第31話反省


 前回を思い出してもヴィランの行動を咎める者はいませんでした。

 スタンリー公爵家然り、ヤルコポル伯爵家然り。


 私達両家の誰もヴィランの行為について何も言いませんでした。公爵家の使用人たちに対する不遜な態度も婚約解消する二年ほど前からの事でした……。今から思えば、思春期独特の物だったのかもしれません。それとも遅めの反抗期でしょうか? どちらにせよ、ヴィランが自分自身の勉強不足と立場の自覚がなかったせいで起こった事です。


 ですが、もしかすると彼だけの問題ではなかったのかも。


 ヴィランを放置し続けた御両親。

 周囲から『育児放棄』と捉えられても反論できない程にスタンリー公爵家に依存しきっていました。

 まぁ、我が家も「飼いならされた夫」という段階に既にシフトしていましたから……ヤルコポル伯爵夫妻をどうこう言えないのですが。外堀を埋め尽くされたヴィランがストレスを感じてもおかしくない状況だったのかもしれません。

 

 幼い時は何時も一緒にいたヴィランですが十代に入りますと「何時までも一緒」という訳にはいきません。

 私には女友達が、ヴィランにも男友達が出来ます。


 茶会、パーティー。


 特にヴィランは学園に入学していましたから交流が増えるのは当然です。

 学園は貴族の子息の殆どが入学する男子校。

 貴族が通う学園は男子校と女子校に分かれています。平民の学校は共学が殆どなのですが、貴族階級に限っては「ちょっとした過ちが命取り」と言わんばかりに男女別になっています。もっとも、学園は必ずしも通わなければならないというものではありません。各家の判断で通います。家が「不必要」と判断すれば通う必要はないのです。


 そういう私も学校には通わず屋敷で大勢の家庭教師から学びました。


 これは何も私に限った事ではありません。

 高位貴族なら物心つく前から学習が始まるのです。

 私も早い段階からとして学んでいましたら学園で学ぶ必要性を感じませんでした。入学する年には既に学園で学ぶであろう内容は全て修得し終わっていましたから。学園に通えばその分、公爵家の仕事を学ぶ時間が減ってしまうという判断でした。


 私も学園に通いたいと思った事はありませんでした。


 それというのも、ヴィランが学園の事を一切話さなかったからかもしれません。学園に通わない私を気遣っての行動と思っていましたが、それだけでは無かったのかもしれません。本当は学園ではのかも……。今になっては確認も出来ない事です。もう少しヴィランに目を掛けるべきだったのかもしれません。忙しさにかまけてヴィランとの会話も少なくなっていたのも事実です。


 今回は実の両親から嫌でも目を向けられますから以前のような事にはならないと願うしかありません。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る