第138話 シャーロットに遺品を預けた
* * *
「それが
俺はシャーロットの部屋の大きなテーブルの上に、仮面男が持っていた装備品と併せて転送してもらったのだ。ラビィとモモはルーシャを目指して街道を進んでいる。
「シャーロット、何か分かることは有るか?」
「いいえ、何も。変わった形の武器だということは見た通りですけど、それ以外は……。ですが、商売神の教会に持ち込めばどんな
また商売神の教会か……。やつら、神の名に負けず、事あるごとに金儲けのネタを仕込んでいる様だ。
「魔法を発動させるとその剣が見えなくなるらしいが、発動条件などが分からないんだ。頼めるか?」
「もちろんですわ」
「誰が作ったなども分かれば良いんだが……」
「
「ってことは、銀の鋏の連中は
「
シャーロットは俺に向かって首を傾げながら言った。淡い青色の柔らかそうな布地で作られたローブを身にまとっている。
「まぁそうだな。じゃあ、そのショーテル以外は魔法は掛かっていないと思うから、シャルに渡しておいてくれ。何処で作られたとか、ポーチの中身で身元が割れないか試してみたいからな」
「それも分かりましたわ」
「話は変わるが、シャルからバーバラの行方に関する情報は無いんだよな?」
巻き貝の
「無いですわね。ドラゴンの血の入手に関する事ですわよね?」
「ああ」
詳しいことはシャーロットには言っていないが、ドラゴンの血を入手するためにはバーバラと連絡を取る必要があると言ってある。
バーバラはラビィを通じてモモの居場所を教えてくれた。それは、人間に使うことを禁忌としている使い魔の契約魔法を通じて行われた。契約魔法はラビィが同意することが必要で、しかも嫌ならいつでも解約できるが未だ解約されていない。つまり、ラビィは未だにバーバラを信頼している証だ。
その契約魔法を通じて、バーバラはラビィが寝ている間に体を乗っ取ってメモを書き残したのだ。俺がパイラによくやってた憑依だな。だが、こっちからバーバラに聞きたい事を伝える手がない。『クレインは何処に居る?』と書いた紙をラビィが寝る前に見せているが、それに気づいているのか気づいていないのか分からないが、バーバラから反応が無いのだ。
テロワールをミナールの元に連れ戻すミッションを達成してからと言うのか? それはバーバラに取って何の役に立つのだ?
……、あの野郎の考えを想像しても仕方無いな。
「石化の解除方法は手に入れる目処がありますし、解毒薬の材料で入手していないのはドラゴンの血だけ。お姉様が石になって五年目にしてようやく目処が立ってきてきているのは喜ばしいのですけど……」
「まだ時間が掛かりそうだ。シャーロット、パイラが元に戻るまでもう暫く待っててくれ」
「もちろんですわ。エコーが戻ってきてからの進展は、それまでの五年に比べて段違いに早いですもの」
目を伏せるシャーロット。大人に近づいて丸くなったのだろうか、以前の勝ち気な面影があまり見られない。
「俺だけの成果じゃないさ。シャーロットにも助けてもらっている。そろそろ時間だ、ラビィの所に俺を飛ばしてくれるか?」
「……、案外良い人だったのですね」
「いや、自分勝手なのさ。俺は、人間になりたいだけだ」
「そうですわね、では飛ばしますよ。三、二、一、今」
俺の視界が一瞬暗くなった後、目の前になだらかにうねる平地とその上を正面に向かって伸びる道が見えた。周辺には大小さまざまな森が点在している。
「おっ帰り! 親父」
その声と同時に俺の体が拘束された。ラビィが後ろから俺を鷲掴みにしその後抱きついたのだ。
「い、……から、はなぜ」
「分かったよ。少し待って」
ラビィは何度か俺に頬ずりした後、開放してくれた。
「俺が帰ってくる度に、いちいち顔を擦り付けてくるなよ。お前は犬か」
ラビィは船の旅の最中も、食料を調達して戻ってくる度に同じことを繰り返してきたのだ。だから文句を言ってやった。
「いちいちだなんて、それは違うぞ親父。丁寧に愛情を込めてるのさ」
「そ、そうか……」
まぁ、ラビィは何を何度言っても効かないのだろう。
おい、バーバラ。見ているか? お前の
「……見てるなら連絡して来いよ」
「ん? 何を言ってるんだい親父は」
「何でも無い。で? ルーシャ国までどのくらい掛かるんだ?」
「陸路だと、そうだなぁ二ヶ月ぐらいかな?」
「遠いな」
「まだ先は長いからね」
「ああ」
俺が人間になるのは大分先の様だ……。
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