第24話 オーガーを発見した

  *  *  *


 冒険者のルーラルとシス、そしてモモ一行はやや開けた森の中の小道を進んでいた。


「オーガーが出るのはこの坂の向こうだ」


 ルーラルは前方を指差して言った。


「シャル、荷車はここに置いていくわよ」

「分かったのです」


 そう言うとシャルはクロスボウを二丁荷台から取り出し、クロスボウの矢の入った矢筒も背負った。


「シャルを連れてくのは危険じゃないか?」


 俺はモモに尋ねた。


「ここに一人置いていくのも危険と思うわ。ねぇ、犬! シャルを庇ってやって」

「当たり前だ。お嬢を守らず誰を守るんだ。それから狼だ」

「なぁシャル、お前は絶対に前に出るなよ。あと攻撃もするな。そのクロスボウはオーガー以外が急に現れた時だけ使うんだ。分かったか?」

「分かったのです」


 こっそり伝えた俺の指示に素直に応じるシャル。


 ルーラルを先頭に、モモ、ファング、シャル、シムが続いた。俺はモモの肩に止まっている。


 周囲を警戒しながらゆっくりと進む一行。ふと木を見ると鉄化した木片が刺さっているのを発見した。


「モモ、あれを見てみろ」


 俺は羽でその木を指す。


「ターゲットに近づいて来たってことかしら?」

「あんな鉄が木に刺さっているのは考えられないからな。例のオーガーの能力だろ?」


 さらに進むと、木に刺さったり地面に転がっている鉄化した木片の数が増えてきた。


「モモ、待て。俺が探ってくる」

「大丈夫なの? エコー」

「もちろんだ、任せろ」


 俺はモモの肩を離れ前方に向かって飛んだ。


「ルーラル、ちょっと待って。索敵するわ」


 モモのその言葉が背後で聞こえた。


「あの鳥を使ってか? そんな事が……」


 モモ達との距離が開くほど、ルーラルの声は聞こえなくなった。


  *  *  *


 木に刺さっている鉄片はオーガーが居ると思われる方を指し示していた。鉄片はある一点から放射状に飛ばされていると推測できたからだ。俺はオーガーの居場所、つまり放射の中心点に向かって、木々を盾にしながらジグザクに近づいた。


 木と木の間に、ちらりと見える巨大な人型のモンスター。


 居た!


 俺はなるべく高い位置にある枝に止まってその様子を伺った。この世界でオーガーと呼ばれるそいつは、身の丈は二メートル半ぐらい、着衣はしておらず毛深かった。筋肉隆々な体がその体毛に隠されているのが伺える。怒りの表情を貼り付けた額からは角が一本生えていた。戦闘力はモモより高い。だが複数人で連携すれば勝てるはずだ。


 そのオーガーはキョロキョロと辺りを見渡したり、頭を両手で抱えるようにしてしゃがみこんだり、いきなり立ち上がって天に向かって雄叫びを上げたかと思えば、身近な低木に走り寄って枝を引きむしって辺りに投げ飛ばしたりしていた。投げ飛ばした枝は鉄に変化させている。


 暫くその様子を見ていたが、それらをランダムに繰り返しているだけだ。なにか意図が有るようには見えない。


 僅かな違和感を覚えたが、あれがこの世界のオーガーというモンスターなんだろう。俺はその位置を伝えるべくモモ達が待つ場所に戻ることにした。


「居た?」


 肩に戻った俺に尋ねてくるモモ。


「居たぞ、この先約百五十メートル。ちょうどモモが向いている方向だ。奴はウロウロしながら周囲に鉄片を撒き散らしている。しかしオーガーってのは変なモンスターだな」

「ええ、そうね……。ありがとう」


 モモは静かにそう言った。


「みんな! ターゲットが居たわよ! この先百五十メートル!」


 モモはオーガーの方を指差して言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る