第143話 モモがミノを認識した
「暫くは道なりに進むんだよ。それから橋を一つ渡ったら右に曲がって川沿いに進むんだ」
先導するラビィがテロワールの隠遁場所への行き方を言った。
「どんな場所だった?」
「古いけど高い城壁で囲まれた場所だったよ。古い要塞の跡地を利用しているんじゃないかな。周辺は森に囲まれているから人は殆ど入ってきて無いみたいだったよ」
「どのくらいの距離だ?」
「う~ん、歩いて半日は掛かりそうだね。到着するのは夕方になるんじゃないかな」
「テロワールが素直に言うことを聞かなかったら、モモの暴力に訴えて言うことを聞かせるんだろ?」
「だ、大丈夫かしら、そ、そいつ強いんじゃない?」
弱気な
「テロワールはバーバラよりは弱いらしい。それにバーバラの見立てだと、モモの方がテロワールより強いとのことだ。まぁ、俺が剣聖の能力でテロワールを鑑定してからだな、暴力で訴えるかどうかは……。それに俺はモモの方が強いと信じているぞ」
「……」
俺の言葉を聞いて、黙ったまま火照った頬を両手で抑える
「テロワールってのは泥の人形
「そうだよ。暴力で訴えるだなんて物騒だよな、ミナールの兄貴も親父も。まずはボクがテロワールに話してみるからね」
「それで済むに越したことはないな」
「任せてよ」
ラビィが胸を軽く叩きながら言った。
「っと、まだ時間はあるからモモにミノの話をしておくか……」
俺はパイラがマチェットガンを見つけた遺跡の事や、そこにラビィと一緒に入った事、そこで自分を神だと言い張るミノを見つけた事をモモに説明した。
「で、そのミノって小人の子供みたいなヤツが俺の背中に乗っているんだ」
「そ、その子をラビィは、み、見えてるの?」
「もちろん見えてるぞ。ほら、そこに居る」
ラビィが
「ワシがエコーから離れれば、モモはワシの事を感じる事ができる様なのじゃ。どうにかしてエコーやラビィの様にワシの信者にしたいんじゃが……」
「いや、俺はお前の信者じゃないぞ?」
「ふぇっっ!? エコーはそんな事を言うのか?!」
ポカポカと後頭部を叩いてくるミノ。
しかし不思議だ。他の奴等には見えないし声も聞こえないのに、俺には触れられるし叩かれている感触もある。
「ボクはどっちでも良いよ。信者だろうと信者でなかろうとも、ミノの声は聞こえるし存在も確認できるしね」
「ラビィ~。お主は良いやつじゃ。エコーも見習うんじゃよ!」
俺の後頭部への、ものすごく軽い衝撃が止むことは無かった。
「ミノは信者が少ないから食べ物を僕たちがあげないと消えちゃうんだろ? それはちょっとかわいそうだからね」
「お、お腹を空かせてるの? よ、よかったら、こ、これ食べる?」
「おお、供物とは殊勝な心がけじゃ」
「供物じゃないと思うぞ?」
ミノが身を乗り出し、キビナッツの仁を両手で掴み自分の方に寄せる。すると半透明のキビナッツがミノの胸元に移動し、もう一つの半透明になったキビナッツがモモの指の間に残った。
相変わらず不思議な光景だ。
「モモ、ミノはキビナッツを受け取ったぞ。まぁ、お前にはそれを認識できないだろうがな……」
「そ、そう……」
そう言うと、
「ふぉ、甘くて美味しいのぉ」
背後ではミノの甘美の声が聞こえた。
「そ、それは良かったです」
モモが応えた。
ん?!
「おいモモ! 今の聞こえたのか?」
俺は
「……、……か?」
「え? 何だって?」
自分の羽ばたき音で、
「親父はどうして藁人形を背負ってるのかって言ってるよ」
ラビィが代弁してくれた。
「って姉貴! 見えてるのかい?!」「モモ、ミノが見えてるのか?!」
……何か釈然としないが、モモもミノを認識できるようになった。
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