第78話 グールが再び現れた
高度を上げていくと視界がどんどんと広がっていく。耳だけは良いラビィが指さした方向に向かって注意を向けた。
あ!
一人の人間が、もう一人の人間に殴り倒された。その近くに荷車が停まっている。他には二人が荷車から離れる様に走り始めていた。
殴り倒された人間に殴り倒した人間が近寄り、そしてすぐに逃げた二人を追い始める。
俺は降下しながら速度を上げ、その現場に近づいた。
倒れた人間が流した血が地面に染み込んでいるのが見えるころになって、ようやく襲ったヤツが
「シェルオープン。ラビィ、
俺は
「分かった。姉貴の応援に行った方が良いな?」
「モモは心配ないが、襲われている人を救助する必要がある。襲われているのは三人だ」
そう言えば、俺たちが野営地から出発する前に、街道をセカルド方面に向かっていた農民が居たな。夫婦と小さい娘だったぞ!?
まずいな。
「分かった! ファングとシャルに伝える!」
「頼んだ。シェルクローズ」
逃げた農民の母娘に
足がもつれ転んだ娘を庇う様に
くそっ!
俺は
農民の親子を殺害した
なんだ? あの奇妙な動きは。攻撃目標が来るまで待機なのか?
モモが最初の被害者の所に着きそうだったので、そっちに急行した。
「モモ! そいつを襲ったのは
「……この人はもう事切れてるわ。
「他にも二人襲われた。さっきやられたばかりだ。まだ生きているかも知れん、急いでくれ! こっちだ」
俺はモモを先導すべく低空を飛ぶ。
「エコー、
飛んでいる俺に並走しているモモが言った。
「一匹だ。街道の陰に潜んでいる。左手に居るから注意しろ」
モモは母娘の元にはすぐに着いた。モモが二人を確認している間、俺はその肩に止まり
「あいつ、襲ってこないな。そっちはどうだ?」
「駄目ね。二人共ご丁寧に
「そうか……」
「絶対に許さない!」
モモが怒りを
「ヤツは何故かまだ動かない。三人分の報復だ、遠慮は要らんぞ」
「違うわよ!! あいつじゃない!」
「どういう事だ?」
「私が許さないのは、
「モモ、お前何か掴んだのか?」
「勘に決まってるでしょ!
確かに……。単なる魔物なら選択的な危害の加え方はしないだろうな……。
「何ぼうっとしてるの? 行くわよ!」
「あ、ああ」
俺はモモの邪魔にならない様に、その肩から飛び立った。モモはカタナの柄に右手を置いて
反して木の陰から動かない
モモは
殺人鬼を討伐するのは一瞬で終わった。
「絶対に見つけるわよ!」
怒りを押さえられないモモが唸った。
暫くすると足の早いシャルとファングが駆けつけて来た。ラビィは少し遅れて到着した。
「ファング、三人を埋葬するための穴を掘って頂戴。
俺たちの荷車と農民一家の荷車の回収や、彼らの埋葬の準備をしながら、俺はシャルに改めて状況を共有した。モモが真犯人を絶対に許さないと言ってた事も忘れずに。
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