第❶回 冠月の駄弁り部屋
「よぉーこそ! 俺の
真っ暗な空間で、明るく
「おぃ、おーい!
…………暗闇の中では、唯一の光源ともいえる明るい声が話しかける。その弾ける
「そぉそう! そうやってくんないとさぁ、第一印象の重要性ってもんを分かってないんだよなぁ、これが。あぁ、自己紹介がまだだったな。お初にお目にかかぁーる! 俺は
高々と宣言する男は、
「絶世の美青年って追加な!」
……………………。
「つ・い・か。分かるよな?」
抑揚に富んだ言葉のダンスがほんの一言で絶対的な
「なんか含みがあるな。まぁあ、これ以上時間を無駄に出来ないし、突っ込まないけどな。そんじゃあ、本題だ。どうして、どこの誰かも分からない俺が登場したかと言うとだな……………………」
男は、胸の前で両腕を組み前に5歩、
「それはだな…………」
時間が遅くなったかと錯覚するほど、ことさら緩やかに歩みを止める。青碧の瞳がきらりと光りを
薄い唇が開き、音が意味を持った言葉に変わる。一体どんな理由があって彼はここに居るのか? それを私たちに伝えるために。
「もうとんでもなく退屈だったんだよ! こんな何も無いとこに、はや15年。暇で暇で、精神がイカレちまうよ! しかもだ! この物語の最後の方まで出番が無いんだぜ⁉ あんまりだろ!」
もったいぶった癖に、しょうもない理由だった。あの緊張感を返して欲しい。つーかそんな理由かい。急に物語をもっと面白くする秘策があるとか言うから、ちょっと期待したのに。描写に口を出してくるあたりから、不味い気はしてたけども。キッチリ描写したのが馬鹿みたいだよ。
「うっせーな! 元はと言えば、
とんでもない言いがかりだ。物語の構成上仕方のないことで責め立てられても困る。大体、何でこのタイミングなのか? 読者は、前話の剣闘士の女(朱山緋桜と思われる)が何故、闘技場で戦っているのかを疑問に思っている状態だ。本来なら、この話でその謎を明らかにすべき展開なのに、一登場人物がそれを阻むとは……なんだ、こいつ。
「こいつだー? 人生の大先輩に向かってなんつー口のきき方だ! 俺はな、てめえら人類が生まれるずーーーーっと前から存在してんだよ!
「随分な口をききやがって。いいさ! 言っとくが俺の一番の目的は退屈からの解放だが、雨咲が言った面白くする秘策ってもんもある」
ほうほう。それは、如何様な物なのか。早くお答え願いたい。そして、とっとと引っ込んで頂きたい。
「ふっふーん。残念だが、それは叶わない。なぜなら、秘策とは、俺が定期的に駄弁ることだからだぁ!」
「おおっと、そいつは辞めといた方が良いぜ。
寒い親父ギャグを言ったかと思えば、ゲラゲラ笑い、床を転げまわる。精神科医を発狂させる奴と会話を続けなければならない私は、大丈夫なのか。この
「あー! 思い出したらもう、くっ゛、くっ、やっぱムリー! はははははははh! イヒーッヒー! やッべぇ、笑い死ぬッ!」
お金払って損だけしてるようにしか見えないんですけど、何がそんなに楽しいんでしょうか? あ、そうですか、
※そのような病気は現実には存在せず、鎮静剤による治療はありません。
「ばっかやろう! そんなもんで鎮められると思ってんのか⁈ 俺の
彼はここまでの流れでアイスブレイク的な目的を果たせたと思っているのだろう。しかし、まともな人間には精神異常者にしか見えていない。緊張を解すどころか、警戒心を高めていることに気付く日は、きっと来ない。つーかもうホントお願いだから、帰ってください。
「駄弁ると言っても、ただ俺が遊びたいだけじゃーない。れっきとしたこの話のための目的もある」
あのー、聞いてます? 帰ってって言ってんですよ。
「まず問題として、話がシリアスすぎるんだ」
未だかつて、作者にストーリーについてダメ出しした登場人物が居ただろうか?
いや、居ない。
「加えて、難しい。設定が複雑なんだよ。そのくせ、その複雑さを読者に分かりやすく説明も出来ない」
未だかつて、作者に精神的ダメージを与えた登場人物が居ただろうか?
いや、居ない。
「そこでだ、俺が定期的に息抜きを入れ、そこで話のおさらいをするってのはどうだ? ようは、おちゃらけ話であり、補足話ってとこだ。おいおいは、質問コーナーを設けて、俺の好きな食べ物、得意分野、普段の生活について、あけっぴろげに答えるのもいいな。ついでに、
あの…………まだ一度も名前付きで登場してないキャラのこと出されると困るんですけど。
「何言ってんだ! 逆転の発想だろうが! 先にあいつらについて知っていれば、ある種の身内視点から奴らを見れるんだ! これは、ネタバレじゃない!
