ達でさえ、並行宇宙暗号を不正な手段で解読することは不可能です。」

「ORCAシステムの構築は知性イルカ達がやっていますが、昔の人間が作ったシステムのような不具合はないのでしょうか?」

「稼働開始から今まで、システムの深層レベルでの不具合や改ざんによる悪用は起きていません。これからもそうでしょう。」

「堅牢なORCAシステムのおかげで、私たちは種族の壁、現実と仮想世界の壁を乗り越え、安心して現代的な社会生活が営めているというわけですね。」

「その通りです。」

「ありがとうございました。さて来週は、知性イルカ界の二コラ・テスラこと、ウィヴィンシンスォ博士をお招きして、『プランク定数の4次元空間上での変調』について、説明を試みてもらいます。」

「まあ、人間は誰もわからないでしょうけどね。」

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