第7話

ザックの傷は浅くはなかった。

白魔法をかけてもらわねばいけない。自分でも分かる。

それにデヴォンが自分を心配している。早く合流しなければ。

「……リュウガサン、拾ってくれてありがとう。俺はそろそろ行かないとだ」

「登るのか?」

「あぁ」

洞窟は崖の下にあった。山を登らねばいけない。

(傷が開いて痛むかもしれないが、そんなことを言っている場合ではないな)

「待て。この森には砂の化け物が出る。今のおぬしじゃあ太刀打ちできぬぞ」

砂の化け物。聞いたことがない。

「洞窟の中にはわしの結界を貼っておるから入っては来れぬが、外にはたくさんおるぞ」

「だ、大丈夫だ……デヴォンと合流しないと……」

そんなのに襲われたら、あの金髪の少年が無事でいられるわけがない。さらに心配になってしまった。

「他の人間とはぐれたようじゃのう。しかし、心配はいらんわい」

「デヴォンは怪物なんかに勝てない。俺が魔法で護らないといけないんだ……!」

「おぬしもボロボロじゃろう。その人間がたたかえなくとも大丈夫じゃと言っておる」

「え?」

リュウガが口角を上げる。

「この森にはわしの教え子がおるからのう」





絶望。デヴォンは深い悲しみの中にいた。

(ぼ、僕が手を掴めなかったから、ザックが死んでしまった……)

(魔法使いになると言って着いてきたのに、とっさに浮遊魔法を使えなかった……)

(僕がザックを殺したんだ……!)

膝をついて放心する。デヴォンには立ち上がる気力がなかった。

ーガァァッ!!!

怪物がデヴォンを見つけた。後ろに立って、大口を開けて雄叫びを上げる。

「……ここで死ぬのか。それが償いになる、のかな……」

諦めてため息をつく。魔法を使って応戦という選択肢はない。自分は罪人なのだから、ここで怪物に食われて死ぬのがお似合いだ。


「人を襲う怪物は許さないから」


―グサッ……!


「えっ?」

デヴォンの目の前で、矢が怪物の眉間を貫いた。


「ふうっ。百発百中。とまではいかないけど。今回は上手くいったかな」


橙色の髪を束ねた少女が近づいてくる。

「うん、怪我なしって感じ?」

「助けてくれたの……?」

「まぁね。ウチはここの警備任されてるから」

少女の手には弓矢が握られている。

「ウチはヴァレリア。スナイパー見習いだよ。自己紹介、これでいい?」

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