垣間見? 保護者? 何一つぴんと来ないんですが。
「つまり、奴らに対して
いえ。あの。一回も出てないキャラクターの紹介しても誰それ状態なんで避けたいんですけど。あと、勝手に第三者に話すとプライバシーの侵害とかになりませんか?
「プライバシーがどうのって、人間に適応されるもんだろ? だったら、問題ないって! 心配すんな! いつかは出る予定なんだし、今フライングしても変わんないだろ。キッチリやろうとせず、思いつきのまま楽しむために行動ってのが俺の
いや、まあ、冠月さんの考えを否定するつもりは無いですが、その考えは、他人を巻き込まない範囲でお願いします。私には、とても場当たり的にお話を考えるのは難しいので。着地点が見つからず大気圏を越えてしまいます。それに皆さんの許可も得ずに、ベラベラ話していいんでしょうか?
「いいじゃないか! 奴らがこっちに気づくことは無いんだし。 地球なんざ、おさらばしてやれ! さよなら地面! よろしく無重力! くらいの
それでは読者が置いてけぼりになります。
「だからこその! このコーナーだ! 俺に任せな、上手いことそれっぽく見えるようにまとめてやんよ」
あのですね。不自然な格好してるとこ申し訳ないんですが、私もうまともに描写する気ないのでスルーしますね。
「おい待てーい! 普通そこ無視するかぁ⁉ この万人からイケメンと認められる雑誌モデル顔負けの俺のポージングを⁈ ウインクも決めてるのにぃ?」
あっ。首痛めたわけじゃなかったんですね。首が肩に付くほど曲がって沿った側を手で押さえてるので、寝違えたのかと思いました。
話を戻しますが、冠月さん。きっと貴方は、私がいくら無理だと言っても納得はしませんね。なので、これは妥協策です。一旦、このコーナーを続けることは、認めます。しかしながら、「収拾がつかない」、「やっぱいらんくね?」、「本筋の空気をどうしようもなく破壊している」と私が思った段階で打ち切りにさせてもらいますよ。構いませんね?
「いいだろう。俺に二言はない」
お約束していただけでよかったです。
「だが、一つ条件がある」
何ですか?
「俺もこういった試みは初めてなんだ。だから、最初の頃は期待通りの働きが出来るのか疑問が残る」
何を言いたいのですか?
「つまり確約が欲しい。最低でも第何回までは続けるって」
なるほど。そのお気持ちは理解します。それでは、何回までをご希望ですか?
「100」
すいません。今パトカーのサイレンで聞こえませんでした。何回ですか?
「90」
5回でどうですか?
「50回でどうだ?」
十分の一で5回でどうですか?
「二分の一! 25回!」
√25で5回はどうですか?
「俺がこんなに歩み寄ってるのに…………分かった、ここは作者である君の顔を立てよう。10回で!」
はい、5回ですね。折れていただき、誠に感謝します。
「この鬼が! おまっ! 初めの要求から9割引きもしたのに! 引き分けとか、折り合いとか、
確かに、そうですね。冠月さんを登場させないように構成を組みなおします。禍根は断っておくに越したことはありません。
貴方もそう思いませんか? 冠月さん?
「何だか5回でも十分な気がしてきたー! イケる! 俺は出来る! そうと決まれば、栄えある第一回! お題は―」
やりませんよ。
「…………? さっき5回はいいって、君言ったよな?」
はい。でも、今回はもう終わりです。十分長文ですから。
「いや、でも」
終わりです。駄弁りが過ぎましたね。
次回、朱山緋桜は如何にして死を見世物とする町にたどり着き、剣闘士となったのか? そもそもリアトリスとはどうなったのか? ずっと登場してないダレン君は松葉杖から解放されたのか? 乞うご期待。
「え……それ俺が言いたかったのに」
最後になりますが、このような悪ふざけにお付き合いいただきありがとうございました。「おい! 何が悪ふざけだ! こっちは真面目に―」次話は、本筋に戻ります。皆さんに楽しんで頂けるよう、より一層努力してまいります。「雨咲! 無視か⁉ 無視なのか⁉」今後ともよろしくお願いいたします。
今回が初回だったので、あと4回ですから。くれぐれも、よろしくお願いします。
「君…………。もしかして俺のことキライ?」
………………………………それでは、皆様、良い夏を。
🔴語句メモ goo国語辞書より引用(小学館大辞泉)
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🔴花の
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🔴折り合い:折り合うこと。譲り合って解決すること。
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