第22話
「どうだった?」
4人部屋に戻ると待っていた佐伯が聞いて来た。
「説得は無理だったからちょっと強引に携帯を預かって来た」
「それ大丈夫なの?」
「たぶん……な」
「なぁ、携帯って持ってるのがバレるとそんなにヤバいか?」
「ほとんどの機能が使えないとはいえ、写真・動画・非ネット接続のソフトなどこの世界にはないものばかりだからなぁ。
存在が知られればどんなことしてでも欲しがるよ。最悪戦争起こしてでも手に入れたいシロモノのはずだ」
「そんなの怖過ぎるよ!」
「ちゃんと隠しておけるなら心配ない。
それよりも、ちょっとトラブルがあったけど本題に入りたいと思う。
俺は新規に兵団を立ち上げるか、それが無理ならどこかの兵団に入るつもりだが3人は来てくれるか?」
「ああ、もちろんだ」
「問題ない」
「オッケーだよ!」
「必ず人間相手に戦うことに……、あー言葉を濁すべきではないな。つまり人殺しをすることになるがその点はどうだ?」
「異世界に来た時点で冒険者になりたいと思っていたんだ。冒険者は盗賊退治など人殺しもする。とっくに覚悟はできてるさ」
異世界マニアの近藤らしいな。
「俺は異世界とかよくわからないけど、戦闘は人同士でするものだと思っていたから……武器を手にした時点で覚悟はしてるつもりだ。あのゴブリンだって人相手に戦っていたつもりだったし」
地球では戦争や戦闘は人同士だからな。
加川も問題なし。
「わ、私は……」
「悪いが佐伯は後回しだ」
「なんでよ!!」
「そういうおまえはどうなんだ?」
「そうそう。なんか流れでリーダーやってもらってるけど無理してるんじゃないか?」
「今までリーダー的な事はやったことないけど無理はしてないつもりだから安心してくれ。
それに戦闘を経験してから剣を握って何ができるのか、どこまでいけるのか挑戦したいと思うようになった」
「そうか」
「で、提案なんだが今後は宿ではなく家を借りて4人で一緒に住まないか? そうすれば資金も節約できるだろうし物件にもよるだろうけど各自に個室を割り当てることも可能になる」
「俺達はそれで問題ないだろ。むしろ……」
「ああ……そうだな」
2人の視線が佐伯に向く。
「うぇ!! わ、私!?」
「うん。そこでさっきの佐伯の話に戻るんだが、佐伯には家事や街での情報収集など俺達のサポートをしてくれないか? その場合は俺達3人の報酬を佐伯含めた4人で割る形になるのだがどうだろう?」
「俺は問題ないぞ。むしろそれが良いと思う」
「俺も異存ないな」
「う~ん、し、仕方ないわね! むさい男3人で暮らすなんてできないだろうし一緒に住んであげるわよ!!」
「これで決まりだな。佐伯もありがとうな」
「ふ、ふんっ! 感謝しなさいよねっ!!」
なんだそのツンデレキャラは……
「それじゃあ屋台のおっちゃんに教えてもらった指揮所に情報収集しに行こう。その後は買い物タイムだな。今度は時間を掛けて、武器屋にも行こう」
「やったぁ! 先に古着屋行くからね!!」
「わかったって」
さっきはテキトーに選ばせたから今度はじっくり吟味したいのだろうなぁ。
--------------------
===3round===
--------------------
『お待たせしました。第3ラウンドの時間です』
「待ったというほどではないけど時間が空いたね」
「序盤から1日飛ばすなんて珍しいのではないかしら」
「何かトラブルでもあったんだよ!」
「ふむ。どういうことなんだね?」
『前回のラウンド後の質問も併せまして順番に説明させてください。
まず、出場者をラウンド毎に襲撃する為に魔物を配置するのですが、その際異世界側との取り決めで既存の生態系への影響を最低限に抑える努力をするというものがあります。
その為に体育館周辺の動物と魔物をよそへ退避させていたのですが、こちらの想定よりも早く出場者の一部が東に移動してしまいましたので、このままでは本来の移動グループを襲撃する為に配置を進めていた魔物が無駄になってしまう為、配置の中止と動物・魔物の呼び戻し作業を行った訳ですがこの作業が思っていた以上に手間が掛かり第3ラウンドが遅れることになってしまいました』
「その異世界側との取り決めとやらは必要なことなんだろうし、こちらが口出しできる問題でもないからねぇ」
「延期になるとわかった時点で教えてくれれば問題ないわよ」
「そうだね!」
『それが……
ブースでモニター視聴するシステムに時空魔法を組み入れたことは第1ラウンドの時にお話ししましたが、そのせいで次のラウンド開始の時刻設定以外の外部からの干渉ができない仕様となっております』
「あらら」
「これは困ったね!」
「延期の可能性を頭に入れてモニター視聴するしかないね。見るのが嫌になったらスキップすればいいのだし」
「私はモニター視聴するのが1番の楽しみだからスキップするのは嫌だわ」
「まぁ次のラウンドがいつ始まるのかわからないのも一興……、と思うしかないだろうな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます