第四話 『フィナーレ』


「心美、私決めたの。」

「ど、どうしたの、急にそんな覚悟決めた様な顔して?」


 私は、昨日にリヴァさんと話して思ったことをありのまま心美に伝える。

 きっと、心美なら分かってくれるはず。


「まあ、昨日色々あったんだよ。要するに、もうちょっと自分に正直な生き方をしようかなって。」

「へえ、それは良い心掛けじゃない。」


 そして私は、心美に私の本心を告げる、いや、告げようとした。

 だが丁度その時に、私と心美の横を月影さんが通り過ぎたので引っ張り寄せる。


「い、いきなり何ですの?」

「一応、このことは月影さんにも言っておくことが筋かなと思って。」

「このこととは?」


 私は、昨日深夜テンションで決意したことを告げる。


「私今日、慎二先輩に告白する。」

「「は、はぁぁー--!!?」」


 心美と月影さんが見事に声を揃えて叫んだ。

 そして、


「「な、何を考えているんだ、貴様は!!」」


 と盛大に突っ込まれた。



♢♢♢♢♢



「じゃ、じゃあ慎二君、先日話した帆乃よ。清原帆乃。」

「どうしたの、なんかいつもと違うよ後藤さん。」

「い、いや別に何でもないわよ?」


 そう言って、彼女の友人である後藤心美は誤魔化した。

 まあ、そんな反応になるか。

 というか、この状況でよく普通に会話出来るよね。

 彼女には到底真似出来ないだろう。

 現に、あの金髪の月影晴子とかいう人間はパニックになって走って帰っちゃったのだし。


「ほら帆乃、挨拶はコミュニケーションの基本だよ。」

「そ、そうだよね。」


 そう言って、彼女はあの男の前に押し出された。


「は、初めまして、私、清原帆乃って言います!」

「はい、初めまして。今日はよろしくね、清原さん。」


 そう言って、あの男は朗らかに笑う。

 彼女は気付いていない様だが、僕には分かる。

 あれは作り笑いだ。

 別に、作り笑いが悪いと言いたい訳じゃない。

 僕らと同様に人間というの脆弱で、周囲と無理やりにでも上手くやっていく必要がある。

 その為の術、いわばその人なりの処世術のいうものを人間なら誰しもが持っている。

 問題は、あの笑い方はそう言った世間を上手く渡る為のものでは無かったという点だ。


「あ、あの、私は後輩なので、清原で良いですよ?」


 事前に話していた通りの流れで、会話は進んで行く。


「はははっ、確かに俺は君達より一つ上だ。でも、子供の頃に後藤さんにボコられてからは、いつもさん付け呼ぶ様になったんだ。」

「まあ、あの頃の慎二君は......」


 そんな風に、話は順調に弾んで行った。

 とは言っても、大体はあの男と後藤心美が話して、彼女は後藤心美が話を振ることで何とか会話に参加出来ているって感じだけど。

 これじゃあ、今後が思いやられる。

 まあ、後藤心美がうまく彼女をフォローしてくれることを願うしかない。

 彼女も外見は平然と装っているが、内心は冷や汗を流しっぱなしだと思う。

 これじゃあ、今日中に告白なんて難しいかな。

 せっかく家から学校まで、この短い四本脚で頑張って応援に来たのだから、彼女にはもう少し頑張ってもらいたいものだ。



♢♢♢♢♢



 やばいやばいやばいやばいやばい。

 全然上手く話せない。

 今は何とか心美のお陰で会話が順調に進んでいるが、このまま二人で会話なんて無理。

 あれだけ月影さんに啖呵を切っておきながら、大変情けない話だが、マジで無理。

 あと少し、もうちょっとだけ私に勇気が有ればなぁ。

 そんな風に内心言い訳をしつつも、時間は無情に過ぎていく。

 後一時間だと思っていた勉強会の時間は、いつの間にか残り三十分となっており、後三十分だと思っていた残り時間は、あと五分になっていた。

 時の流れは無情なまでに平等だった。

 はぁ、次は頑張ろう、私。

 そう言って、心の中で諦めてしまおうとしたその時、


「あっ、」

「どうしたの、清原さん?」

「帆乃、なんかあった?」


 突然の私の声に、不思議そうな顔をする二人。

 目が、合った。

 いや、過去形じゃない。

 今も目が合っている。


「リ、ヴァ、さん?」


 私は今確実に見ている、リヴァさんを。

 しかも、何故か学校で。


「リヴァって、帆乃の家で飼ってるあの子猫ちゃんのこと?」


 な、何でリヴァさんがここに?

 もしかして、また昨日みたいな状況になったってことかな。

 でも、わざわざどうして学校に?


(そうか、そういうことなのね。リヴァさん。)


 もしかしてリヴァさんは、私の告白が上手くいくかどうかが気になって見に来たのかな?

 ありえる、自我が有る今のリヴァさんなら、十分あり得る。

 私の心情なんてお構いなしに、今みリヴァさんは私へ期待に満ちた表情で見てくる。


「いや、私の見間違いだったっぽい。」

「そ、そう。なら良いけど。」

「リヴァさんって、どんな猫なの?」


 そう言って、話は流れた。

 私は先程と同様に、二人の話に合わせて話す。

 だが、さっきと今では一つ違う点がある。


(私、今日これからどうしたら良いんだろう?)


 それは、考えているか否か。

 私は思考を巡らせる。

 巡らせ続ける。

 はっきり言って、ここから慎二先輩の私に対する認識が上がることは厳しい。

 主に、私のコミュ力から見て。

 だから、もういっそ思い切ってみる事にした。


「先輩、好きです。付き合って下さい。」



~あとがき~


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