第10話 何だか巻き込まれていく創造神(代理)な私

 「では、我々が信仰する神はドワーフ達等が信仰する神と同じという事ですか」


 「うん、そうだよ。私はそのヘファイストスの姪っ子なのよ」


 別に偉くも無いのに胸を張る私。その言葉に驚く王族達。でもまあ…言ったらまずかったかな~なんて今更思ってもみたり。


 「知らない方が良かった?」


 「知れて良かったと少なくとも私は思っております。時折、創造神様とヘファイストス様のどちらが優れているか…そのような事で小競り合いを教会が行うので…」


 その言葉をげんなりしながら口にする王さん。たしかに叔父さんもこの話には迷惑していた。どっちの神が優れているかで争う教会に叔父さんは「実はそれってワシの事なんだよね」なんて事を今更言えないって。

 言えば良いのに、世界を震撼させちゃえば良いのに。人間がそれを口にすると大問題になるかもしれないけど、神自身からの言葉だと教会が恥をかくだけだし。


 「何故、創造神様は自身の名を語らないのです?」


 「今更言い出しにくいみたいよ」


 「私達はこの件を胸の奥に収めておきます」


 「それが良いかもね。それでさ、教会の争いを見ながらひっそりほくそ笑んでいれば良いのよ」


 私は叔父さんがどんな人でどんな性格をしているか知ってるし、その中身は創造神とか鍛冶神とかであっても、私にはヘフ叔父さんだ。

 だけどやっぱりこの世界の人間にはそうではなくて、目の前でガチガチになりながらなんとか言葉にする王さんや奥ちゃんだけど、それ以外の王女ちゃん、それに王子くん達は耳を塞いでおきたかった…なんて顔をしている。


 ふふふ、貴方達はもう私の口から真実を知ってしまったのだよ!


 「ま、そんな話はここまでにして、何とか家の長男の何とか君と盗賊達には強めの自白の念を植え付けておいたから城に戻ったら一時間後くらいに目を覚ますようにしてあげる。その後は尋問したら想像している以上にペラペラ喋ってくれるわよ。何とか君は今まで表では猫を被っていたかもしれないけど、自分に歯向かう妹を奴隷にして売り飛ばすみたいな外道だし」


 「なんですとっ!行方知れずになっていた妹を想い憔悴していたと聞いたのは噓だったのか…」


 「王女ちゃんの前でもその事を言っていたわよ。同じ目にあわせてやるとか何とか。で、この何とか君って貴族の子なんでしょ?」


 「そうです。ダディル・フォン・ロピュエムは伯爵家の長男です」


 「どんな家なのかは知らないけど、この家に関わる無実な人間だけは無下に扱わないでね。それと王女ちゃんは自分の家族にちゃんと話をしてね。誰に迷惑をかけるとか、心配をかけるとか、そんなの自分が死んでしまったら迷惑も心配も掛けまくりじゃない」


 「はい…あ、あの…私、ちゃんと話します。それで…あの…」



 私はそれから皆を城に戻して直ぐに姿を消した。王女ちゃんには私の名前を教えて欲しいと言われたけど私は教えなかった。

 私には私の生活があるし、私の正体がもしばれて広まってしまえばウィルに迷惑をかけてしまう。ま、そうなったらそうなったで私の力で消せばいいのだけど。

 だとしても今のところは内緒だ。だからもし次に会う事があるとするならば、私の事は女神ちゃんとでも呼べばいい。

 

 それから私は国の様子を上空からざっと見渡す。出不精の私は家から外に出ても、自分の力を使って国の外に出る事が無いからいい機会だった。

 城から北側の土地で栽培する作物がどうやら土の栄養不足で育ちが悪いようだった。なので私は竜の骨粉と少しだけ命の水を撒いてから愛するウィルの下に帰った。


 創造神の姪だし、このくらいしても問題無いでしょう、と。



▽▼▽



 「いってらっしゃいー。今日も頑張ってねー」


 「うん、行ってくるっ!」


 朝にはぶちゅっとキスをしてウィルを送り出す。結婚して2年が経つのに朝のぶちゅキスにウィルはいつも頬を赤くする。



 初心いウィル、まじ可愛い。


 

 そんな事を思いながらまだ早いけど私は出かける準備をする。

 ウィルがこの町を通過しようとした奴隷商人を打ち首にした際に、奴隷っ子の一人を保護して孤児院に預けたからだ。

 今日はその子の様子を見に行こうと思っている。見た目の年齢は12から14歳くらいらしいけど、何でもその子は隷属させる魔法契約の際に失敗して記憶を失っているらしい。

 ウィルの鑑定ではレベルや状態、スキルは見えるものの、名前が出てこないとかで、鑑定に名前が出ないという事は余程の事だと思われる。


 だから私はその子の様子を見に行く訳だ。あと同世代のシスターちゃんに会いに。シスターちゃんは本当の私を知ってる数少ない人の一人だし、この世界の私の友達でもあるしね!


 そして私は例の子が保護されている孤児院に行って驚愕するのだった。


 

 鑑定結果 ≪看破結果≫▼

 ≪ミネア≫ ≪13≫▼

 ・元ロピュエム家の長女。

 ・兄のダディル・フォン・ロピュエムに売られた悲しき少女。

 ≪不幸を歩む者≫

 レベル:11

 状態:困惑 ≪記憶喪失≫

 スキル:鉱石鑑定、宝石鑑定、アームインパクト



 なんて言うか私はさ、この国でまだ全然食べられていないでも作って町おこしでもしようかなんて思っちゃったりしてるのよ。

 でもさ、な~んでこんな事に関わっちゃったりするのかね。私のLuckのステータス値は上振れ天井状態なのに…。


 もしかしたらこの子を助けろという星の導きで王女ちゃんの祈りが私に届いたのかもしれない…焼うどん食べたいのに。

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