第11話 曲水の宴
まどろみから目覚めるように、意識が眠りと覚醒の間を
「どういうおつもりですか! 殺す必要がないとは、偽りだったのですか!」
真後ろで響く声に鼓膜が痛む。はてさて、何故にそこまで声を荒げるのかと思考を巡らす。状況を呑みこむには、数時間前のことを思い出す必要がある。
何だったか、そうだ。魔生の内側に原因となる記憶の紙が無かったから、ミーナの側にも入って…………いや、その前か。えーと、魔生側から戻った後、ミーナの記憶がどんどん消えるかもしれないと思って、急いで胸を刺して………………ああ、それか。
「何故! 先に私に言ってくれなかったのですか! 貴方にこのような
少女は振り向き、掴まれていない腕を、自身は潔白だと言うように大きく振る。
「ちょっと、一旦落ち着こう。そちらが思ってるような事態じゃないから!」
「小隊長! お待ちください! 死んでいません! 濁縁も消滅しています!」
二人の会話に、横から差し止める言葉がかかる。リアトリスは、相対する少女の向こう。横たわる小さな影の真横にしゃがむ副官に目を止める。そこには、仰向けに寝転んだまま状況が呑み込めず目をパチクリさせるミーナが映る。
「待ってください! 女児は存命です! 怪我もありません!」
再び無事を知らせる言葉に、波たった心が落ち着きを取り戻していく。
「何でもいいけど、もう掴む必要ないよね? 離してくれませんか?」
「………………」
少女の呼びかけに、何故かリアトリスはだんまりを決め込む。声が届いてないわけではないようだ。真夏の海を閉じ込めたスペクトラムブルーの瞳が頭一つ以上、上からじっと見ている。
「あの~。聞こえてらっしゃいますか?」
「………………幾つか、お尋ねしなければならないことがあります」
「はあ、そうですか。その前に、この手離して頂けませんか?」
少女は、掴まれた右腕を上げる。なおも、青年は掴み続けている。
「ええ。離しますよ。その前に、些か準備が必要ですので、今しばらくお待ちください」
「準備なんて要らんでしょうが。離すだけ…………? ちょっと!」
「おい! いい加減にしろ」
少女は、青年の歩みを止めるように右手を自身に引き寄せ重心を青年と反対方向に掛ける。
「ちゃんと説明したらどうなのよ」
「先ほど、貴方はしませんでしたが?」
「餓鬼か⁉ 何だ、拗ねて仕返しか?」
「…………お好きにお取りください」
そう言うと、リアトリスは左手を自身の胸の中心に当てる。小さく息を吸い込む。
「
🔴語句メモ goo国語辞書より引用(小学館大辞泉)
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