第35話婚約者side


「納得いかない!」


「ヴぃラン!お前はまた!スタンリー公爵家の方々がどれだけの温情を我々に与えてくださったことか。まだ分からないのか!」


「そんなの分からないよ!ちょっとした遊びだったんだ!本気じゃなかったんだ……僕は……僕は寂しくて……つい……」


「馬鹿者!! そんなもの言い訳になるか!!!」




 その後、僕は館の一室に監禁された。

 引っ越したばかりの館は伯爵邸に比べても小さ過ぎる。僕の部屋だという場所は物置のような所だった。両親は前以上に忙しく働いている。兄達も同様だった。弟は僕の顔を見たくないと言って友人宅を転々としているらしい。使用人も最悪だ。シェフ一人と住み込みのメイドが一人いるだけだ。後は、通いのメイドが三人いるだけ。



『あれほど言っただろう!お前は俺の何を聞いていたんだ?真面目に大人しくしていれば将来は安泰だったんだぞ?』


『お前のしでかした事が王太子殿下にも伝わって側近から外された! 僕だけじゃない、ウォーリもだ! ウォーリは元々騎士団長の大のお気に入りだからまだ何とかなっているが、僕は侯爵家から令嬢との婚約を解消された! お前のせいで僕の人生は滅茶苦茶だ!』


『あのさぁ、ヴィラン兄上。僕達ヤルコポル伯爵家は貴族社会じゃあ終わったようなもんだよ? そこんとこ理解してる? 今は父上達が王宮に出仕しているから何とかなってるけど、もう領地の収入は無いんだ。僕もヴィラン兄上も何処かに就職しないと暮らしていけないんだ。住む家が小さ過ぎるとか使用人の数が少なすぎるとか言ってる場合じゃないんだよ。この家に金が無いのはヴィラン兄上だって分かるでしょ? 余裕なんてないんだよ? そこんとこ理解して言ってよね』


『終わってしまった事を蒸し返してもどうしようもないわ。過去は戻らないのだから。でもね、ヴィラン。お父様が今大変な立場に置かれている事だけは理解しておいて欲しいの。それは貴男だけのせいでもない。貴男を更生させられなかった私達家族全体の責任でもあるわ。それでもこれ以上の不始末を犯させる訳にはいかないのよ。分かるわね?』




 母上や兄弟たちの言葉が蘇る。


 


 何でだよ?

 公爵家は僕を可愛がってくれたじゃないか。

 一度の事で何であんなに騒ぎ立てるんだ?

 じゃないか。僕だって本気で付き合っていた訳じゃない。相手だって分かってたはずだろ? 


 公爵家に住まわせて子供を跡取りにする?


 そんなものベッドの中の冗談だろ?

 誰でも言ってる事だ!

 リップサービスを真に受ける方がどうかしてる!


 



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