第6話

「改めて、自己紹介させて!私はこのよろず部の副部長の木辺歩美!お寿司は鮪よりもサーモン派だよ!よろしくねN君!」

短髪のギャルっぽい少女も木辺に続く。

「好きなカレーは意外と辛口!あたしは相良京子(さがらきょうこ)。Nクン、よろしく!」

相良は明るそうな性格だった。最後に見た目が怖い少年も続く。

「俺は本田龍太(ほんだりゅうた)。好きなラーメンは醤油より豚骨派だな。よろしく、N」

本田は怖そうな見た目をしているが、悪い奴ではなさそうだ。それにしても、なんだか独特な自己紹介だな。俺もそれに乗ることにした。

「改めて、俺はNS。好きなチョコレートはブラックだ。みんなよろしく」

「こちらこそよろしく!それじゃあ、早速だけど、依頼をこなしに行こっか!」

木辺から告げられた今日の仕事は家事全般と子供の世話だった。彼女曰く、仕事先の家はクラスメイトの少年の実家らしい。父親はしばらく前に蒸発し、母親と少年、それに弟3人妹2人の大所帯で生活しているようだ。普段は母親が出稼ぎに行き、少年が勉強をしながら兄弟たちの世話をしているとのこと。だが、少年も働かなければまともに暮らせない環境になったので、今回よろず部に依頼が来たってわけだ。

「Nクン、子供みたいにちっちゃいから、ちびっ子の相手は慣れてそうだね」

道中で相良は冗談混じりに言う。

「もう、京子ちゃんったら。N君に失礼だよ」

「えー、だって小学生みたいでかわいいんだもん!」

「木辺、俺は構わないぞ。こんな見た目だからこういう扱いにも慣れてるからな」

俺は自分の正体がバレると面倒なので、身の上話は避けることにした。

「さて、とーちゃーく!今日も頑張ろうね!」

俺たちは仕事先にたどり着いた。

「わー、おねえちゃんたち、おにいちゃんがいってたひとたちー?」

早速小さな少年少女たちのお迎えが来た。

「みんな、仲良くねー!さあ、今日はお姉ちゃんたちと遊ぼうねー!」

「わー!」

子供たちが散り散りになり、皆思うように遊ぶ。まずは大人しそうな少女が木辺と相良にすり寄る。

「ね、おねーちゃん、おままごとしよー!」

「うんうん、いいよいいよ!私はなんの役をすればいいかな?」

次に活発そうな少年が本田に駆け寄る。

「なー、にいちゃん、キャッチボールしようぜ!」

「ああ、いいぞ。だけど、俺、球技は苦手だからあんまり期待するなよ」

最後に残りの少年少女が俺の元にやって来る。

「おー、ちっちゃいな、おまえ!」

「お前とは失礼だな。こう見えても俺はお前たちより年上だぞ」

「そんなことよりゲームしようよ、ゲーム!」

「ゲームか。いいぞ、みんなでやろうか」

俺は3人の子供たちと年代物の格闘ゲームをすることにした。

「つえー!ちょっとは手加減してくれよー!」

「俺は相手が誰でも手加減しないんだぞ」

ところが、、、

「そこだっ!」

「!?」

負け続けていた1人の少年、洋介(ようすけ)の才能が開花したようだ。俺の操作するキャラクターにクリーンヒットが入る。

「やるな、洋介。俺も本気で行くぞ」

久々にゲームで接戦を繰り広げた。1時間後には、その少年は俺をも上回るテクニックを身に付けていた。

「す、凄いな、お前。eスポーツの大会でも通用するだろうな」

「?いースポーツってなに?」

「それはな、規模が大きいゲームの大会なんだ。優勝すればとんでもない大金が貰えるんだよ」

その言葉に洋介は目をキラキラさせた。

「それ、ほんと?俺もその大会でかてるかな!?」

「ああ、俺に勝ったんだ。その手の道を進むのも良いかもしれないぞ」

「よし、じゃあ、もっとつよくなって、かぞくみんなにおいしいご飯をたべさせるぞー!」

俺は新たな才能の発掘に助力できたことを嬉しく思うのだった。


3時間後、、、


「ありがとうございます!今日はとっても助かりましたよ!」

依頼主の少年も帰宅し、礼を告げてくる。

「いえいえ〜、これもよろず部の活動だからね。また困ったら言ってね!」と木辺。少年は何度も頭を下げ、最大限の礼を伝えてきた。何というか、まあ、悪くない気分だった。

「良いことすると良い気分でしょ、N君?」

帰り道、俺の気持ちを読むようにして木辺が話題を振ってくる。

「まあ、な、、、」

「これでよろず部の良さが分かったっしょ?Nクンもちゃんと考えておいてね〜」

相良も畳み掛けてくる。

「良い方向で考えてくれるだろ」

本田まで、、、

まあ、掴み損ねた青春を取り戻すには丁度いい場かもしれない。

「、、、善処するよ、、、」

俺はよろず部への入部を前向きに検討することにした。

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