5 一般通過魔法少女さんを見てしまいましたっ!

 このままだと自分と片時も離れられなくなりそうだし、自由がないからと、ユウ君は私に護りを与えてくれました。

 原理はよくわかりませんけど、心の繋がりパワーみたいなもので、私に強力な加護がかかるみたいです。多少の物理とか魔法だったらへっちゃらになるとかで。


「よし。かかったよ」


 ……ふーん。全然変わったような感じはしませんけど。

 でもユウ君の言うことだったら信じられます。


「本当だったらすごいスピードとかパワーとかも同時に付与できるんだけど、やめておいた。君はそういうの、あまり欲しがらなさそうだし」

「よくわかってるね。私って平和主義者だもの」


 えっへん。って、日本じゃ普通のことですけどねっ。

 私にすごい力とかあっても、妄想だったらいいなって思いますけど。実際ユウ君みたいに使いこなせるとはとてもとても。

 過ぎたるは身を滅ぼすって言いますし。借り物の力で調子に乗るのも違いますし。

 これまで通り、力仕事や荒事はユウ君に全部お任せしちゃいましょう。今のバランスが一番です。

 あと、それから。


『あー。テステステス。こちらユウ。聞こえますか』

『こちらアキハ。通信良好であります!』


 念話機能付き。離れていても、ユウ君といつでも心で会話ができるようになるみたいです。すごいじゃないですか!

 でもね。私、気付いちゃいました。

 もしかして、最初からこのお守りパワー使ってたらもっと楽だったんじゃないですか? そんなに私と一緒にいたかったんですかね?

 つい気になってしまった私の視線を察して、ユウ君は答えてくれました。


「これはね。心を繋げる技で……繋がる人が俺に心を開いてくれないと効果が薄いんだ」

「もしかして、ちょっと効果に不安があった?」

「うん。それもあるけど、副次効果の方が問題で……。これね、誇張なしで、本当に心を繋いでるんだ」


 だからね、とユウ君はやや遠慮がちに語ります。


「何でも伝わるわけじゃないけど、ちょっとした気持ちとか感情とかはよく伝わってしまうんだよ。そういうのってプライベートだろう? 遠慮してたんだ。今までは」

「へえ。なるほどね」


 って、めっちゃやばいやつじゃないですか! 私の妄想とかアレコレとかも、全部じゃなくても伝わっちゃうってことですよね!?

 ユウ君、苦笑いしています。困ったときのやつ。やっぱりです。否定してくれませんっ!

 あわわわ。あかんです。

 恥ずかしいやつだ。めっちゃ恥ずかしいやつだ! これ!

 で、でも。この人とはもはや一蓮托生。恥ずかしいからって、お守りパワーがないのは危ないですし……。

 いくら変なこと考えてても、言いふらしたりするような子じゃないし。ですよね? 信じていいですよね?

 ユウ君はちゃんと頷いてくれました。ありがとうユウ君優しいっ。


「そ、それで。今になって方針転換したのは?」

「大丈夫かなって。思ったより好かれているみたいだったからさ」


 ばっ! だ、だから! 普段恥ずかしがりのくせに、そういうことは真顔で言うなぁ!

 そういうとこ! そういうとこですよっ! またリルナさん呼んじゃいますよ?


 じと目で見つめると、ユウ君も自分のやらかしにやっと気付いたみたいで、また顔を青くしていました。

 ころころ表情変わって、感情豊かで、本当面白いんですよねきみって。私もかな?

 えへへ。実は結構お似合いなのかもしれないです。



 ***



 そういうこともありまして。私の自由なお昼休み、そして部活動も復活です! やりましたっ!

 ユウ君と食べるお弁当も美味しいですけど、クラスの女子とだって一緒に食べたいですもんね。

 何かあったら心で念じればいつでも助けに来るから、とはユウ君談。きみは本当にナイトみたいですね。


 今日のお昼休みは、久々にユウ君とじゃありません。

 滝原 メグミ、川島 カレン、北条 ナナ。

 いつもの仲良しメンバー、大復活です。二週間ぶりですよ。嬉しいですね。


「ねえ。アッキーさ」

「なあに。メグメグ」

「最近さあ、星海君と妙に仲良いよね」

「ぶほっ!」


 お茶むせましたっ。

 ここのところずっとユウ君と一緒にいたの、盛大にバレてたみたいです!

