第117話 シャル達のこれまでを聞いた
* * *
シャルとファングが隣に並び、その正面のラビィと俺とで夕飯のテーブルを囲んでいる。俺は椅子に座らずテーブルの上の直接乗っているのだ。
ファングは、赤ん坊を小脇に抱え、スプーンでスープを冷ましながら与えていた。
「――と言うわけだ」
俺はシャルに俺が行方不明になった経緯を説明した。シャルの観点では、宿屋で一人で留守番をしていたオウムの俺が、勝手に飛び出して行方不明になったとしか認識していなかった様だ。実際は、俺がパイラの感覚共有から宿屋に戻ってきた瞬間に、バグ女神から呼び寄せられたのだが……。
ん? 俺がこっちの世界に戻ってきたときは、このオウムの体ははるか遠方の森の中に居たよな。ハーネスも汚れまくっていたし。ということは、俺がバグ女神に呼び寄せられた時に、このオウムの体には本物のオウムの意思が入れられていたのか? そしてそいつが勝手に飛び出して行ったということかも知れない。まぁ、オウムにゃ意思は無いだろうが……。
ま、そこは深く考えなくても良いか。
「で? こっちの状況はどうだったんだ? シャル。ラビィからも話は聞いているが、モモが居なくなた状況や、お前たちの状況を詳しく聞きたい」
「分かったですよ。エコーが消えて数日は、私とモモ、ラビィとファングとで手分けしながらあちこち探し回ったのです。ラビィも何度も何度も巻き貝の
以前、突然パイラによって魔法学園へ呼び寄せられた事がありましたよね? 今回もその可能性も有るとは思ってましたが、魔法学園に直ぐに連絡する手段がアタシ達には有りませんでした。
その可能性もあり、そのうち帰ってくるだろうと半ば探し出すのを諦めたのですけど、モモはかなり意気消沈してましたね。時々エコーが裏切ったと怒りを
そのクエストが何日かかるか分からなかったので、アタシ達がモモの捜索に動き出したのは数日後だったのです。クエスト斡旋所に確認しに行ったのですけど、確かにモモは数匹のゴブリン退治のクエストをソロでちゃんと請けてました。ただ、そのクエストは未達成でした。
そこからは今度は私とラビィ、ファングとでモモ探しです」
「結局見つからなかったんだけどね。ボクらはこの街にモモは居ないんだろうと結論付けたのさ」
ラビィが割って説明してきた。
「そうか、それで?」
先を促す俺。
「アタシ達だって生活がかかってるのです。しばらくはミラナイと鍛冶屋の親方の手伝いをしたのです」
バグ女神に拉致される直前、確かにシャルは鍛冶屋の設備を借りるためにそこの手伝いをしていたな。
「まぁ、シャルの方が腕が勝っているからさ、親方の出番が無くなったってのが正しいな。最後には、行く当てが無いなら共同で鍛冶屋を回してくれないかって親方に懇願されたのさ」
補足するラビィ。
「結局、半年経ってもモモは帰って来なかったのです。モモの旅に付いて行けなくなるので、興味深い工芸品や工具、謎の古代遺跡などを探すことが出来なくなるのです。だから、代替え手段を講じることにしたのです。アタシはモモの突進力の代わりに、ラビィの移動力に目をつけたのです」
……。
「その移動力で、アタシの代わりに各地を飛び回って貰い調査をするのです。もちろんその道楽のためには元手が必要ですから、それをラビィに相談したら行商をしようと言う話になったのです」
「そう、遠隔地の品は高く売れるからね。安く買って高く売るの繰り返しさ。取り引きの基本の一つだね」
「ただし隊商の様に重く多い品は運べませんからね。軽量で高価なものを扱うことにしたのです。貴金属や宝石ですね」
「そう、トレジャーハンター・ラビィの爆誕さ」
……。
「基本的な方針が決まって、その準備をしました。資本も必要でしたからアタシの貯蓄を取りに行ってもらったりですね。もちろんラビィの飛行を楽にする方法やマチェットガンを使いやすくする工夫も継続しました」
「まぁ、この二つは、今も創意工夫している途上だけどね」
「そして今に至るって訳ですよ」
シャルの説明は、ほとんどラビィが説明してくれた通りだ。その裏付けぐらいにしかなっていない。
「なるほど。大体分かったが、足りない」
「何がですか?」
首をかしげるシャル。合わせてファングも首をかしげていた。
「お前らのことだよ!」
「おいエコー、幼児の居る前で大きな声を出すもんじゃないぞ?」
ファングが静かに言った。
「うるさい。その子は誰の子だ?」
ファングに言われた訳では無いが、俺は控えめの声量にした。
「アタシとファングの子です」「俺とお嬢の子だ」
シャルとファングの声が重なる。
「ぐぬぅ、本当に本当か?」
あまりのことに変な声が出た。くそ、ファングのくせに。自分の望み通りに事を運びやがって。
「本当ですよ。この地に根付くと覚悟しましたからね。一族のしきたりに則り、その瞬間一番身近に居たファングを選んだのですよ」
「そうだぞ、エコー。俺の献身が実を結んだんだ」
「いいえ、しきたりです」
「お嬢!?」
今始めてその事実を聞いたかの様に驚いて、それ以上声が出ないファング。
「ははは、ボクはいつもこんな風に、仲がいい二人に当てられているのさ。それにエティは正真正銘二人の子だよ、養子なんかじゃないよ、ボクが証人さ」
右手の親指を自分の向けて立て、ニッコリと笑うラビィ。
「……、そうか。そりゃ、おめでとう。で、エティは幾つなんだ?」
「六ヶ月ですよ」
「俺の知っている赤ん坊の六ヶ月より、成長している気がするが?」
「
「あいー」
エティがラビィに答えるように何か言った。
「なぁ、ファング」
「何だ?」
「守るべき対象が、増えちまったな」
「ああ、その分強くなるだけだ」
左目の上下に刀傷を負ったイケメンの
……、やっぱりなんか腹が立つ。
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