第67話似た者同士

 

 はぁ~~……。

 また祖父が悪だくみを考えているようです。



「では、そのように準備をしておきます」


「頼んだぞ!」


「とっても楽しそうですね、おじい様」


 あら、つい嫌味を言ってしまいましたわ。


「こんなに楽しい事はないぞ!」


 否定しないんですね。

 そこは嘘でも「そんなことはない」と言う処では?

 目をキラキラさせながら言うセリフではありません。


「不謹慎ですよ。国の存亡がかかっているというのに。お父様もおじい様に諫める事を言ったとか……」


「儂の息子は心優しいからのぉ。それに比べて……ヘスティアは祖父である儂に似たのじゃな」


「どこがです!」


 失礼な!

 どこも似ていません!


「国の事を真っ先に考えるとこは儂そっくりじゃ」


 そんなこと位で!


「当たり前の事です」


「ふぉふぉふぉ。息子は王都で死んで逝っておる無辜の民を憐れんでおったわい。もの。罪のない民達が食料を求めて争うのは忍びない、食料を援助して欲しいと言ってきおった」


 なんてことを!

 そんな事をすれば物資を運ぶ者達の安全はどうなるのです?

 いえ、その前に我が領に暴徒達がなだれ込んできます。


「おじい様、どう返事をなさったのです?」


「勿論、断った。どうしてもやりたければお前が一人で物資を運べとも言っておいたぞ。物資を運ぶ途中で暴徒共に強奪される可能性も含めてのぅ」


「それを聞いて安心しました」


「ふぉふぉふぉ。中途半端に助けを出せば逆に足元を見られかねん。我が息子は優秀だが乱世や激動の時代には不向きな性格をしておる」


 祖父のいう通りなので反論する事ができません。

 私も祖父も父を愛しています。

 穏やかで優しいお父様。

 けれど、残念ながら父の性格では今の国難を乗り切るのは難しいのも真実なのです。


 だからこそ、私や祖父がスタンリー公爵家を守る必要がある。それに、今回の件は我が家にとってまたとない機会でもあるのです。スタンリー公爵家をより大きくさせるチャンス……きっとそう思っている段階で私と祖父は似た者同士なのかもしれません。



 


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