 あれだけいればバレますよねーそうですよねー。


「一緒にお昼行ったり、帰ってるとこも見かけたしさ」

「え、マジじゃん!」

「ねえねえ。付き合ってるの~?」


 いつも軽ノリで元気なカレンちゃんと、恋バナに興味津々のナナっち。

 私は曖昧に笑っておきます。


「まだ、そういうのじゃないかな。星海君とは」


 さすがに他の子の前でユウ君って呼ぶ勇気はないですね。まだ。あはは……。


「まだって、そう言うってことはさ。脈ないわけじゃないんだ」

「うん。そだね。ちょっと好きかも」


 親友のメグメグに対しては、素直に答えておきます。


「ふうん。アッキーも物好きだねえ。あんなひょろ男のどこがいいんだか」

「カレンちゃんは、強くてカッコいい人がタイプですもんね~」

「やっぱ男は甲斐性っしょ」


 ナナっちの軽い茶化しに対して、堂々と力こぶしのポーズをして笑うカレンちゃん。


 ちっちっち。わかってないですね。あれは世の忍ぶ仮の姿ってやつですよ?

 本当のユウ君は、滅茶苦茶強くてカッコいいんですからね。これは私だけの秘密なんですけど。えへへ。


「アッキー、またぽわぽわしてるな」

「きっといいことあったんだろうねえ」

「かわいいですねぇ。癒し」


 何か言われてるんですけどっ。私ってそんなに変かな?


「まあ、わたしは応援するよ。これからの時代、優しい人の方がいいと思うしさ」

「うんうん。私も応援する~。星海君って、男としては頼りないけど親切ですもんね~。私も掃除当番手伝ってもらったり」

「ありがとね。メグメグ。ナナっち」

「そういや、アタシもゴミ捨て全部押し付けちゃったことあったなあ」

「うわー。さすがにひどくない?」「そうですよ~」

「わり。頼むと何でもやってくれるからさあ。便利なのよあいつ。でもま、抜けてるアッキーの相手にはいいんじゃないの? 支えてくれそうだし」

「あー。言ったね。気にしてるのに~」

「こらこら。ポカポカするんじゃない」

「あはは。ほんと可愛いなアッキーは」「ナナも混ぜて下さい~」


 ふふ。改めて良いお友達を持ちました。みんな素敵な人たちです。


 いつものようにいちゃいちゃして、楽しくて。

 一息ついて、何となく窓の外に視線がいったときでした。


 ――なんかいるしっ!?


 デッキブラシにまたがって。

 ピンクの――ひらひらの。フリフリの。

 ま、ままま、まさか。


 魔法少女ですかぁっ!? しかも遠目でもめっちゃ可愛いしっ!


 うわぁ、飛んでるっ! 空飛んでるよ!? あっち普通に飛んでったよーーーーーー!?


 わーお。不思議って、異世界モノだけじゃなかったんですね。

 てか、箒じゃないんですね。現代的っ!


「どしたのアッキー。そんなに目丸くして」

「気になりますよ~」

「あの、ね。なんでもなくてっ!」

「なんでもないわけあるかーいっ!」


 カレンちゃんがツッコんでくれてますが。

 こうしちゃいられないです。さっそくユウ君に連絡ですっ!


『あ、ああ、あのね。ユウ君!?』

『慌てないでも聞こえてるから大丈夫だよ。アキハさん』

『そ、そとにねっ! 魔法のね。女の子が! とにかく来てっ!』

『了解。ちょっと待っててね』


 果たして、ものの三十秒もしないうちに、我が騎士到着と相成りました。


「あ、星海君」

「みんなでお昼ご飯中だったんだね」


 噂の男子の登場に、三人は色めきたちます。


「ほうほう。噂をすれば何とやら」

「星海君こんにちは~」

「よう。ひょろひょろくん」

「こ、こんにちは。どしたの? みんなにやにやして」


 やめてよ~。もう~。

 みんなでからかうようにクスクス笑うものですから、星海君も怪訝な顔しちゃってるじゃないですかっ。


「何でもないよー。ねえ」「ね~」「なー」

「みんな、ごめんね。ちょっと星海君と話してくるから」


 そう言って席を立ち、恥ずかしさから慌てて彼の手を引っ張って行きました。


「お、おい」

「いってらー」「しっかりなー」「報告待ってますよ~」


 それはわかりましたけどっ。それどころじゃないんですってば~!

 あんなのが出て、何も関係ありませんでしたってパターンはないです。巻き込まれの匂いがぷんぷんしますよ。これは!


 どうやらなし崩し的に、魔法少女編、開始みたいです。

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