第9話

デヴォンが駆けて来る。息を整えながら何を言おうか思案している彼に、ザックが苦笑して

「心配をかけたな。すまない」

と、一言。

デヴォンは頭を大きく横に振り、下唇を噛み締めて頭を下げた。

「あんたのせいじゃあないさ。本当だぜ。犯人はコイツだった」

ザックがリュウガの胸板を叩く。リュウガはそっぽを向いた。

「ぱとろーるをしておっただけじゃ」

「……俺らが驚いた龍だったのは事実だろう?」

デヴォンが口をパクパクと動かす。そしてリュウガのしっぽを見て顔を輝かせた。

「龍族!?本当にいたんだ!?初めて見たよ!」

「あんたそんな大きい声出せたんだねー」

ヴァレリアの声にザックが驚いた。

「おっと、かわいらしいお嬢さんだ。デヴォンを励ましてくれたのか?」

「そんな感じー。あんたがザック?」

「あぁ。俺はザックだ。あんたは?」

「ヴァレリア。そっちの龍のオッサンの弟子?みたいな」

「ふぅん」

リュウガがヴァレリアの肩に手を乗せて豪快に笑う。

「ガッハッハッ!ヴァレリア、我はザックに着いて行ってシャフマに行くことに決めたぞ!おぬしも来い!拒否は認めんわい!」

「えぇー……まぁここにいるのも飽きたからいいけどー……」

ヴァレリアが面倒くさそうにリュウガの手を払い除けた。

「と、いうことじゃ!早速西に向かって歩こうかのう!」

「なんであんたが仕切っているんだよ。だが、まぁ……俺は急いでシャフマに行かなくてはならないのでね。着いてくるなら……すぐに出ようか」



〜時は遡り、大統領の自宅に雷が落ちた日〜


「……これは、何があったの!?」

金髪碧眼の女性、テリーナは廃墟となった家の前で立ち尽くしていた。

雷が落ち、近くにいたストワード人たちが避難をし……誰もいなくなった場所で。

「お、お父様!?お母様!?まさか、まだ中に……!」

テリーナは走って家の中に入る。ほとんどの扉が壊れたり部屋ごと焦げて入れなくなっていた。

「西側の部屋は全て黒焦げなのだわ……。一体誰がこんなことを……。あらっ?」

一室、扉が半分だけ残っている部屋があった。

「お母様の部屋なのだわ!お母様!」

金髪を振り乱して中に入る。

しかし、中には誰もいなかった。

「お父様もお母様もいないときに雷が落ちたのかしら」

ホッと息をつく。

彼女が部屋を出ようと思ったそのとき、一つのものが目に入った。

「これは、何なのだわ?」

綺麗に磨かれた金色のランプが、真っ黒に焦げた部屋の中で輝いていた。

テリーナはそれにすっかり目を奪われる。

「すごく、綺麗なのだわ……お母様の……宝物かしら……?」

それに手を伸ばし、触れた。


―触れたな?


「えっ!?」


―俺に、触れたな?

―『オーダムの魔女』か……

―忌まわしいが、今は貴様を利用するしかあるまい。

―さぁ、俺の呪いを受け取れ。

―貴様ら人間が創った『砂時計』を……。


背中に、鈍い衝撃が走る。

テリーナは気絶し、前のめりに倒れた。

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