第5話
「『砂時計の王子』って知ってる?」
「なんだそれ?」
「シャフマが王国だったときの伝承だよ。知らないの?」
「知らないね。俺は田舎の酒場の息子だぜ」
「王子から一番かけ離れた存在じゃん……」
「っはは!間違いないねェ!」
ザックとデヴォンは野宿用のテントの中で身を寄せ合いながらパンを食べている。さっき寄った街でデヴォンが買ってきたものだ。
「『砂時計の王子』は、すごい魔法使いだったって噂なんだ」
「へぇ。何百年前の人なんだ?」
「20年前に死んでるよ。シャフマは彼が砂になって消えたことで滅亡しているからね」
「砂になる?その王子は体が砂で出来ていたのか?」
「そうかもしれない。だから『砂時計』なんて言ったのかも?」
山道に差し掛かる二人。
「回り道して街から西へ向かおうか?危ないし」
「いや、急いでいるしもう街へは立ち寄らない方がいい。そろそろあんたが疑われちまう……」
「……そう。じゃあ山道を行こう」
デヴォンはそう言ってリュックを持ち直す。ザックがゆっくりと進んで行く。
しばらく歩くと、行き止まりに。
「崖だ。こっちは進めない。そこの道から一旦下に……」
デヴォンが突然口を閉じる。
「どうした?」
「シッ!なにかいるよ」
辺りを見回すザック。しかし人影はない。
「何もいないぜ?」
「ハッ!上だ!」
デヴォンの声で弾かれたように上を向くザック。そこにいたのは……
「「ドラゴン!?」」
大きなドラゴンだった。長い髭としっぽが特徴的だ。
「ど、ドラゴンだ!しかしシャフマで弓使いが乗るそれよりも3倍はでかいぜ!?どうなっている!?」
「あ、あれは……前に魔道の本で読んだことがある!フートテチの……!うわぁ!?」
崖が崩れる音。デヴォンが蹲る。ザックがデヴォンの手を掴もうとしたとき、地面が落ちた。
「ザック!!!」
(やばい!魔法が間に合わないっ……!)
ザックが為す術なく崖から落ちる。
「デヴォッ……」
浮遊魔法も、冷静に呪文を唱える必要がある。
ザックが死んでしまうかもしれない。そう思ってパニックになったデヴォンはザックの名前を叫ぶことしかできなかった。
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