第二話 『金髪×くるくるパーマという黄金コンボ!』


「帆乃さん、ちょっと付いて来てくれません?」


 私が慎二君に一目惚れをしてから、既に三日経った。

 たった三日と言うことなかれ。

 持論だけど、学生の三日ってけっこう長くない?

 ほら、人って体感では人生の半分を十九歳までに終えるって言われてるし。


「ちょっと聞いてますの、帆乃さん?」


 そして、明日はあの慎二君との勉強会が有る日だ。

 まだまだ時間は有るけれど、私は既に脳内で明日の勉強会のシュミレーションを完璧に終えている。

 心美曰く、何も不足の事態が起こらなければ、きっと今日で慎二君との距離もグッと縮まる事間違いなしだ、とのこと。


「ね、ねえ、帆乃さん?」


 さて、そろそろ目の前の彼女の対応をするか。

 とは言っても、彼女、月影晴子はこのクラスでは陽キャという部類に居る子だ。

 もう今日の授業は終わったし、きっと大した用事じゃあないと思うけど。


「どうしたの、月影さん?」

「ああ、やっと返事してくれましたわ。」


 そう言うと、彼女は安心した様に胸を撫でおろした。

 クッ、見ない様にはしていたが、どうしても見てしまう。

 その巨乳を!

 これが神に選ばれた人間というやつか。

 心美曰く、彼女のバストは脅威のHカップらしい。

 高校生の時点でそのデカさとは......

 まさに、人外という言葉がふさわしい。

 それに今も尚、日に日にその巨乳は成長し続けているというのだから、末恐ろしい。


「で、どうしたの月影さん、何か用?」


 もうちょっと言い方があっただろうけど、私にはこの「何か用?」が限界だ。

 コミュ障の私に、気の利いた言い回しを求めるなんて、猿にプログラミング言語を覚えさせるのと同じ様なことだ。

 まだ猿がプログラミング言語を覚えさせる方が、まだ成果が出るのではなかろうか?


「実はさっき、帆乃さんがあの慎二先輩と勉強会をするらしい、ということを聞いたのですわ。」


 彼女の特徴は、何もそのバカでかいメロンだけじゃあない。

 この令和の時代でも変わらず貴族の令嬢風の言葉を使っている、その鋼メンタルもだ。

 実際、月影さんの家は私でも知ってる有名企業の社長らしい。

 だが、何故口調が令嬢風になったのかは彼女のみ知るといったところだろう。

 それに、金髪×くるくるパーマという、まさに黄金コンボ。


「で、本当なんですの?」

「な、何が?」

「だから、帆乃さんが慎二先輩と勉強会をするということが、ですわ!」


 当たってる当たってる!

 何がとは言わないが、当たってる。

 いいか、冷静になるんだ、私。

 別に、私に彼女の胸が当たっていたとしても、何一つ問題なんて無いじゃないか。

 逆に、この状況はラッキーだと思うべきなんじゃないのか、私。


「ま、まあ、確かにその情報に間違いは無いよ。」


 その情報に間違いは無いが、彼女がその事を知って何になると言うのか。

 もしやもしや、もしやだけど、彼女もなのか?

 彼女も、慎二先輩の事が......


「じゃあ、ちょっとご一緒させていただいても宜しいかしら?」

「そりゃまた、どうして?」


 しまった!

 理由を聞いてしまった!


「実は、」


 あー-、話出しちゃう。

 彼女が何故、わざわざ勉強会に参加をしたいのかを。

 そんなの、一択じゃないか、私!


「実はわたくし、慎二先輩のことをずっとずっと、お慕いしてるのですわ。」


 確信していた、彼女はきっと慎二先輩に恋をしているんじゃないのか、って。

 もし断ったら、私が性格悪いみたいに思われるじゃん。

 それに今、彼女は慎二先輩のことをずっとお慕いしているとか言った。

 もう一度言うが、私に気の利いた言葉を言うことなんて、到底無理な話だ。

 ここで、うまい具合に断るなんて芸当、私には出来ない。

 はぁ、本当はもっとやり様が出来たはずなんだけどなぁ。


「分かりました、じゃあ放課後にラウンジで集合しましょう。」

「ええ、承知しましたわ。」


 そう言うと彼女は、ご機嫌で自分の席に帰って行った。


「はぁ~。」


 私は深いため息を付きながら、帰宅の準備をした。

 明日の勉強会は、その時の私がどうにかしてくれることでしょう。

 私はそんな風に思考放棄をして、私は家に帰ったのだった。

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