第20話

「わ、わかったよ」


 俺はしぶしぶ商人が座った対面に座る。


「まずはこれから査定してください」


 バックからカーペットを出した。

 大体2畳ほどの毛がモコモコしてるタイプではなくスッキリしていて茶系の色をしている。


「拝見致しますね」


 荷物を部室に置いてこなければ筆記用具とかバックそのものも売れたのにな。

 惜しいことをした。


「こちらの品をどちらでお求めになったのかお聞きしても?」


「知り合いから譲ってもらったんです」


 そういえば俺達が異世界人であるということを隠すのか公にするかの打ち合わせをしてなかったな。

 これは俺の手落ちだ。


「こちらの品は10万コルトで買いましょう」


 そこそこの金になるな。

 適正価格かわからんが、元々俺の物でもないしな。


「考えたいので先にこちらの査定もお願いします」


 私物の中からカジュアルシューズとTシャツ・キーホルダー、共有物資の中からボールペン2本・レインコート2着を出した。

 もちろん共有物資を売ったらその分は分配するつもりだ。


 キーホルダー・ボールペン・レインコートの説明を求められそれぞれ使い方をレクチャーする。

 段々店員の表情が険しく……


 カジュアルシューズ…50万

 Tシャツ…5万

 キーホルダー…15万

 ボールペン…70万(1本)

 レインコート…20万(1着)

 という査定結果が出た。


「ボールペンとレインコートを売って全員で分配するのはどうだ? 後は各々で売りたいの売る感じで」


「賛成!」


「そうだな」


「よろしいと思います」


 結局俺は私物は売らずに、カーペットとボールペン2本・レインコート2着買い取ってもらった。


 店員がお盆に金を乗せて支払おうとするが、大きな金貨と小さな金貨なのを確認して、


「すいません、大きいの小さいのでもらえますか? 使い辛いので」


「かしこまりました」


 やばいな。

 貨幣の種類もわからんから簡単に騙されるかもしれん。

 事前に貨幣の種類を把握してから来なければいけなかったんだ。

 これも俺の手落ちになるのか……

 そこそこ大きな店だし大丈夫と思いたい。


 小さな金貨19枚貰って、1人3枚ずつ配っていく。


 その後各自が個人所有の物を売って店を出た。

 先ほど佐伯が聞き込んだ屋台に行き串焼き肉を買う。

 小さな金貨を出したら嫌な顔をされてしまった。

 これしかないのだから仕方ないとはいえ、さすがにもう1本追加して2本買った。

 おつりが大きい銀貨・小さい銀貨が9枚ずつと銅貨が8枚だ。


 大金貨=100万コルト

 小金貨= 10万コルト

 大銀貨= 1万コルト

 小銀貨= 1000コルト

 銅貨 = 100コルト


 という貨幣単位であることが確定した訳だ。

 日本円で言うところの500円玉・5000円札がないのは不便に感じるが、10万と100万単位に相当する貨幣があるのは高額取引の際には便利か。


 串焼き肉の味はそれほどでもなかった。

 味付けがイマイチだし、肉自体も油っぽい。これは網焼きや焼き鳥タイプの回転させる焼き方ではなく鉄板焼きの為だと思う。


 まぁ味のことはともかく、その屋台のおっちゃんに1300コルトを握らせてこの街のことを教えて欲しいと頼んだ。同額の謝礼も渡すからとも。

 おっちゃんも渋々という体を装いながら応じてくれた。

 まずは安心安全な宿屋を教えてもらい、古着屋・靴屋・武器屋の場所を教えてもらった。


 ここまでは順調だったのだが、よそ者がすぐ働ける仕事はあるかの問いから雲行きが怪しくなった。


「荷運びとか労役とか。農作業の手伝いもあるけど賄い付きで住み込みもできるが賃金は安いぞ」


「冒険者ギルドはないのか? 冒険者は?」


「冒険者ってなんだ?」


 ひょっとして名称が違うのか?


「魔物を狩って素材を収集したり、街の人の様々な依頼をこなす人のことだよ」


「もしかして兵団のことかなぁ」


「兵団というのは?」


「普段は街の治安を守ったり荷駄隊の護衛といった依頼をこなして、普段の働きが領主様の目に留まると戦に参加できるようになって、手柄を立てると出世できるんだ」


「戦? この街はどこかと戦してるのか?」


「街というよりこのムロガが所属しているナノ国が隣のヤマカ国とだな。東の国境くにざかいで年に1回か2回大戦があるよ、小競り合いはしょっちゅうだな」


「戦をしてる割にはこの街はなんだかのんびりしてるな」


「偉い人と兵士とその家族以外はほとんど関係ないからな。商人の儲けが増えるなんて噂もあるけど本当のことだかどうか……」


 それは本当のことだ。


「敵国の軍が国境を突破して街に迫ってきたらどうするんだ?」


「街の外で決戦だろう。勝てばそのまま押し返すし負ければ降伏、引き分けだと再戦か停戦か。

 もっともこういうことは東の王都でやるからムロガは関係ないけどな」


「敵軍が王都を襲ったりはしないのか?」


「ないない。そんなことをしてしまうと周辺国に討伐する口実を与えて滅ぼされてしまう」


「東の王都というのはムロガよりかなり大きいのか?」


「ああ。3倍は大きいぞ。人はそれ以上に多くて初めて王都に行くと余りの人混みに酔ってしまう人もいるとか」

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