第30話
「どうして彼らだけあんなに上手いのかね?」
『彼らは高校生まで野球とハンドボールというボールを使用したスポーツをしていた者達です』
「なるほど、だからなのか……」
「ねぇねぇ! ひょっとしてその2人には投擲関係のスキルでもあったりして!」
『可能性は十分にあります。我らにそれを確かめる術はございませんが』
「ステータスは何とか見れるようにならないかな、せっかくの異世界なんだし」
「特にスキル関係は把握しておきたいね」
「僕も知りたいな!」
「……(ステータスって何かしら?)」
『申し訳ございません。この世界にステータスを見るといった概念がない以上どうにもならないのです。次回に別の異世界を舞台にした時にそこにステータス制度があることを祈るしかありません』
「異世界なのにどうにもならないのかぁ」
「スキルが把握できれば予想もし易いと思ったのだがね」
「残念だね!」
「……(だからステータス制度って何?)」
『それではこのラウンドまでの結果を表示します』
gs…9000p
ge…6000p
ga…6000p
gn…1500p
「今回から新たに投入されたオークは何も見せ場作ることなく終わってしまったね」
「強いて言うなら登場時に出場者に緊迫感を与えたぐらいかしら」
「あそこで皆を落ち着かせたリーダーも良かったよ!」
「仮にオークがガラスの破片で足を傷付けなかったとしてもこの完璧な防御体制の前ではどうにもならなかっただろう。たった1体ではね」
「そう言えば今回はゴブリンリーダーもいつの間にかやられていたね」
「本当だな、3体もいたはずなのに戦ってる場面がなかったぞ」
「僕も見てないね!」
「チラっと投擲攻撃でやられていたのが映っていたわよ」
『どうやら今回は事前に投擲班にゴブリンリーダーを最優先で攻撃するよう指示が出ていたみたいです』
「徹底してるね!」
「新投入のオークを除けばリーダーがなんとかしないとゴブリン側が健闘するのは無理だからな。接近する前に倒してしまうのは良い作戦だ」
『次回は2年生が提案した移動案にどの程度の賛同者が集まるかで変わってきます。賛同者が多い場合は移動グループをラウンド前にお話した代案で襲撃しますし、体育館に残る人が多ければ今まで通りで』
「代案は楽しみだね!」
「ある程度の予想はできるが……」
「ネタバレするのは止めなさいよ」
「わかっておる」
「しかしみんな移動を選択するんじゃないかなぁ。連続して犠牲者0の実績を叩き出した戦闘指揮した人の提案なんだし」
「そうね。体育館に残る理由がないと思うわ」
「残るのは自殺願望のある人ぐらいだね!」
「全員が移動することになってもその代案の実行には問題ないのかね?」
『実行そのものは何も問題ありません。結果に違いが生じることにはなるでしょうが』
「大丈夫ならいいさ」
「早く次のラウンドにいこう!」
「期待値がグングン上昇中ね」
『あの~、代案の実行性に関しましては確実に保証致しますが、驚かせるような類のものでもありませんのであまり期待されましても困ると申しますか……』
「自らハードルを下げるなんて相当期待できるね」
「きっと驚天動地の策で楽しませてくれるに違いあるまい」
「一大スペクタクルロマンが繰り広げられるんだよね!」
「異世界の歴史に残るラウンドになりそうね」
『皆さんワザとハードル上げてますよね?』
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===体育館===
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「さぁ、移動に賛成の者はこちらに来てくれ!」
朝一番で伊藤は賛同者を募った。
自分を含めてゾロゾロと伊藤の側に行く。
残ったのは2年生の女子2人と1年生女子1人の3人だ。
「えっと、理由を聞かせてくれないかな?」
「恵美子を探す為よ!」
終始一貫して初日に行方不明になった木下恵美子の捜索を主張している2年生の久保遥香だ。
「遥香を1人にできないし一緒に恵美子を探します」
こちらも2年生の佐々木琴子。
命を懸ける程久保遥香と親しかったとは知らなかったけど。
「佳奈の傍を離れたくありません」
初日に犠牲になった三嶋佳奈の親友だったらしい1年生の菅原洋子だ。
「3人の考えはそれとしてさ、とりあえず俺達と一緒に移動しないか?
いずれ状況を整えて準備した上で行方不明者を探したり遺体を回収する方針にしないか?
こんなとこに残って死ぬ必要なんてどこにもないよ」
これが半々とか残る人の方が多ければ説得する必要もないのだけど、たった3人しかも女子ということで強引にでも連れて行かないといけなくなった。
「嫌よ。絶対残るわ!」
「遥香がそう言うので」
「……」
正直何が彼女達の意志を頑なにさせているのかがわからない。
体育館に残れば殺されるということがわからないのだろうか?
自分達は殺されないとでも思っているのか?
あるいは連れ去られて行方不明の木下恵美子との再会を望んでいるとか?
身代金目的の誘拐とかじゃないのだから、連れ去られた女子がどのような悲惨な末路を辿ることになるのか想像できない訳でもあるまいに。
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