第101話 バーバラの魔女団のことを知った
「ラビィちゃん、周囲で私達を監視している人が居ないか注意を払っておいて頂戴ね」
バーバラが空なったジョッキをテーブルに置きながら言った。
「うん分かった。ところでお袋は各地を旅してるんだろ? 『真の夜明け衆』って聞いたこと有るかい?」
俺とバーバラの情報交換のハズなのだが、ラビィが別の話を突っ込んできた。
「そいつらは何者なの?」
特に気にする様子も無く応じるバーバラ。
「パイラ姉さんを襲った連中らしい。こっちでも探ぐることになってるんだ。なぁ親父、そうだろ?」
「ああ。手がかりがあると良いんだが。目的があると思うんだがそいつが分からん」
「良からぬ目的を持っている集団ねぇ。私が追っている集団の『銀の鋏』なら知ってるけど」
「『銀の鋏』? 何だその集団は」
「魔女狩り集団よ。潰しても潰しても湧いて出てくるのよぉ。まるでゴキブリみたいに」
バーバラは声を低くしてラビィと俺にだけ聞こえるように言った。
「魔女狩り? 数十年前には禁止されてると聞いたぞ?」
「国を巻き込んで禁止さるところまでは持っていったのだけど、まだそれをやってる奴らが残ってるのよ。私はそれを潰しているって訳。この街で能力者を集めてる噂を聞いたから奴らも
「その能力者を集めてるって噂を聞いたから、モモは能力者のオーガー化を止めようと此処に来たと思うぞ」
「モモちゃんもオーガー化をなんとかしたいと思ってるのね」
バーバラは一瞬笑みをこぼして言った。
喜んでいるのか?
「モモはナタレの街を出てから、木を鉄に変えるオーガーを一体屠っている。そしてその後、髪の毛を操るオーガーを一体屠った。そのときオーガー化する様子を見てモモは自分がバーバラからオーガー化を阻止してもらったことを思い出した。そのあとラビィがオーガー化しようとしたのをモモと俺とパイラで止めたんだ」
「……そうなのね」
バーバラは鋭い視線をラビィに向けた。改めて、ミナールの元から勝手に抜け出してきたことを怒っているのだろう。いや、ラビィがオーガーになりかけた事に対してかも知れない。
「話を戻すと、『銀の鋏』と『真の夜明け衆』ってのは関係無いのか?」
「それは分からないわ。目的は違うと思うのだけれどね」
「そうか……。組織の目的と言えば、お前が総統をやってた『泥沼の人形』の目的は何だ? 今はミナールが総統をやっているらしいが」
「あんたなら、もう分かってるんじゃなぁい?」
「もったいぶるなよ。
「そうよ。銀の鋏の連中から能力者を守ることも目的よ。奴らは特に戦闘能力系の魔女や術師を狙ってくるわ」
「パイラもモモも泥沼の人形を抜けたぞ」
「まぁ、それは良いわ。自分の身が守れてオーガー化しない様になったのならね」
「パイラの角も折ったのか?」
「パイラちゃんはオーガー化しないわよ」
「なんでだ?」
「私の長年の経験では、情報系の能力者はオーガー化しないの。強化系や具現系、操作系の能力者が感情的に能力を使うと駄目なのよ」
なるほど、感情的な情報処理ってのはピンと来ないしな。
「ボクも泥沼の人形を抜けたことになるのかな?」
ラビィが盛っている野菜がまだまだ残っている器を見ながら言った。
「好きにしたらいいわよ」
「ほんと!? ボクは親父に付いていくから抜けたって事にするよ」
「明日の体術の稽古の出来次第って事にしようかしら。そうねぇ、それが良いわぁ」
バーバラのその言葉に眉をひそめるラビィ。
「具現化しようとしている角を折ること以外に、オーガー化を止める根本的な方法は無いのか?」
「それがその他の手段がまだ分からないのよ。それに感情的になるって言っても個人差があるから、感情任せに能力を使ってもオーガー化しない子も居るわ」
「そうか」
バグ女神だったら知っているのか? 能力を与えることもできる様だし。……そもそも能力自体がバグ含みなのかも知れないな。あの女神の不具合ぐらいからするとそれも考えられそうだ。やっぱり一発お見舞いしなきゃ気が済みそうにない。
「で、銀の鋏の連中はどんな奴らなんだ? 能力者ってことはないんだろ? 奴らは能力者をどうするんだ?」
「もちろん能力者じゃないわよ。やつらは能力者を破壊神の手先の悪魔だと称して殺すのよ。能力を手放すことはできないから改宗をさせようともしないわ。そもそも、昔の一部のオーガー化した能力者が一般人に被害を加えたのが魔女狩りのきっかけだと思うのよ。その一部の過激な連中が、あるいは過激な活動に関与したい
身内がオーガー化した能力者に殺されたことが魔女狩りの動機だとしたら、双方共に救われない気もする。
髪の毛を操るチシャオーガーに殺されたユージンの身内は、真実を知ったらやはり能力者を殺そうとするのだろうか……。
「救われないな」
「そうね。でも私は銀の鋏を潰すわよ。それが正義だって言う気も無いわ。たまたま守りたいのが能力者側ってだけよ」
「それを聞いて安心した。正義を振りかざすヤツは信用できないしな」
あ、モモは正義感が暴走しているか……。
「あら、私の信用が上がったのかしら?」
「どうだろうな……。ところで、銀の鋏の連中をどうやって見つけるんだ?」
「体の何処かに鋏の入れ墨を入れてるわ。特に数字の入れ墨があると幹部クラスね。あとは、魔女狩りをするときは正体を隠すために顔を覆うマスクを付けてるわね」
「なるほど。魔女狩りをしている最中じゃないと見つけにくいってことか」
「そうなのよねぇ」
「方策はないのか?」
「銀の鋏を潰すために『鎚と鉄床』って
「ああ、頼む。ところでバーバラが此処に来たとき二人連れてただろ? 彼らも鎚のメンバーか?」
バーバラが連れてた黒いマントで身を包んでいた、身長の低い奴と長身の弓を背負っていた奴の二人だ。
「そうよぉ。とっても伸び盛りなの。そしてもちろん去勢済みよ」
オーガー化しないように処置したんだな。
「……そうか」
ちらっと観た感じでは弓使いの方が腕が立つ様だったが、能力を加味した場合は俺にも鑑定が難しい。モモの方が、まだ腕が立ちそうだったな。
「じゃあ、明日の朝、ここに集合ね」
いつの間にか料理を平らげてしまっているバーバラは、そう言うと食堂から出ていった。
「いい加減、早く食べてしまえよ」
俺は未だ野菜と格闘しているラビィに言った。
「むむぅ」
腕組みをして真剣に野菜を見ているラビィだった。
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