第29話
「第2段階に移行するぞ!」
「おぅ!」「了解!」「わかったわ!」
「承知しました」「投げまくるぞ!!」
第2段階とは射手を投擲能力に優れた元野球部員と元ハンドボール部員の2名に限定して正面を井口さんと伊藤が受け持ち、両サイドの後衛女子はそのままで残りの者がゴブリンの死体から刃物を抜き取りその死体を入り口に積み重ねる作業をするのである。
その際入り口の中央部はわざと空けておき敵が侵入してくるスペースを作っておいてこちら側に引き込む。
当然死体から回収した刃物は投擲を担当する2人の足元に置いておく。
「グギャ、グギュ、ギャッ、グギャギャ」
入り口の両脇に死体を積み上げる時が1番敵に接近するので怖いが、元球技部員の腕は確かで敵を寄せ付けないでいる。
「奥にデカいのがいるぞ!」
「な、なにあれ?」
「どこ?」
「表の出入り口だ!」
「落ち着け! まずは確実に敵を減らしていけ!」
俺達よりも背が高そうな巨体が体育館に入ってこようとしていた。
あんなのと接近戦なんて無理そうなので元球技部員2人の投擲班に仕留めてもらいたい。
体育コートに2~3体ずつ突入してくるゴブリンに刃を突き立てる。
自分がこんなこと思うなんてこの世界に来るまで考えもしなかったが、ゴブリンを殺すのにも慣れてきた。
喉を突くか斬り裂けば仕留めることができる。
心臓を貫けば即死だが、あばら骨の間に刃を通すのは難易度が高い。
みぞおちから斜め上に刃を突き立てれば可能なのだが、ゴブリンは小さいので体勢的に辛いし無理がある。
「2階にゴブリン! 2、3、5体、それ以上来るよ!!」
後衛の女の子からの警告が入る。
どこかのバリケードが突破されたか。
「外山頼む!」
「わかった! 何人か来てくれ!」
伊藤からの指示で2階の客席から来るゴブリンに対応する。
「飛び降りて着地したところを仕留めるぞ!!」
「わかりました!」
2人ずつ3組に分かれて対処する。
着地した瞬間に突き!
刃物でショートソードを逸らされた。
このタイミングだと遅いのか。
臨時の相方? の1年女子が鉄棒でゴブリンの腹部を貫いている。
「グギャッ! ギャギャッ!」
ショートソードを戻す時に苦悶の表情を浮かべるゴブリンの首筋を斬り裂いた。
辺りを見渡す。
投擲班も着地の瞬間を狙って1体倒したみたいだ。
さらに飛び降りようとしている個体がいたので、今度は着地の前に位置を想定して突きを入れる。ちょうど着地したと同時に喉元に刃が突き刺さる予定だったのだが、こちらの想定とは違い思った以上に立ち姿勢で着地した為腹部に突き刺さった。
即死させられなかったので慌てて盾(パイプ椅子)を前に出すが攻撃はなかった。
相方の1年女子が鉄棒でゴブリンの首を貫いていた。
「助かったよ」
「部長が先に攻撃してくれたおかげです!」
中々素直な1年生だ。
つか名前なんだったかな?
部長にあるまじきことを考えながら次のターゲットに向かう。
隅のほうだったからかどの組も対応できずに着地を許したゴブリンだ。
刃物を突き出しながら勢いよく向かってくるので、盾(パイプ椅子)を構えて思いっきり激突した!
当然小柄なゴブリンのほうが吹き飛び、倒れたゴブリンに1年女子が止めを刺した。
「またもありがとうな。ええと……」
言い淀んでいると1年女子はニッコリ笑って、
「長谷川です。1年の長谷川知佳と言います」
「よし! 長谷川、次は……」
周囲を見ると2階からの襲撃はとりあえず止んだようだ。ならば、
「入り口の防衛に戻ろう!」
「はい!」
結局巨体の魔物は体育館に入ったところでガラスの破片に足をザックリ切られて動けなくなっていた。
手に持っている太い木の棒をやたら振り回すので投擲で弱らせてから間合いの外から複数の鉄棒で突き刺して倒した。
こいつはオークだ。オークに違いないという声が上がってオークの名称が正式決定した。
正面ロビーに撒いたガラスの破片を片付ける。
どうやら2階に上がった奴らは仲間の死体の上を歩いてガラスの破片を回避したみたいだ。
狙ってそうしたのか結果的にそうなったのかはよくわからない。
皆で死体を片付けて血を拭く。
もう襲撃は4回目なので後片付けも慣れてしまった。
また見張りを置いて寝ることにする。
明日の移動に備えて少しでも体力を回復させないといけない。
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===4round after===
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『結果発表です!
パチパチパチパチパチパチ~!!
今回のラウンドも的中者が出ました! おめでとうございます!!』
「理由含めてドンピシャで当てたのこれが初めてじゃない?」
「やったね!」
「完璧な的中だったよ」
「前回の戦い方からより進化させてくるとは思わなかったな」
「かなり創意工夫が見られたわ」
「最後まで投擲していた2人の能力は高かったなぁ」
「投擲というより狙撃みたいだったよ!」
「本当にね。2人になってからしかわからないけど、ほとんど外してなかったわ」
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