第33話婚約者side 

 

 学園に入学した。


 初めての学生生活。

 あんなに楽しみにしていたのに……。

 何故か皆から距離を置かれている気がする。


 公爵家のパーティーや茶会で仲良くなった友人がクラスには誰もいない。

 見知らぬ者達ばかり。

 それが余計によそよそしく感じるのかもしれない。


 会話も当たり障りのないものばかり。

 今までとあまりにも違い過ぎて違和感が拭えない。

 勉強や趣味の話が大半だ。


 友達っていうのは……なんだろ?

 もっとの事を自慢し合うもんじゃないのか?

 旅行は何処に行ったとか、これだけのプレゼントを貰ったとか……。


 毎日が伯爵家と学園の往復。


 それだけの日々。


 以前は頻繁に誘われていた茶会もなくなった。

 皆とクラスが違うからか?

 公爵邸に帰る事も出来ない。


 学園から伯爵家に戻ると家庭教師が待ち構えている。

 勉強三昧の日々。

 何時までこんなつまらない日々が続くんだろう。


 

 両親に訴えても、


『学園では大人しく真面目に過ごすように。それがお前の為なんだ』


 としか言わない。



 パーティーに誘われる事もなくなった。

 何でだ?

 あんなに沢山の招待状が届いていたのに。


「そんなの当たり前だよ」


 僕の疑問に答えてくれたのは弟のフェリィーだった。


「どういう事だ?」


「ヴィラン兄上は鈍いね。今までヴィラン兄上に招待状が届いていたのは兄上がスタンリー公爵令嬢の婚約者だからだよ」


「僕は今でもヘスティアの婚約者だ!」


「そうだね。まだ婚約者だったね。ごめんごめん」


 舌を出しながら謝るフェリィーは全く悪いと思っていない。

 こんなに小憎らしいのに末っ子というだけで皆が甘やかす。


 僕だって公爵家では特別に可愛がってくれていたんだ。


「兄上が今まで優遇されていたのは、兄上が図々しく公爵家に入り浸っていた事も原因なんだよね。しかも色々と“お友達”に自慢しまくってたんでしょう? 聞いた“お友達”は当然兄上が公爵家のお気に入りだと判断した。実際、勝手に家族旅行について行ってただけってオチがついてるけどね。まあ、兄上のメッキがはがれちゃった状態なんだよ、今。だから皆が言ってるんだよ」


「……何を」


「公爵家が“ヴィラン・ヤルコポルに愛想をつかした”って」


「何だよ!それは!」


「怒らないでよ。僕が言ってんじゃないよ。兄上の“お友達”が言ってんの!お陰で僕の婚約も難航してんだよ。ホントにいい迷惑だよね! あははは! だ・か・ら、兄上のな~~んにもしないでね。それが兄上の為でもあり僕達ヤルコポル伯爵家の為なんだよ!何もしなければ兄上はそのまま公爵家の婿殿になれるんだから」



 ……何だよそれ。


 それじゃあ……まるで僕が公爵得家のオマケみたいじゃないか。




 


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